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ベーシック・インカムって何? 働く人が「損」にならない理由
衆院選では、憲法や教育などに加えて「ベーシック・インカム」(BI)も注目されています。世界ではすでに導入されている国もある「ベーシック・インカム」ですが「働かなくてもいいの?」「まじめに働く人が損をするのでは?」など、疑問に思う人も少なくありません。「ベーシック・インカム」について詳しい駒沢大学准教授の井上智洋(ともひろ)さんに「生活保護との違い」などについて聞きました。
そもそも「ベーシック・インカム」とは何でしょうか。
提唱者は18世紀後期の社会思想家トマス・ペインに遡るそうですが、近年ベーシック・インカムを積極的に提唱しているのは、オランダのノンフィクション作家ルトガー・ブレグマン氏です。
井上さんによると、「一言でいうと、生活に必要な最低限のお金を政府が全ての国民に給付する制度」と説明してくれました。
「ベーシック・インカム」がもらえると、みんな働かなくてもいいということになるでしょうか?
井上さんは「労働しなくなるかどうかは、もらえる額によります」と言います。
井上さんによると、現在、日本で提唱されている「ベーシック・インカム」の額は月7~8万円が多いそうです。
「7~8万円なら、今、勤めている会社などを辞める人は少ないでしょう。『ベーシック・インカム』はあくまでも最低限の生活を保証する制度であり、7~8万円で満足する人は少ないことから、働いている人の多くは仕事を続けると思われます」
「ベーシック・インカム」が導入されても、働いている人は損にならないのでしょうか?
井上さんは「生活保護は働いて収入を得た分、支給額が減らされます。一方、『ベーシック・インカム』はどのような所得の人であっても、支給額に変化がありません。つまり、働いたら働いた分だけ(税金は取られますが)所得が増えます」と説明します。
生活保護や失業保険をもらった方が、給料が安い仕事をするより「いい暮らし」ができると、就職をしたくなくなる人が出てきます。「ベーシック・インカム」の場合は、働いた分の収入は「ベーシック・インカム」に上乗せされます。
井上さんは「『ベーシック・インカム』は生活保護よりも労働意欲が減退しません。より多く働こうとする人にデメリットはありません」と強調します。
そもそも、生活保護と「ベーシック・インカム」の違いは何でしょうか?
井上さんは「給付する人を選ぶのが生活保護」と言います。そして「生活保護は、選別するがゆえの限界を持っている」と指摘します。
「日本では、今も毎年、餓死者が出ています。生活保護の給付の基準を満たしているのに受給できない人がたくさんいるのです。また、多くはないですが、不正受給者がいるのも事実です」
対して「ベーシック・インカム」は「生活保護のような限界がない。全ての国民にあまねく給付されるがゆえに、取りこぼしがありません」と説明します。
「『ベーシック・インカム』は選別主義的ではなく、普遍主義的な社会保障制度と言えます」
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