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超絶技巧の「バナナート」 針でプチプチ…賞味期限は「1週間」
最近はスーパーのみならず、コンビ ニでも手に入るバナナ。そんな身近な食材に、竜や浮世絵、初音ミクなどを描き出すクリエーターがいます。その名も、エンドケイプさん(43)。どんな見事な作品も、もって1週間程度というバナナ作品「バナナート」ですが、エンドケイプさんは「食べるまでがアート」と、その短さも楽しんでいます。
エンドケイプさんは、テレビアニメの「ジョジョの奇妙な冒険」のオープニング曲の作詞や、ライターとしても活躍するクリエーター。4年ほど前に、食べ物の「傷みやすい」というネガティブな要素をポジティブに変えられないかと考え、たどり着いたのが、「傷み」で絵を描く、バナナートだったといいます。
他にも、りんごや、マンゴー、人参などで試しましたが、「質感や色など、バナナが一番でした」。
押しピンや裁縫用のマチ針などを使い、点描画の要領で絵を描きます。針を深く入れすぎると黒くなってしまうそうで、深さ1ミリ程度がめやす。色の濃淡は、点の密度や深さで調整します。
バナナ1本に描くのに2時間から4時間かかるといいます。
この日描いていたのは戦国時代の画僧・雪村周継が描くような竜。制作から2時間ほど経っただけで、針で刺した部分がへこみ、竜が立体的になってきました。多く針を刺した部分は茶色がにじみ、陰影が強調されます。
「バナナの皮全体が茶色になってしまっても、それはそれで、木の彫刻のようでかっこいいんです」とエンドケイプさん。作った後も、日々変わる表情を楽しめるといいます。
そんなエンドケイプさん、これまでには、初音ミク、浮世絵などの作品も作ってきました。
バナナは実は4角形か5角形。バナナートはバナナのどの面に描くか、何を描いたら面白いかなど、普段とはまた違った発想が試されます。最近では、小学校などでワークショップも開かれているといいます。
バナナの傷みを考えて作品を作り、最後は食べる――。「バナナートは食育でもある」とエンドケイプさん。「食べるために、わざと失敗するのもありです」
なおこの日のイベントは、東京芸術大学大学美術館(東京都台東区)で開催中の特別展「雪村―奇想の誕生―」に合わせ開催されました。
あの尾形光琳や「マネジメントの父」ドラッカーも魅了したといわれる雪村の作品。展覧会は5月21日まで(月曜休館)。
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