では、スピーチをはじめます。
ある中学校で聞いたスローガンの話をします。
先日、中学2年生を対象に「言葉の力を強くする」という題目で講演しました。
国語教育に大変熱心な学校です。
廊下には修学旅行を題材にした壁新聞が貼ってあります。
歴史、地形、インタビューなどを細かく書き込んだ読み応えのあるものでした。
別の紙に目をこらすと、生徒が新聞や雑誌の投書欄に応募して、採用になったコラムがありました。
視点も語り口も新鮮。嫉妬すら覚えました。
先生と話すうちに、この学校に生息する言霊を発見したのです。
「これは私の尊敬する先輩が作った学年のスローガンです」と案内してくれた先生が言いました。
「わしづかめ」
ガシッとつかんで虜にすること。
勉強、スポーツ、人間関係を問わず、その中心を、芯を、心をつかめ。
一言に、生徒のあるべき姿が見事に表現されています。
この話をしたのは、講演の前。
私は、この言葉にわしづかみにされ、同時に私も生徒や保護者の心をわしづかみにする講演をしたいとギアを入れかえたのでした。
この言葉、あなたも今日から色々な場面で使えるのではないでしょうか。
大きなプレゼンがある。
大事な会議がある。
逆風の中で発言しなければならない。
今日こそ思い切ってプロポーズをしたい。
考えれば考えるほど意気地がなくなるようなときに、心の奥で「わしづかめ!」と叫んでみる。
ぐっと前のめりになり、はっきりと、すっきりと、大局的に語れるようになるはずです。
この学校では、学年があがるにつれ、「紡ぎあえ!」と文章を書くことを競いあい、「つなぎあえ!」と言って、様々なネットワークを広げることを推奨しています。
生徒たちを眺めていると、これらの言葉が心身に宿っているようでした。
メモの取り方、質問の内容、拍手の音のひとつに至るまで、この人の話すことをわしづかんでやろうという気迫に満ち溢れています。
みんな、呼吸をするように、私の話を吸い取っていくのです。
いつもの倍は疲れたけれど、なんとも言えない充実感でいっぱいになりました。
「わしづかめ」
攻めていく気持ちをつくる最高の合言葉。私も大切にするつもりです。
今日の言葉のちょい知恵をお試しあれ。