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まるでウユニ塩湖?「撮れるものなら撮ってみな」エゾシカとの攻防

野付半島の海際を歩くエゾシカの一群=6月17日早朝、北海道・野付半島、白井伸洋撮影
野付半島の海際を歩くエゾシカの一群=6月17日早朝、北海道・野付半島、白井伸洋撮影 出典: 朝日新聞

目次

 北海道に赴任して1年半。北の大地の大自然に触れて、野生動物を撮ることが好きになった。(朝日新聞北海道映像報道部・白井伸洋)

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野付半島は自然の宝庫

 道内あちこちにいるエゾシカも、大阪出身の僕には新鮮だ。時間を作っては、道東部にある野付(のつけ)半島での姿を追っている。

 先端まで26キロメートルの半島は、野鳥が訪れ、原生花園もある自然の宝庫。一本道の両脇にすぐ海が広がっている。

一本道を歩くエゾシカ。一瞬、後ろを振り返った=9月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影
一本道を歩くエゾシカ。一瞬、後ろを振り返った=9月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影

 この道路を車で走っていれば、エゾシカには会える。ただ、撮影となると簡単にはいかない。少しの音でもすぐに逃げ出す性格だからだ。僕とエゾシカの間で、「だるまさんが転んだ」が繰り広げられることになる。

僕とエゾシカの攻防

 カメラを手に外にでて、車のドアを閉めると、音に反応したエゾシカが首をくるっと回して見つめてくる。その瞬間、僕は動きを止める。100メートルの距離でも気づかれる時がある。

海際でじっと記者の方を見つめてくるエゾシカ=9月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影
海際でじっと記者の方を見つめてくるエゾシカ=9月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影

 しばらくしてエゾシカが草をはみ始めると、そろりそろりと近づいていく。ふっと顔を上げて再び見つめてくると、僕も動きを止める。その繰り返し。まるで「だるまさんが転んだ」をしている気分になるのだ。

 最終的にカメラを構えたとき、エゾシカが逃げなかったら僕の勝ち。だが、そううまくはいかない。シャッターを切る寸前に、他の車が走ってきたことに驚いて、逃げられたこともあった。

海の中を跳びはねながら走るエゾシカ=9月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影
海の中を跳びはねながら走るエゾシカ=9月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影

気まぐれな被写体だけに

 動きが思い通りにはならないだけに、光の当たり方や背景、構図などいつも以上に考える。

顔をなめられて嫌がるそぶりを見せるエゾシカ=9月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影
顔をなめられて嫌がるそぶりを見せるエゾシカ=9月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影

 時々、レンズ越しに「撮れるものなら撮ってみな」と挑発されているようで、こちらも燃えてくる。

忘れてはいけないこと

 一方で、エゾシカによる食害がここ野付半島でも広がっていると聞いた。エゾカンゾウなどの植物が食べられているという。

野付半島から見た日の出。撮影は人が少ない早朝か夕方が多い=6月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影
野付半島から見た日の出。撮影は人が少ない早朝か夕方が多い=6月、北海道・野付半島、白井伸洋撮影

 豊かな植生がなくなれば、昆虫や野鳥が減っていき、生態系への影響も懸念される。こうした現状があることも忘れてはならないと思う。

遠くに、泳ぐ一群が

野付半島の海際を歩くエゾシカの一群=6月17日早朝、北海道・野付半島、白井伸洋撮影
野付半島の海際を歩くエゾシカの一群=6月17日早朝、北海道・野付半島、白井伸洋撮影

 この一枚は、6月の早朝のものだ。帰り支度を始めたところで、海の方からゴボゴボと音が聞こえてくるので見ると、エゾシカの一群が遠くで泳いでいた。だんだんと僕の方に近づいてくる。先回りして海と陸の際が見渡せる場所に立って、じっと待つことにした。

 風がないで波が穏やかだったので、シカたちが海からあがって水際を歩いてくれたら、鏡面反射のような写真が撮れるかもしれないと考えた。

 結果は完全な鏡面とはいかなかったが……。何となく不思議な感じのする一枚になった。

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