連載
#14 夜廻り猫
離婚して6畳一間…「最悪なわけじゃない」 夜廻り猫が描く「独り」
離婚したあと、ひとりで暮らしはじめたワンルームで、女性が泣いています。でも、女性が気づいたのは……。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが、「独りでいること」を描きました。
涙の匂いをかぎつける猫・遠藤平蔵は、秋の夜長のきょうも夜廻りを続けます。「泣く子はいねが~ むっ 涙の匂い…!」
女性がタオルに顔をうずめて泣いています。夫と離婚したあと、ワンルームにひとり引っ越してきました。
それでも、女性はしみじみと振り返ります。
「大丈夫 一人は最悪なわけじゃない 泣きたい時に泣ける部屋もあるし」
学生時代みたいな、6畳一間のワンルーム。「私そのものね」と語りながら、
「でも、もう人との比較はどうでもいい これからは自分を大切にします」と決意します。
次の目標は、このワンルームにお客を招くこと。
女性は「最初のお客様ね いらっしゃいませ」と遠藤たちに笑いかけるのでした。
作者の深谷さんは、離婚した知人の「学生みたいなワンルームに住んでる。恥ずかしい」という言葉が心に引っかかり、漫画を描きました。
「気持ちはわかるんです。私も同窓会には行きにくいです」
幸せそうな家庭を築いたり成功したりした同級生や友人を見て、思わずうらやんだり自分と比べてしまったり。
深谷さんは「『恥ずかしい』なんてことはないよ」と伝えたかったといいます。
「家族がいなくても友達がいなくても、『自分』があればいいと思います。『自分はこうなんだ』と話してくれる人が、私は好きです」
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。3月23日、講談社から単行本1、2を発売。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受けた。自身も愛猫家で、黒猫のマリとともに暮らす。
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