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IT・科学

コケるとヘコむ? 熊本の交通掲示板ネタ「中の人」の悩み聞いてきた

ブルゾンちえみ仕様になった熊本の交通掲示板
ブルゾンちえみ仕様になった熊本の交通掲示板

目次

 エレキテルからブルゾンへ――。一発屋芸人の話ではありません。熊本名物になりつつある交通掲示板。管理しているのは熊本県警です。警察官にしては「攻めた」この取り組み。いったいどんな人が作っているのでしょう。3代目の担当者として「警部」の愛称を持つ「中の人」に接触。ネタのひねり出し方、幻の「没ネタ」を聞いてきました。(朝日新聞熊本総局記者・小原智恵)

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4月からブルゾンへ

 4月1日から熊本県内にある電光掲示板がブルゾンちえみ仕様に変わりました。

「黄色信号 行かない! 待つの。」
「安全運転 ウィズB (ベルト)」

 うまいですね。

 この2パターンが、掲示板に交互に表示されます。

 電光掲示板が登場すると、さっそくネットで話題に。

 「もう最近電光掲示板見るの楽しみになってる」「安定の熊本県警察ですね」といった声が聞かれました。


ツイッターのペンネームは「警部」

 この掲示板は、熊本県内50カ所の道路にあります。

 交通安全情報を流し始めたのは、今から4年前。はじめはお堅い文言で始まりましたが、2013年6月ごろ、当時はやっていた日本エレキテル連合の「ダメよ~ダメダメ」にかけた「飲酒運転 ダメよ~ ダメダメ」で話題を集め、以来、「攻めてる」と人気です。

 一体誰が考えているのでしょう。会ってきました。

 現在3代目として担当するのは交通企画課交通事故防止総合対策室室長補佐で、警部の中田和男さん(42)です。

 部署名が長いですが、ざっくり言うと、事故対策のための交通安全教室をしたり、分析をしたりする部署で、5万人近くのフォロワーがいる熊本県警察本部ツイッター(@yuppi_KK)を担当する部署でもあります。

 ちなみに、中田さんの熊本県警ツイッターのペンネームは「警部」です。

ペンネームは「警部」の中田和男警部
ペンネームは「警部」の中田和男警部

夜ふかしネタでデビュー

 中田さんの掲示板デビューは、2016年4月1日。日本テレビ系列のバラエティー番組「月曜から夜ふかし」に出演したこともあり、番組名ににかけたネタで登場しました。

「夜ふかし での運転は 危険です!」

 6日間表示された後、春の全国交通安全運動仕様に。ところが、4月14日に熊本地震が発生したため、16日から復活予定だったデビュー作は6日間だけの幻になりました。

6日間だけ出現したデビュー作
6日間だけ出現したデビュー作

本人からリアクションも

 毎月1度は変わる掲示板。2016年度はオリンピック、君の名は、そして、ピコ太郎などのネタにかけた文言が登場しました。

 7月22日にポケモンGOが配信された際には、敏感に反応。3日後には、ポケモンGOと脇見運転や歩きスマホを見事にかけた文言をひねり出し、掲示板の表示を始めました。

 中田さんの昨年度の自信作はバブルのネタでおなじみのお笑い芸人・平野ノラのネタです。

「しもしもー 運転中の 携帯NG」
「歩行者 とびだし おったまげ」

 平野ノラ本人のツイッターやブログでも紹介されました。

平野ノラ本人も反応した「おったまげ」
平野ノラ本人も反応した「おったまげ」

ネタ元はわりと身近

 ネタ元はわりと身近です。

 テレビを見ながら考えたり、妻や小中学生の娘や息子と話し合うそう。サッカー選手の長友佑都選手が発した「アモーレ」にかけた、「アモーレ のために 安全運転」は妻の作品。

 ブルゾンちえみのネタは、ファミリーレストランでの家族会議から生まれました。小学5年生の娘が「黄色信号 行かない 待つの」とつぶやき、即採用となったそうです。

 同僚や大学生からネタを提供してもらったこともあるそうで、「みなさんからのアイディアも募集しています」。

実は妻の作品「アモーレ」
実は妻の作品「アモーレ」

幻の没作品

 とはいえ、警察です。「大人の事情」で没になったネタもあります。

「シンゴジラ 飲酒運転 撲滅せよ」

 これは「破壊的」という理由でお蔵入りに。

「逃げるは 恥だが ………」

 続く言葉が見つからず、日の目を見ることはありませんでした。中田さんは「限られた文字数で勝負をするのはネックにはなりますね」と話します。

タイプミスではない「しもしもー」
タイプミスではない「しもしもー」

「ハードル高くなってきた」

 ツイッターでは、根強いファンもついてきた電光掲示板ネタ。こうなってくると、変なプレッシャーを感じてきそうです。

 「前から評判があった掲示板なので汚してはいけないとプレッシャーを感じていましたが、また評判がよくなってハードルが高くなってきました」

 狙って出して「コケる」ことだってあります。

 それでも「次はがんばるぞ」と、気持ちを新たに挑み続けています。

ピコ太郎?
ピコ太郎?

「次は……」

 今年度も担当の続投が決まった中田さん。「堅いとなかなか意識してもらえない。ユニークで、インパクトのあるフレーズでドライバーに安全運転を意識してもらいたい」と話します。

 「『アキラ100%』はいけるかな、と思って考えましたが、これという言葉がなくて難しそうです。すごい人が登場するのを待っています」

 次回作も期待がかかりますが…

 「次は、まじめなやつを出す予定です」

 メリハリも大切にしているようです。

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