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別府「湯~園地」大ヒット、ウナギ少女は炎上 自治体PR何が正解?
「うどん県」以降、自治体によるPR動画作りが増えました。
観覧車もジェットコースターも温泉につかりながら楽しめて、園内を優雅に歩く老若男女はバスタオル姿……。大分県別府市のPR動画は、ありえない遊園地を見せて全国の話題をさらいました。続いて実現へのクラウドファンディングを立ち上げると、目標額1千万円を20日足らずでクリア。いまやPR動画は、ローカル都市の大きな武器となっています。しかし、すべての自治体がバラ色というわけではありません。その差を分けるのは何か、探りました。(朝日新聞編集センター・軽部理人)
今年2月9日、別府市役所での長野恭紘市長の記者会見は、「湯(ゆ)~園地」計画の第二段階、クラウドファンディングの開始宣言でした。2016年11月にYoutube上にアップした、「湯~園地」構想の動画の再生回数は300万回超え。計画実現の公約にしていた100万回は開始3日で達成しました。「突破できると予想はしていたが、1カ月くらいかかると思った」と長野市長。反響の大きさと手応えを、笑顔が隠せない様子で語っていました。クラウドファンディングは2千万円まで目標を上方修正。4月10日まで受け付けています。
日本一の源泉数を誇っている、大分県別府市。16年度から「遊べる温泉都市構想」と名付けた取り組みを進めています。別府を始め、大分全県が熊本地震の影響からの復興途上にあり、観光客数はピーク時の3割ほどまで落ちています。そんな観光客を再び取り戻したい。「湯~園地」計画は都市構想の一環として誕生しました。
では、そもそも、なぜ動画だったのでしょうか。
実は大分県では15年にも、PR動画が話題を集めたことがあります。温泉でシンクロナイズド・スイミングをするPR動画「シンフロ」です。Youtube上では140万回再生され、「大分県=温泉」というイメージ向上に貢献をしました。
別府は「湯~園地」構想にあたり、「シンフロ」の取り組みを意識しています。「遊べる温泉都市」を視覚に訴えることができる点で、動画作りが決まったとのこと。全体プロデュースには「シンフロ」でも音楽監督を務めた清川進也さんを起用。動画内の斬新なアトラクションは、テレビのワイドショーなど全国区の各種メディアで大きく取り上げられました。ネット上でも「素晴らしいアイデアだ」「開園が楽しみ」の声が広がっていきます。長野市長は「『再生回数100万回』という目標設定が、視聴者をうまく巻き込むことができたのではないか」と分析しています。
撮影地は市内の老舗遊園地「ラクテンチ」。7月下旬の3日間実現する「湯~園地」も、園内が会場になります。ラクテンチ広報の大野真由さんは「安全管理を今まで以上にしなければいけないので、不安も大きい。ただ、別府やラクテンチを一層広める千載一遇の機会です」と話しています。
地域に人が集まるかどうかには、自治体の生き残りがかかっています。観光や移住を促進するPR動画づくりに励む理由が、まさにそれです。
自治体PR動画の元祖とされている香川県は11年、「うどん県」動画を公開。同県出身の俳優・要潤さんが副知事役として「香川県はうどん県に改名します」と宣言するなど、斬新な内容が話題を呼びました。県観光振興課によると、11年に約870万人だった県外観光客は、16年には約920万人に増加。1日平均1千アクセスだった県の公式HPは、公開直後に17万超に伸びます。「うどん県効果のおかげ」(同課)だといいます。
大手広告会社の博報堂で自治体PRに携わるコンサルタントの山口綱士さん(41)によると、「うどん県」以降、自治体によるPR動画作りが増えたとのこと。マスメディアを活用するよりも費用を抑えることができる半面、ヒットした時のインパクトや効果が非常に大きいためだといいます。
だが「交付金があるから」や「他の自治体で話題になっているから」など目的意識が薄いまま動画作りに走り、失敗に終わっているケースが少なくないそうです。
また、動画には炎上のリスクもはらんでいます。
鹿児島県志布志市は昨年9月、ふるさと納税のための動画「UNAKO」を公開しました。地元の特産であるウナギを広めるためでしたが、ウナギを擬人化した少女を登場させたことに対して市内外から「性的なものを連想させる」などと批判が殺到。わずか5日で、動画の削除に追い込まれました。
山口さんは動画作りについて、一般論だと断った上で「守りに入って画一的な動画にしたら埋もれて見られないし、目立とうとしてエッジを立てすぎると炎上してしまう恐れもある。微妙なバランス取りは難しい」と述べます。
「質」が問われる自治体のPR動画。山口さんは、こうも語ります。「動画は、その地域を気づかせるきっかけでしかない。気づかせた人を本気で振り向かせるには土地の魅力を作る必要がある。各自治体が、いかにそういった企画ができるかが問われてくる」
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