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イスラム国って今、どうなっている? クルド人独立が分裂した理由
世界で去年あったあのニュース、今どうなってるの? 過激派組織「イスラム国」(IS)はイラクやシリアで勢力を弱めましたが、エジプトやリビアで新たに展開。クルド人が目指した悲願の独立は暗礁に乗り上げ、南スーダンではやっと合意した停戦がすぐに破られるなど、不穏な動きが続いています。(朝日新聞国際報道部・神田大介)
イラクとシリアで支配地を広げ、2014年に「国家」を宣言した「イスラム国」(IS)。
世界を震撼させた過激派組織も2017年は退潮が進み、イラクのアバディ首相は12月9日、ついに国内でISの掃討が終わったと宣言。シリアでも支配地の多くを失い、一掃されるのは時間の問題とみられています。
一方でISは、リビアやエジプト、アフガニスタンといった周辺国に新たな拠点を構えつつあります。このうちエジプトでは、2017年4月に2カ所の教会が爆破されて計70人が死亡、5月にキリスト教徒を乗せたバスが襲撃されて29人が死亡。11月にはモスクが爆発され、300人以上の死者が出ました。いずれもISの犯行が指摘されています。
ほかにも、ISの影響を受けて過激思想に染まった人びとは世界各地に潜んでいるとみられ、テロの脅威は今もなくなっていません。
中東の4カ国などに約3000万人が分かれて暮らし、自分たちの国家を持たないクルド人。このうち、イラク北部のクルディスタン地域政府で2017年9月、イラクからの独立を問う住民投票があり、92%以上が独立に賛成しました。
ところが、アメリカなどほとんどの国がこの動きを無視。イラク軍は10月、クルド人が治めていた油田地帯に侵攻し、支配下に置きました。
責任を取る形で地域政府のバルザニ大統領は辞任。背景として、バルザニ氏とライバル関係にあるクルド人グループがあり、もともと投票の動きを良く思っておらず、イラク軍と裏で手を握ったとみられています。
住民投票を強行したことでイラク中央政府や周辺国から経済的な圧力を受け、油田も失ったことで、地域政府はいま財政難にあえいでいます。給料の支払いが遅れ、12月には教員などの公務員ら1000人あまりがデモを起こしました。住民の間に亀裂が広がっています。
独立を長年の悲願とするクルド人ですが、2018年も道のりは険しそうです。
自衛隊が2017年5月、国連平和維持活動(PKO)から完全撤収した南スーダン。安倍晋三首相はこれに先立つ3月、「南スーダンの国造りが新たな段階を迎え」ていると説明しています。しかし、当時も内戦は続いていました。
もともとは大統領と副大統領の政治抗争が、2人の出身であるディンカとヌエルという民族の衝突に転じ、2013年に内戦化しました。これまでに少なくとも数万人が死亡、難民は200万人を超えています。
アメリカなどの介入で2017年12月、やっと停戦に合意。ところが、停戦が始まったその日に戦闘が起き、先行きが危ぶまれています。
なお、南スーダンでは2015年8月にも無期限の停戦などを定めた和平合意が結ばれていますが、全土の約6割で戦闘が続いたと言われています。
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