では、スピーチをはじめます。
今日は、野次に負けない方法です。
みなさんも国会中継などで、口汚い野次を聞いたことがあるでしょう。うんざりしますね。
野次の語源は諸説ありますが、「おやじ馬」。つまり老いて役に立たない馬を指すという説があります。これが転じて、無責任に騒ぎ立てることが「野次」になった。
国会で野次を飛ばしているような輩は、自ら老いて役に立たないか、暴れるだけの馬だと証明しているようなものです。
しかし、この野次が曲者なんです。
言われたら嫌なこと、生理的に嫌悪を抱く言葉を浴びせられれば、誰だってむっとします。
「このやろう!」と目をむきたくなります。
「そんなことを言うあなたたちこそ……」
「今の発言は、許せません!」
「だったらここで、はっきりしようじゃないですか!」
と野次を受けてたつ。
この瞬間、見ている人は、「あぁ、この人は野次に弱い人なんだな」と思います。
この気色ばった姿をテレビが何度も放送し、ネットで何十万回と再生される。
野次への弱さが命取りになる時代なんですね。
野次にどう立ち向かうか。
夏目漱石の「それから」、森鴎外の「舞姫」などを読まれたことがある人なら、こんな単語を覚えていませんか?
Nil Admirari(ニル アドミラリ)
ラテン語で「何事にも動じない」という意味。
ローマ時代の哲学者キケロは、こう言ってます。
「真の知性は、起こり得るあらゆる出来事に備えができている」
この考え方がのちのイギリスでもてはやされ、「ジェントルマン」の基本的な態度になりました。
何があっても、どんな時も自分の感情を表に出さない。
常にPeace of Mindの境地でいること。野次に強くなる方法は、これです。
「ニル アドミラリ」と心で念仏のように何度かつぶやき、姿勢を正して、英国紳士のようにふるまう。
ポーカーフェイスをつくり、一切の感情を顔に出さないこと。
これを10秒、20秒と続けていれば、無責任な老いた馬や暴れ馬は、言葉の行き場を失います。
さすがに言っている自分がバカに見えて、頭と言葉に自ら冷や水をかけるはずです。
日本の戦国武将たちも、仏像の顔を眺めながら感情を表に出さない顔をつくる修行をしたとか。
ちょっとした表情を誰もが簡単に撮影して、拡散できる時代だからこそ、感情を殺した顔をつくる努力が必要になるのです。
野次や厳しい言葉に対しては、「ニル アドミラリ」。
今日の言葉のちょい知恵をお試しあれ。