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全国にひそむ「塩漬け土地」爆弾 借金6400億円!ぜーんぶ税金

税金を飲み込み続けていく「塩漬け土地」とはどんなものなのか?手に入れた内部資料と現場をたどりながら、損失の実態をたどりました。あなたの身近にもあるかも?

埼玉県川口市にある15億円以上の価値があることになっている空き地
埼玉県川口市にある15億円以上の価値があることになっている空き地 出典: 朝日新聞

目次

 街中に突然、現れる謎の空き地。敷地にはよくわからない立て看板。もしかしたら、それは自治体の「塩漬け土地」かもしれません。全国に散らばる「塩漬け土地」が飲み込んだ税金は、今回調べただけでも6400億円!使われていないのに何で? 調べると、笑うに笑えないシュールな実態がありました。

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実際の価値は10分の1以下

 大阪府高石市。高石駅前に降り立つと、駅周辺の好立地のはずなのに、あちこちに空き地が目立ちます。看板の古さが放置の歴史を物語ります。

 こちらで入手した資料を見てみます。

 「高石駅前線用地」を見ると自治体の「帳簿上」の価値を示す「簿価」が約8億6700万円で、1坪当たり530万円。買った当初の価格も330万円をこす高級不動産でした。

 ところが、鑑定の結果、実際の価値はひと坪あたり約37万円しかありませんでした。

大阪府高石市にある駅前の空き地
大阪府高石市にある駅前の空き地 出典: 朝日新聞

いくら下がっても「帳簿上」は変わらない

 なぜ? この「簿価」という制度。自治体の外郭団体である土地開発公社が土地を買った場合、「帳簿上」は購入時の値段に利子を加えた額にできることになっているからです。

 あとでその額で自治体に買ってもらうことになっているからなのですが、結局自治体側も買い取れず、土地開発公社の借金は利子で膨らみ続けました。

 結果、トータル35億円で買った土地に利子が約16億円もついたのに、実際の値段を鑑定してみたら土地の値段がはんぱないほど安くて7億ちょっとだったというわけです。こうなるともともとの買値自体どうだったのか……。

ようやくバレた理由

 なぜ、今になって明るみに出たのか。

 借金の利子を膨らませる土地を何とかしようと、国が特別に用意したのが、自治体がローン(地方債)を組んで「土地開発公社」の借金を肩代わりしていく方式です。

 自治体が対処をしようとすると、「土地開発公社」の借金が一気にのし掛かります。せめて、分割払いにすれば払えるだろうというわけです。

 その名は「第三セクター等改革推進債」(三セク債)。2009年~2016年度までの期間限定で認められました。

 高石市はこの三セク債という税金で払うローンを30年分も組んで、公社の借金を返しました。そのときに実際の価値を計算したので、安いことが分かったというわけです。

「簿価額」と「代物弁済額」(その土地の実際の価値)の差に注目を
「簿価額」と「代物弁済額」(その土地の実際の価値)の差に注目を

「ここは犬の運動場ではありません」

 埼玉県川口市でも、三セク債による30年ローンを232億円分組んで、土地開発公社で塩漬けになっていた土地にからむ借金を肩代わりしました。

 つまり借金して買った土地が、まともな事業に使われることなく利子も含めて230億円以上もあったのです。

 ですが入手した土地開発公社の資料(2015年度末)によると、土地開発公社にはなお160億円超の借金と、それとほぼ同価値(ということになっている)土地が残っています。

 例えば公社に残っている「老人福祉施設建設」名目の土地。すぐ近くに市の高齢者施設が既にあり、使われていません。

 「ここは犬の運動場ではありません」という古看板と雑草が、哀愁を誘います。ちなみに15億円以上の価値があることになっています。

埼玉県川口市にある15億円以上の価値があることになっている空き地
埼玉県川口市にある15億円以上の価値があることになっている空き地 出典: 朝日新聞

土地までの道が細くて使えない

 住宅街の路地裏には、「不良宅地買収事業」なる名目の土地もあります。市への取材によると、土地までの道が細くて、建築基準法上そもそも建物がつくれないそうです。

 公共事業などのために用地を買い集めるのが公社の趣旨なのですが……そりゃつかえないですよね不良なんですから。

 ちなみに三セク債で税金による返済ローン232億円分を組んだ土地。ほぼ同額の「簿価」があることになっていましたが、三セク債を使って市に引き取る際、実際の価値を計算したら3分の1くらいしかありませんでした。つまり150億円以上は損失です。

 他の土地開発公社に残る土地も、実際の価値を評価した段階で損失が出る可能性があります。

埼玉県川口市にある土地開発公社が購入した空き地。土地までの道が細くて、建築基準法上そもそも建物がつくれないという
埼玉県川口市にある土地開発公社が購入した空き地。土地までの道が細くて、建築基準法上そもそも建物がつくれないという 出典: 朝日新聞

国のエクセルファイルを入手

 実は今回の取材で国のエクセルファイルを入手しました。読み込むと、2015年度末時点で10年以上公社が持ったままになっている土地が8153億円分ありました。

 そのうち「諸経費・利息」で膨らんだ部分が1493億円分におよぶと分かりました。もちろん買った時より土地の値段が下がっていれば、その分もあわせた額が損失になっています。

そう、利子は今も膨らみ続けているのです。

こちらで入手した内部資料の一部。単位は百万円です。
こちらで入手した内部資料の一部。単位は百万円です。

結局「塩漬け」のケースも

 さらに問題なのは、外郭団体の土地開発公社から、自治体に所有が変わっても、根本的な解決にはならないということです。要はまともに使われていないわけですから。

 表向きは公共事業に使うという名目が維持されると、民間が買い受けて活用するといった変化も起こせません。

 一部は「駐車場」などとして暫定的に利用されることもありますが、正式な事業に使われないままになります。

土地開発公社がらみの土地はまだまだ全国にたくさん=香川県多度津町、赤井陽介撮影
土地開発公社がらみの土地はまだまだ全国にたくさん=香川県多度津町、赤井陽介撮影

活用できるか注視する必要

 これでは土地開発公社に置かれたままになっているのとさほど変わりません。今回の取材では、こうした土地までは調べきれませんでした。いくら分あるのかも不明です。

 ですが、とある市の内部資料を手に入れたところ、公社に買わせた後の土地をすぐに自治体が買い取りながら、事業に使われないままというケースが、はっきり書かれています。

 仮に土地開発公社が消えたからといって、塩漬け土地の脅威は終わりません。自治体がしっかり活用するなり、民間売却して活用してもらうなりするまで、注視していく必要があります。

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