IT・科学
カラーテレビから身を守れ! スマホ依存にも通じる「57年前の教え」
9月10日は、テレビのカラーの本放送が始まった日です。1960年、NHKや日本テレビ、ラジオ東京(現TBS)、朝日放送、読売テレビが一斉に開始しました。当時は高価だったカラーテレビですが、1964年の東京五輪によって一気に普及します。番組が東京五輪一色になる中、テレビを見過ぎて「やたらと忙しくなるような生活」を心配する声も。スマホ依存やソーシャルメディア疲れが問題になる今の日本にも通じる悩みがあったようです。
1960年9月10日、カラーテレビの本放送が始まりました。
日本初のカラーテレビは東芝の「21型D-21WE」です。丸形ブラウン管で真空管式の消費電力は380ワット、価格は52万円。大卒初任給が1万8千円前後だった時代、とても高価なアイテムでした。
一般家庭で買える人は少なく、多くの人は、繁華街や主要駅などに設置された街頭テレビに群がって視聴しました。
カラーテレビの普及を後押ししたのが東京五輪です。
開会式や注目競技を見ようと白黒テレビからの買い替えが進みました。
そんな中、1964年10月9日の朝日新聞に、ある心理学者の記事が載りました。
法政大学の乾孝教授(当時)が「計画たてて番組選択」という見出しで、テレビを見過ぎないよう呼びかけるものでした。
乾教授は、テレビに時間を使いすぎてしまうことを「『これは不要だ』と捨てる決心のできない意地汚い習慣です」と指摘。
「与えられた可能性のすべてに義理立てして、やたら忙しくなるような生活が流行しているのではないでしょうか」と問題提起します。
なにやら、思わずスマホをいじって、フェイスブックやインスタグラム、ツイッターなどソーシャルメディアに時間を使ってしまう現代の私たちにも通じる教えに聞こえてきます。
乾教授は、東京五輪という同じものにみんなが群がる様子についても疑問を投げかけます。
「みんなが知っている話のタネを、また改めて交換しあっても、チューイングガムのカスみたいに味気ないものではないでしょうか」
芸能人のスキャンダルや猫動画など、ネットで拡散しやすいものだけで盛り上がってしまう…そんなネット時代の私たちにも耳が痛い話です。
今までより刺激的で面白い情報が無料で膨大にあふれる。白黒テレビからカラーテレビに変わった50年以上前の日本の状況は、スマホにたくさんの情報が流れ込んでいる現代の日本に似ているのかもしれません。
カラーテレビへの「対策」として乾教授は「別の番組」を見つけることをすすめています。
「見落とした新番組を発見なさり、それを『話のタネ』にしてくだされば、これも今後のテレビ文化にとって、大きなプラスになるはず」
ネットの世界では、自分の好きな情報だけに囲まれてしまうフィルターバブルという現象が問題になっています。「別の番組」を見つける努力。これも現代の私たちには必要なスキルなのかもしれません。
1/52枚