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IT・科学

グーグルも「脱ヒルズ」卒業していった“あの会社” 楽天・リーマン

「渋谷ストリーム」のジオラマとともにポーズをとるルース・ポラット最高財務責任者(CFO)=東京都渋谷区で
「渋谷ストリーム」のジオラマとともにポーズをとるルース・ポラット最高財務責任者(CFO)=東京都渋谷区で

目次

 グーグル日本法人は11月17日、本社を東京・六本木ヒルズから渋谷に移転させると発表しました。「ヒルズ族」という言葉も生んだ六本木ヒルズ。かつては、グーグルだけでなく、IT関連の「有名企業」が数多く入っていました。時に事件の舞台ともなった六本木ヒルズの歴史を振り返ります。

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完成まで17年

 六本木ヒルズは、東京都港区六本木の市街地再開発事業として生まれました。森ビルが手がけ、約400人の地権者の同意を得て完成まで17年かかりました。

 地区面積は12ヘクタール。。総事業費は2700億円で、オフィス、住宅、ホテル、映画館、テレビ局、美術館、商業施設を備えています。

オープン間近の六本木ヒルズ=2003年4月17日
オープン間近の六本木ヒルズ=2003年4月17日 出典: 朝日新聞

「ヒルズ族」の象徴

 過去には様々な有名企業が入居していました。中でも急成長するIT企業の存在は注目を集め「ヒルズ族」という言葉を生みました。

 「ヒルズ族」の象徴だったのがライブドアです。

 ライブドアは1996年に「オン・ザ・エッヂ」として堀江貴文氏が設立。2000年に東証マザーズに上場します。2002年にはポータルサイト「ライブドア」の事業譲渡を受けました。ソフトウエアの開発のほか、映像配信やDVD貸し出し、IP電話事業などのサービスを展開。その後、プロ野球の球団買収や、ニッポン放送株買収などで話題を集めます。

 そして、2006年1月、東京地検特捜部などが証券取引法違反(偽計取引、風説の流布)容疑で強制捜査に入ります。その舞台となったのが六本木ヒルズでした。

 ライブドアは、2010年、LINEに買収されます。LINEの本社は現在、JR新宿ミライナタワーにあります。

ライブドアのある六本木ヒルズに家宅捜索に入る東京地検特捜部の係官ら=2006年1月16日、東京都港区六本木6丁目で
ライブドアのある六本木ヒルズに家宅捜索に入る東京地検特捜部の係官ら=2006年1月16日、東京都港区六本木6丁目で 出典: 朝日新聞
インターネット関連企業「ライブドア」の関連会社が株価をつり上げるために虚偽の事実を公表した疑いがあるとして、東京地検特捜部は16日、証券取引等監視委員会と合同で、証券取引法違反(偽計取引、風説の流布)容疑で東京都港区の六本木ヒルズにあるライブドア本社や堀江貴文社長の自宅など関係先数カ所を家宅捜索した。
2006年1月17日:ライブドア強制捜査 関連会社、虚偽公表の疑い 株価つり上げ狙う 東京地検が捜索:朝日新聞紙面から
<ライブドア> 96年に「オン・ザ・エッヂ」として堀江貴文・現社長が設立。00年に東証マザーズに上場。02年にはポータルサイト「ライブドア」の事業譲渡を受けた。ソフトウエアの開発のほか、映像配信やDVD貸し出し、IP電話事業などのサービスを展開する。今年3月には日本グローバル証券を買収した。
2004年6月30日:ネット事業「ライブドア」、「近鉄球団買いたい」 プロ野球:朝日新聞紙面から
多様性をいっそう増したのは、10年のライブドア買収だ。検索サイトを運営したライブドアは広告営業にたけ、収益源を開拓。社内では「LINEを進化させたのはライブドア組だ」という見方が強い。買収された当時、ライブドアの社長だったのが、現LINE社長の出沢剛さん(43)。「元々多様性がある組織だったので力を発揮できた」と振り返る。
2017年1月30日:(カイシャの進化)LINE 異能が集えば、成長曲線:朝日新聞紙面から

2007年は「脱ヒルズ」の年?

 2007年、楽天は、ヒルズや周辺に分散して入居していたグループ企業が、品川区内で借りた23階建てビル「楽天タワー」に移転しました。そして、現在は二子玉川にある「二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット」に本社を構えています。

 2007年は、ヤフーもヒルズから移転しています。同じ六本木に生まれた「東京ミッドタウン」に移りました。社員数が増加した一方「ヒルズに空きフロアがなかった」のが理由でした。2016年からは、「赤プリ」の跡地に生まれた「東京ガーデンテラス紀尾井町」が本社になっています。

 また、「リーマン危機」のリーマン・ブラザーズも日本法人を置いていましたが、破綻(はたん)しています。

「二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット」=2015年4月24日、世田谷区
「二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット」=2015年4月24日、世田谷区 出典: 朝日新聞
楽天は8月から、ヒルズや周辺に分散して入居していたグループ企業が、品川区内で借りた23階建てビル「楽天タワー」に移転を進めている。ヒルズには楽天証券と電子商取引の楽天市場事業が残るが、実質的には丸ごと移転だ。ヒルズを「IT企業の象徴」として有名にしたライブドアホールディングスもこの7月に港区赤坂のビルに本社を移した。旧経営陣の証券取引法違反事件後の再建に向けたコスト削減が主な理由で、「賃料は15%ほど低くなる」(同社)という。ヤフーは、ヒルズに対抗して東京新名所の座を争う複合ビル「東京ミッドタウン」(港区)の3月の開業時に、管理部門など大部分の移転を済ませた。社員数が04年の5倍の3400人に急増したが、「ヒルズに空きフロアがなかった」(同社)こともあり引っ越しとなった。
2007年9月26日:IT系、脱・ヒルズが続々 手狭、コスト削減など理由:朝日新聞紙面から
開業した「東京ガーデンテラス紀尾井町」は、3万平方メートルの敷地に3棟の建物が並ぶ。最も高い36階建て「タワー」は上からホテル、オフィス、飲食店街が入る。ほかに21階建てマンション「レジテンス」と、歴史的な外観の2階建て宴会場「クラシックハウス」がある。この日、観光客やビジネスマンなど多様な客層でにぎわった。飲食店の一部は5月に先行オープンし、オフィスもヤフーなどの入居が決まり埋まった。マンションも9割の部屋で入居者が決まっているという。
2016年7月28日:赤プリ跡、新装 複合施設が開業 「収益力5倍」新戦略 西武HD:朝日新聞紙面から
東急・二子玉川駅(世田谷区)に24日、新商業施設「二子玉川ライズ・ショッピングセンター・テラスマーケット」が開業した。テラスマーケットは、2011年に完成した商業エリアと住居エリアを結ぶオープンモール(延べ床面積約2万1千平方メートル)。屋根のない通路(長さ約200メートル)の両脇に18のテナントが入る。区内初のシネマコンプレックス「109シネマズ」(10スクリーン、計1665席)、TSUTAYAが家電と書籍、家具を扱う新業態「蔦(つた)屋家電」(5月3日開業)など。同駅周辺の再開発事業は、多摩川に近接する約11・2ヘクタールに、東急電鉄が中心になり1982年から進めてきた。この夏にできるオフィス棟には、「エクセルホテル東急」やネット通販大手「楽天」の本社が移転し、1万人近くのオフィス人口になる見込みだ。
2015年4月25日:ニコタマに新商業施設 シネコンなど18テナント:朝日新聞紙面から
開業時、テナントはITが5割、金融機関が3割強を占めた。割合は変わらないが、顔ぶれは様変わりした。ライブドアは他社に買収され、リーマン・ブラザーズは破綻(はたん)。楽天、ヤフーが退去し、ゴールドマン・サックス証券も床面積を減らす。ある企業の担当者は「事件でイメージが悪くなったでしょ」。
2013年4月24日:六本木ヒルズ10年、光も影も ほぼ満室、賃料は高額 入居「社員の目つき変わった」

現在の倍以上の人数を収容

 IT企業としては、長くヒルズにいたグーグルですが、2017年、ついに移転を発表します。

 移転先の「渋谷ストリーム」は地上35階、地下4階建ての超高層ビルでオフィスや店舗、ホテルが入る予定。

 この日都内のホテルで会見したルース・ポラット最高財務責任者(CFO)は「グーグルは日本でのプレゼンスを拡大してきた」述べ、日本法人の「渋谷ストリーム」への移転を発表しました。新オフィスでは現在1300人いる同法人の社員の倍以上の人数を収容できるそうです。

2018年秋に開業予定の「渋谷ストリーム」=東京都渋谷区
2018年秋に開業予定の「渋谷ストリーム」=東京都渋谷区

渋谷の再開発「クリエーター歓迎」

 長谷部健・渋谷区長はビデオメッセーシで「ようこそ渋谷に戻ってきてくれました。グーグルは多様な人たちが集まってイノベーションを起こしていて、これは渋谷区のポリシーと一致しています。これからも世界に向けてイノベーションを生んでいただきたい」と祝福しました。

 「渋谷ストリーム」の14~35階のオフィスは総賃貸用面積約4万6千平方メートルで「渋谷最大級」の広さとなります。

 2000年前後、渋谷にはIT系の新興企業が集まり、米国のシリコンバレーになぞらえて「ビットバレー」と呼ばれました。

 しかし、企業が大きくなると広さが足りずに他地域に移転するケースが少なくありませんでした。

 東急は「渋谷の課題を解消するため、オフィス用途を中心に構成した」と狙いを説明します。

ビデオメッセージで祝福する長谷部健・渋谷区長=東京都渋谷区
ビデオメッセージで祝福する長谷部健・渋谷区長=東京都渋谷区
 14~35階のオフィスは総賃貸用面積約4万6千平方メートルで「渋谷最大級」の広さとなる。2000年前後、渋谷にはIT系の新興企業が集まり、米国のシリコンバレーになぞらえて「ビットバレー」と呼ばれた。しかし、企業が大きくなると広さが足りずに他地域に移転するケースが少なくなかった。「渋谷の課題を解消するため、オフィス用途を中心に構成した」と東急は説明する。
2016年10月25日:渋谷再開発、クリエーター歓迎 東急「ストリーム」と「キャスト」:朝日新聞紙面から

広報担当者「事業拡大を支えるため」

 今回の移転についてグーグル日本法人の広報担当者は「長期的な成長と事業拡大を支えるために移転する。場所については様々な選択肢を検討したなか、創業地であることなどから渋谷を選んだ」としています。

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