話題
「握手会=総合芸術」から対人スキルを学ぼう! 就活に役立つヲタ活

ヲタ活は、就活に役立ちます――。
ああ、逃げないでください。冗談じゃないんです、本当なんです。今年もいよいよ就活が始まりましたが、「エントリーシートに何を書けばいいんだろう」「私の良さってなんだろう」と悩む学生さんは多いと思います。そんな悩める大学生に、アイドルオタクが力説します。「大丈夫! アイドルから社会スキルを学ぼう!!」(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

「好き」をもらう専門技術者
ご紹介します。阪本輝昭記者(40)。
朝日新聞大阪社会部で、若手の記者たちを束ねる遊軍キャップをしています。
そして、もうひとつの顔が「アイドルオタク」(通称ドルヲタ)です。
ドルヲタ歴は6年。仕事でも「NMB48」をデビューした2011年から取材し続けています。

阪本記者
「理論」っていうあたりが、ヲタっぽいですよね。
せっかくなので、阪本記者の理論を披露するべく、学生さんに来てもらいました。
津田塾大学の高橋さん、藤井さん、大橋さんです。
みなさん就活を前に「自分に『良さ』ってあるのかな」「企業になにをどうアピールすればいいんだろう」などなど、不安を抱えています。本当に、「ドルヲタ」経験が仕事で役に立つことがあるのでしょうか?「講義」の始まりです。

阪本記者
アイドルは、究極的には「私を好きになって下さい」とアピールする仕事です。彼女たちが人から好意を得るために創意工夫をこらし、互いに切磋琢磨している様子を見ていると、社会人として学べるものがあるなあと思ったんです。それが私の研究のはじまりです(キラーン)
学生
阪本記者
学生

阪本記者
まずは、やってみましょうか。握手会の形態によりますが、話せる時間はだいたい10秒前後です(握手券の複数枚使用が可能な場合はこの限りではない)。みなさんひとりずつ、今だけ『握手会に臨むアイドル』になりきって下さい。私がヲタ役をやります。
学生
阪本記者
今日もいい天気ですね。
学生
あっ、そうですね。
ま、また来てください!

学生
阪本記者
ただ、破壊力1の正解もあれば、破壊力100の正解もある。いかに他のアイドルより突き抜けた正解を出すか、ファンの心をつかむか、彼女たちは工夫しているんです。
学生
阪本記者
学生

骨で握手する
阪本記者
NMB48を先日卒業した渡辺美優紀さん、通称「みるきー」は、握手会で絶大な人気を誇っていました。彼女の握手会の様子をご紹介します。
~大人の事情でお見せできません。ごめんなさい~
学生
学生
阪本記者
その観察力は記者向きかもしれません。
彼女はAKB48のシングル曲「ギンガムチェック」の特典DVDのなかで、握手会のコツを自ら話しています。こんな内容です。
~大人の事情でお見せできません。ごめんなさい~

by 渡辺美優紀
学生
阪本記者
学生

阪本記者
握手会の最初に「来てくれてありがとう!」って盛り上がっても、ファンとしては去り際にアイドルに気を抜かれたり、適当な対応をされたりすると、「実は歓迎されてなかったのかも」って思ってしまう。
採用面接でも、去り際のあいさつが大事だと言われています。
学生
阪本記者
渡辺さんの「最後にぎゅっ」は、そんなことも我々に教えてくれるのです。
学生

即興で相手を「釣る」
阪本記者
渡辺さんには、「釣り師」という異名もありました。
アイドルはファンから握手会などで「僕を『釣って』ください」って言われることがあるようなんですね。「釣る」とは「虜にする。魅了する」というような意味です。「釣ってください」というのは「まだそこまでファンじゃないけど、僕の心をつかんでください」というようなニュアンス。
そして、うまく返すアイドルは「釣り師」と呼ばれることがあります。
学生
阪本記者
高橋さん
藤井さん
大橋さん
阪本記者
学生

出典:PIXTA
阪本記者
特典DVDではこんな返し方を披露しています。
by 渡辺美優紀
阪本記者
学生

阪本記者
そのひとつひとつの積み重ねで、「この担当者はいいセンスをしているな」と、ライバル社の担当者と差別化がはかれるんです。
私も以前、会社の採用面接に加わったことがあるのですが、長時間に及ぶ面接や集団討論でも、序盤や終了間際の一瞬のやりとりが担当者に鮮烈な印象を残すことがあります。
一瞬一瞬を制するものが勝負を制するわけです。
学生
阪本記者
「人とは違う握手とはなにか」を考える。
表情、目の動き、しゃべる内容、握り方。何か一つだけではダメ。
それが「握手会は総合芸術」と私が言う理由です。
渡辺さんが握手会で鉄壁の人気を誇っていたのは、こうした小さな積み重ねの結果だったとも考えられるわけです。
学生

阪本記者
~大人の事情でお見せできません。ごめんなさい~

学生
阪本記者
学生
阪本記者
ただ単に、急に踊りたくなっただけかも・・・。
ただ、私は渡辺さんの秀でたアピール力のようなものをそこに見ました。
一事が万事、ファンとの関係でも似たようなことが言えます。「あの人は○○ちゃんのファンだから」とはじめから諦めるのでなく、他のヲタの目をこっちにも向かせる、「1推し」じゃなくても「2推し」にしてもらうところから始める、というのもひとつのやり方です。
もちろん、やりすぎるとメンバー間でぎくしゃくしてしまいますから、バランスも大事になりますが。
学生

阪本記者
例えばですが、「あの取材先は読売新聞のファンだから、朝日の記者にはしゃべってくれないだろう」とはじめから諦めるんじゃなくて、思い切って飛び込んでみると糸口がつかめることがあります。
みなさんも、就活で「大企業だから無理に決まってる」「自分にはスキルがないから無理」と思うかもしれませんが、スキルがないからこそ、真っ白な頭で考えたアイデアが評価されることがあるかもしれない。自分の事前の思い込みで諦めるのは損なんじゃないかとも感じられます。
学生
阪本記者
頭が良い人だし、勉強熱心で、プロ意識も高かったんでしょうね。自分なりにどうすればファンの心に印象を残せるのかを考えて、創意工夫でどんどん人気を得ていきました。
卒業してしまいましたが・・・。
学生

――ドルヲタ授業はまだまだ続きます。次回は、「アイドルから学ぶ自分のキャラのいかし方」です。