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IT・科学

幼児が転落するかも 危険なベランダ4選 事故を防ぐ知恵とは?

「幼児が転落しそうなベランダは?」と聞かれたら、どんな場所か想像できますか? あるNPOがネット募集したベランダ写真から「危険ポイント」を探してみましょう。お宅のベランダと見比べてみてください。意外な「盲点」も潜んでいるかもしれません。

踏み台になりそうな物がたくさんあるベランダ=Safe Kids Japan提供(背景を加工しています)
踏み台になりそうな物がたくさんあるベランダ=Safe Kids Japan提供(背景を加工しています)

目次

 「幼児がベランダから転落」。よく聞く痛ましいニュースです。でも、そもそも危険なベランダってどんなところ? よそのお宅と比べたことがないし、自宅のベランダがどれだけ危ないのかもわからない。では、子どもが転落するかもしれない「危険ポイント」を、実際に暮らしている家のベランダの写真で探してみましょう。もしかすると、皆さんのお宅のベランダにあてはまる危険があるかも?

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写真でわかる ベランダの危険と対策

 写真で協力してもらったのは、子どもの事故を防ぐために活動しているNPO法人Safe Kids Japanです。

 このNPOが昨年12月~今年3月、ふだん生活で使っているベランダの写真や柵の高さといったデータをインターネットで募集しました。

 NPOの理事で、事故予防を研究している産業技術総合研究所の首席研究員・西田佳史さん(46)に、投稿された24件から、「幼児にとって危険」というベランダを4つ選んでもらい、対策を聞きました。

危険ベランダ①【日用品が踏み台に!型】

柵の近くにゴミ箱=Safe Kids Japan提供(背景を加工しています)
柵の近くにゴミ箱=Safe Kids Japan提供(背景を加工しています)

 散らかっておらず、一見すると何も問題なさそうなベランダです。

 でも、奥にある二つの「ゴミ箱」は要注意。柵に隣接しています。

 この柵は高さが125センチありますが、子どもでもゴミ箱の上に立てば、柵を乗り越える危険が高まります。


【対策①】なるべく物を置かないこと

 イスや脚立でなくても、ゴミ箱や植木鉢、バケツなど踏み台になりうるものはたくさんあります。

 ふだん使わないものを、つい、ベランダに置いていませんか?

 幼児が一人でベランダに出ないようにすることも大切ですが、万が一出てしまった時に柵を乗り越えないように、ベランダにはできるだけ物を置かないことが大事です。

危険ベランダ②【室外機隣接型】

もし室外機の上に乗ってしまったら・・・=Safe Kids Japan提供(背景などを加工しています)
もし室外機の上に乗ってしまったら・・・=Safe Kids Japan提供(背景などを加工しています)

 ベランダに物を置かないようにしても、どうしても取り除きにくいものがあります。

 エアコンの「室外機」です。

 写真のお宅では、子どもが立っている向こう側の柵手前に設置されています。これも踏み台になってしまいます。

【対策②】室外機は最低でも60センチ以上、柵から離す

 エアコンの室外機は、できるだけ柵から離して置くことが重要です。

 子どもの年齢によって身体能力は異なりますが、中途半端なすき間では、室外機の上に乗って柵を乗り越えることもできます。

 最低でも60センチ以上は離すことが必要です。


危険ベランダ③【狭すぎて手の打ちようが無い?ハイリスク型】

室外機をこれ以上、柵から離せない?=Safe Kids Japan提供(背景を加工しています)
室外機をこれ以上、柵から離せない?=Safe Kids Japan提供(背景を加工しています)

 できるだけ室外機を離すことが大切とはいえ、奥行きが狭すぎてどうしようもなさそうな「ハイリスク」なベランダもあります。

 このお宅は室外機がベランダの奥行きの半分以上を占めていて、これ以上離せそうにありませんね。

【対策③】室外機の上部に斜め板

 室外機の上の部分に、板を斜め方向に設置することが対策として考えられます。

 幼児が室外機に登りにくくなる工夫です。

室外機の上部に斜め方向の板を設置した時のイメージ図=Safe Kids Japan提供
室外機の上部に斜め方向の板を設置した時のイメージ図=Safe Kids Japan提供

危険ベランダ④【柵そのものが危険!ハイリスク型】

柵にすき間がたくさん=Safe Kids Japan提供(背景などを加工しています)
柵にすき間がたくさん=Safe Kids Japan提供(背景などを加工しています)

 こちらのお宅は柵近くにある室外機も気になりますが、柵そのものが危険です。

 横方向のすき間が重なっています。

 ベランダに物を置いていなくても、この柵のすき間に幼児が手や足をかけてよじ登る可能性があります。これは盲点です。


柵自体が足がかりになる危険がある
柵自体が足がかりになる危険がある

 柵のすき間はそれぞれ1.5センチ。

 3歳児の平均的な足の親指先端は厚みが1.2センチで、このすき間に入ってしまいます。

3歳児の平均的な足の親指先端は厚みが1.2センチ=「子どものからだ図鑑 キッズデザイン実践のためのデータブック」より
3歳児の平均的な足の親指先端は厚みが1.2センチ=「子どものからだ図鑑 キッズデザイン実践のためのデータブック」より

【対策④】窓の高い場所に補助鍵を

 こうしたベランダには子どもを一人で出さないようにすることが重要です。

 どのベランダにも言えることですが、ベランダに面する窓や引き戸の高い場所に、市販の補助鍵を付けておくことが大事です。

 子どもの手が届かない高さに設置しましょう。

吸盤タイプのロックもある=子どもの事故予防のためのモデルルーム「京あんしんこども館」(京都市)
吸盤タイプのロックもある=子どもの事故予防のためのモデルルーム「京あんしんこども館」(京都市)

対策のポイントは「環境を変えること」

―――対策のポイントを西田さんに聞いてみました。

 大事なのは、予防のために「自分たちで変えられるもの」を見つけることです。

 踏み台になりうるものを置かない、というように、万が一幼児がベランダに出てしまっても、原因となるものがない環境をつくっておけば、転落のリスクを減らせます。

―――逆に「自分たちで変えられないもの」って何でしょう。

 子どもの年齢や発達していく様子、そして興味や好奇心です。

 大人が「危ないからベランダに出たらダメ!」と何度も言い聞かせても、子どもは大人が思ったようには理解できない場合があります。

―――事故が起きると、「子どもから目を離さないで」といったコメントがインターネット上に出回ります。

 保護者がずっと子どもを見続けることには限界があります。環境を変えていくことで、効果的な予防につながるはずです。

 今回紹介した写真と、お宅のベランダを見比べてみてください。

 子どもがいるご家庭はもちろん、たまに子どもが遊びに来るお宅も、注意が必要です。

 最後に環境面で配慮されている設計のベランダの一例を紹介します。

室外機や物が柵で囲われている=Safe Kids Japan提供(背景を加工しています)
室外機や物が柵で囲われている=Safe Kids Japan提供(背景を加工しています)


―――室外機を含めて物を収納できるスペースがありますね。

 こうしたデザインの住宅がもっと増えればいいと思います。

 マンションによっては、室外機を床面に置かずに、ベランダの天井からつるすように設置してある場所もあります。

 今回の調査では、写真を見ることで、踏み台となりうるものや柵との位置関係がはっきりわかりました。集まったデータは、住宅メーカーなどの企業に渡す予定です。今よりももっと、転落事故の予防につながるベランダが増えるようになってほしいと思います。

 

ベランダ写真を募集中

 NPO法人Safe Kids Japanは5月から、ベランダ写真を募集し、転落事故予防に役立てるプロジェクトの第2期を始めました。

 また昨年12月~今年3月に募集した結果の一部についても、ホームページに掲載しています。

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