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立憲民主は「中高年の党」だった? 衆院選、東大生が分析してみた

調査から見えてきたことについて話す高宮秀典さん(左)と金子智樹さん=東京都文京区、関田航撮影
調査から見えてきたことについて話す高宮秀典さん(左)と金子智樹さん=東京都文京区、関田航撮影

目次

 安倍晋三首相率いる与党が大勝した10月の衆院選。有権者はどんなポイントを重視して、一票を投じたのでしょうか。東京大学・谷口将紀研究室と朝日新聞社は共同で約1800人の有権者たちにアンケートを実施。憲法改正案で賛成が多かった項目、立憲民主党のリアルな支持層……。意外な結果が次々と浮かび上がりました。(聞き手は朝日新聞政治部・山岸一生)

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「9条に自衛隊明記案」……実は、「賛成」が「反対」上回る!?

 解説してくれるのは、東京大学大学院法学政治学研究科の高宮秀典さんと金子智樹さんの二人です。

――安倍晋三首相は、憲法9条1項2項を残したまま、自衛隊を明記するという改正案を提示しています。調査では、有権者の反応はどうだったんでしょうか。

高宮「安倍首相の提案には有権者の4割が賛成で、反対の2割6分を大きく上回りました。世代別では、若年層ほど提案に対して拒否感が低い、という結果になりました」
金子「今回の衆院選では候補者全員を対象にした調査も行っており、ここでも安倍首相の提案に対する賛否を聞いています。それによると、9条への自衛隊明記に賛成した当選者は5割以上いました。この数字と比べると、有権者の4割という数字は若干低いように思われますが、私たちの印象としては、9条に自衛隊を明記することへの拒否感が、有権者の中でも思ったより少ないな、という感想を持ちました」


――調査では憲法改正そのものへの賛否、姿勢も聞いています。こちらはどうだったんでしょうか。

高宮「今回、憲法改正自体には有権者の4割が賛成で、こちらも反対の2割7分を大きく上回りました。また、改憲に賛成寄りの人と反対寄りの人の双方に、改正すべき項目と改正すべきではない項目を聞いたところ、賛成派・反対派ともに、9条を一番に挙げました。9条改正への賛否は国民の間でも大きく割れており、これに手をつけることは安倍首相としてもリスキーでしょう」


――憲法9条をめぐって、有権者の意識が「賛成」と「反対」で分断されていくことにならないでしょうか。

金子「9条改正が憲法改正の『本丸』と言えると思いますが、今回の調査で明らかになったように、9条への自衛隊明記という案に対する拒否感が比較的少なかったということで、もしかしたら9条3項追加という安倍首相の『変化球』が、国民に受け入れられる可能性も意外とあるのではないかと思いました」

金子智樹さん=東京都文京区、関田航撮影
金子智樹さん=東京都文京区、関田航撮影

「自民大勝」……実は、有権者から見れば「自民1択選挙」だった!?

――自民党大勝の原因、背景を分析したいのですが、ずばり自民党はなぜこんなに勝ったのでしょうか。

高宮「今回の調査では、有権者にどの政党に政権を担う能力があるか、という『政権担当能力』を質問しています。有権者の中で自民党に政権担当能力があると答えたのは75%。野党では立憲民主党が18%、希望の党は8%と、自民党が他党を大きく引き離す結果となりました」


――衆院選は「政権選択選挙」とも言われますが、有権者から見れば、今回は「自民党一択」という状況だったんでしょうか。

金子「そう思います。今回の選挙で最も重視した政策を質問したところ、『外交・安全保障』を重視した人が一番多かったことが分かりました。例年ですと年金・医療や財政・金融など他の政策を重視する人が多い傾向だったので、北朝鮮の核・ミサイル問題を反映した、安倍首相の『国難突破選挙』というアジェンダ・セッティングが結果的に功を奏したのだと思います。また、各政策分野に関して『最もうまく対処できる政党は?』と質問していますが、多くの政策分野、政策争点に関して、有権者は自民党が頼りになると考えていました。まさに『自民党一択選挙』だったと言えるのではないでしょうか」

高宮秀典さん=東京都文京区、関田航撮影
高宮秀典さん=東京都文京区、関田航撮影

立憲民主党躍進のワケ……実は、「中高年の政党」だった!?

――今回の衆院選では立憲民主党が躍進しましたね。枝野幸男代表らがSNS発信して注目されましたが、こういった傾向も調査に現れているのですか?

高宮「立憲民主党は枝野代表がツイッターで選挙運動を展開したこともあり、10代、20代、30代に支持される『若者の党』というイメージを持たれるかもしれません。私もツイッターを見ていて、非常に盛り上がりを感じました。しかし、比例区での投票先政党を世代ごとに見ると、10代や20代の支持は1割台だったのに対し、50代以上の中高年は2割台と、中高年により強く支持されていたことが分かります。また、こうした中高年の立憲民主党投票者は、憲法問題を3割以上が重視していました。立憲民主党支持者の最大の関心は、憲法問題だったことが分かります」


――「中高年の政党」ですか。一般的に言われているイメージとは違うようにも思います。どういうことなんでしょう。

金子「若者の比例区での投票先を見てみると、自民党に投票した10~20代の若い世代が50%以上いて、これは立憲民主党や希望の党を大きく上回っていました。私たち若い世代はよく安定志向だと言われることがありますが、今回の結果を見て、もしかしたら政治に対しても当てはまるのかな、と思いました」


――「SNSと若者」ではなく「中高年と護憲」。これが立憲民主党の強さの秘密だったということなんですね。

     ◇

朝日新聞・東京大学谷口将紀研究室共同調査とは 有権者への調査は、層化無作為2段階抽出法で3千人の対象者を選び、衆院選投開票前日(10月21日)に調査票を郵送。投票後に回答・返送してもらい、12月5日までに1767人(59%)の回答を得た。分析は、谷口研究室の金子智樹、高宮秀典、築山宏樹、川口航史、淺野良成の各氏が、朝日新聞側は東岡徹、山岸一生、竹下由佳が担当した。

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