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石像400体、モデルは「普通の人」 富山の謎スポット、誰が作った?

ピースをする石像。お地蔵様ではなく「普通の人」が400体=富山市、高億翔撮影
ピースをする石像。お地蔵様ではなく「普通の人」が400体=富山市、高億翔撮影 出典: 朝日新聞

 富山市の深い谷「神通峡」に沿って岐阜との県境をめがけて国道41号を車で走っていくと、対岸に数え切れないほどの灰色の像が並んでいます。公園? 宗教施設? 新手の墓…? 「一体、何なのだろう」と気になったので、引き返して対岸に渡ることを決心しました。そこにいたのは、普通のおっちゃんの石像。もちろん、おばちゃんも。子どもも。誰が何のために?調べてみました。(朝日新聞富山総局記者・高億翔)

【画像】動物の上に座るおばさん、一升瓶片手にご機嫌なおじさん、よく見たら「普通の人」だった石像たち
 

富山の墓? 怖い…

 意を決して、近くまで車で寄ってみます。日も暮れてきました。あたりは人通りも少なく、車内で音楽を流していますが、気が気でないです。胸騒ぎの道中を経て、なんとか石像(?)たちの前に立つことができました。

多種多様な石像=富山市、高億翔撮影
多種多様な石像=富山市、高億翔撮影 出典: 朝日新聞

人の像、人の像、人の像…

 あたりには人物像、人物像&人物像。不思議、という言葉では片付けられない世界観にぽつんと投げ込まれてしまった気分です。正面から眺めてみると、自分に像たちの視線が集まっているようで、ちょっぴり怖さも。

 だって、パッと見て100体以上が僕を見ているように見えるのですから。僕の視力は両目で0.5を切っています。遠目では表情も姿も分からないので、怖さを振り切り、さらにじりじり近づいて観察することにしました。

動物の上に座る…?=富山市
動物の上に座る…?=富山市 出典: 朝日新聞

おっちゃんの像も!

 近づくとまず、ネクタイを締めた柔和な表情をしたおっちゃんの像が目に入りました。どうやら「お地蔵さま」の類いではなさそうです。

 あぐらをかいて、一緒に酒を酌み交わしたくなるようなおっちゃんのほかにも、ピースをする人、本を広げる人、背筋を伸ばしてちょっと頑固そうに座る人…。

背広姿の男性像=富山市
背広姿の男性像=富山市 出典: 朝日新聞

不思議な安心感

 おばちゃんもいるし、子どももいます。服装、髪形、表情は様々で、今にも語りかけてきそうで、それぞれの性格も伝わってくるようです。卒塔婆(そとうば)などはなく、想像していたホラースポットなんかとは違いました。

 像の間を歩くと謎の安心感に包まれますが、いかんせんこの状況はシュール過ぎます。なぜ僕は知らない人たちの像の間を歩き、勝手に安心感を感じているのですか…。夢心地にさせる新手のアトラクションなのでしょうか。

子どもを抱いて柔和な表情を見せる女性像=富山市
子どもを抱いて柔和な表情を見せる女性像=富山市 出典: 朝日新聞

まさかの1人で作った

 この謎スポットについて、その後、何とかしていろいろと調べてみました。どうやらこの「ふれあい石像の里」を作った方は、現在も富山県内で医療や福祉を手がける「むつみグループ」創業者の故・古河睦雄さんのようでした。13年に80歳で亡くなるまで事業に情熱を注いだとのこと。

 関係者の話では、古河さんは生きている時、「絵を買おうとしたけど、1人で眺めるのもつまらないから」と思い切ってお世話になった人たちの大理石製の石像400体を作っちゃったらしいです。

 …すごいけどちょっと豪傑すぎやしませんでしょうか。とたんに、世界史で習った今にも動き出しそうな「兵馬俑(へいばよう)」を思い出しました。ちょっとスケールが大きい思いつきですが、古河さんの人柄が表れていて、ほっこりしました。

鎮座する石像たち=富山市
鎮座する石像たち=富山市 出典: 朝日新聞

実は今も生きてます

 生前の古河さんは、お世話になった人たちに感謝を表そうと、親しい人たちの写真を集めていたようです。石像の製作を中国の職人に依頼。私財を投入し、1995年にこの里を作ったということです。近くには、日中友好などを願って94年に作られた「おおざわの石仏の森」もあって、また別に500体の羅漢像が並んでいます。

 夫婦で里の管理をしている70代の女性は、人物像を毎日見つめ、ありがたみから前を通るたびに会釈しています。「今も生きている人が大勢いますからね」

 そうでした――。鈍器に頭をぶつけたかのような衝撃。忘れていました。まるで人物像全員が故人かのような固定観念を抱いていたので、僕は女性の言葉に安心していました。全然ホラー要素はなかったのです。

優しそうな男性像たちも生きているかも=富山市
優しそうな男性像たちも生きているかも=富山市 出典: 朝日新聞

立体アルバム!

 半生を振り返って、友人らを思いながら「立体アルバム」を作った古河さん。「石仏の森」の敷地内にはスーツ姿の古河さんの石像が立ち、満足そうに笑みを浮かべていました。

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