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「ユーリ!!! on ICE」人気が異次元 コミケ騒然「君の名は。」超える?
フィギュアスケートのアニメ「ユーリ!!! on ICE」(テレビ朝日系)の人気が、すさまじいことになっています。ファンがアニメの舞台のモデルとされる佐賀県唐津市に「聖地巡礼」したり、現役スケーターが主人公のコスプレをツイッターに投稿したりと、盛り上がりは国内外まで広がっています。最終話を迎え、「ユーリロス」という言葉まで生まれています。
原案は、「モテキ」などで知られる漫画家の久保ミツロウさん。自身もフィギュアスケートを愛する「スケオタ」です。2014年12月の全日本選手権で、町田樹さんが引退を発表すると、翌日のエキシビションで「樹 大ッ好きだー!!」という横断幕を掲げて話題になりました。
アニメのキャラクターにも久保さんのフィギュア愛がたっぷり詰まっています。
主人公の勝生勇利(かつきゆうり)は、「世界一のガラスのハートを持つフィギュアスケーター」という設定。世界選手権5連覇したロシアのヴィクトル・ニキフォロフの指導のもと、グランプリファイナル優勝を目指す物語です。
久保さんは、『フィギュアスケート2016-2017シーズンオフィシャルガイドブック』(朝日新聞出版)で、次のように答えています。
「才能あるスケーターが、常に強いわけではなく、大変な時期があり、そこから復活していく。そういうのに私たちファンは励まされてきたのかなと思うんです」
ファンだからこその視点と、熱を入れた「色気」でも、ファンの心をつかみました。
少し早いですが今のうちに。ユーリオンアイスに関わって下さったたくさんの皆様、始まる前から応援して下さった皆様、最後まで楽しみにして下さった皆様、本当にありがとうございます。ほんとーーにありがとうございます。ヴィクトルみたいな気持ちで新しい世界を教えてもらいました。この後楽しんで!
— 久保ミツロウ (@kubo_3260) 2016年12月21日
演技シーンのクオリティの高さも話題になりました。
選手が使用する曲はオリジナル。その振付に、元アイスダンス選手の宮本賢二さんが協力しました。宮本さんは、高橋大輔さんや五輪金メダリスト、エフゲニー・プルシェンコ選手(ロシア)の振付を担当するなど、国内外で活躍している振付師です。
宮本さんが実際に制作スタッフの前で滑り、その動きを参考にアニメにしていきました。スケーティングは滑らかに、ステップやスピンも手足の先まで丁寧に描かれています。
こだわりの振付は、前述の『フィギュアスケート2016-2017シーズンオフィシャルガイドブック』の対談で、無良崇人選手が「選手の動きに違和感がまったくない」と絶賛するほどでした。
衣装も本格的です。フィギュアスケートの衣装を手がける会社「Chacott(チャコット)」(東京)が担当。登場人物のキャラクターやプログラムのテーマをもとに、選手それぞれの衣装を一からデザイン。アニメでは、衣装のグラデーションやストーンのきらめきまで細かく表現されていました。
声優陣も豪華でした。プロフィギュアスケーターで解説者としても活躍する織田信成さんが本人役として出演。本番さながらに選手たちの演技を詳しく解説しました。最終話には、トリノ五輪銀メダリストのステファン・ランビエールさんも本人役で登場しました。
アニメ情報誌「PASH!」12月号(主婦と生活社)では、「ユーリ!!! on ICE」が表紙を飾り、全12ページにわたり特集。すると、11月10日の発売から1週間弱で完売状態になり、約1万部を緊急重版しました。オリジナル缶バッジがもらえる応募者全員サービス(応募者負担1000円)も好評だったそうです。
「PASH!」の春名衛編集長は、「オリジナルアニメで、先がわからない楽しさがあり、放送回を追うごとに人気が高まっている」と話します。今後も特集を組めればと考えているそうです。
アニメの熱狂的なファンは、各地のイベントに足を運んでいます。東京・六本木のテレビ朝日本社1階のカフェでは、グランプリファイナルに合わせてコラボメニューを提供。東京・中野では「TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』展」が開かれました。いずれも整理券を求めて早朝から長蛇の列ができるほど大盛況でした。
年末、東京ビッグサイト(東京国際展示場)で開かれている「コミックマーケット91」も大変な熱気に包まれています。関連グッズを販売する企業ブースには、早朝から会場の外に数百人の行列ができています。
特に人気というブランケット(税込3500円)は30分で完売。キャラクターの缶バッジやクリアファイルも軒並み売り切れとなっています。ブースの担当者は、「アニメの最終回が放映されたばかりで、ファンの方の熱が残っているようです」。
フィギュアスケート世界女王のエフゲニア・メドベジェワ選手(ロシア)も「ユーリ!!! on ICE」の大ファン。自身のツイッターにアニメの感想を度々投稿しています。さらに、主人公勇利のコスプレも披露しました。
昨季現役を引退した小塚崇彦さんも、同じく勇利のコスプレを自身のインスタグラムで公開。そのクオリティの高さに、「素晴らしい再現率」「似合いすぎです(笑)」などのコメントが寄せられています。
Mother is shocked, dog is shocked. I'm happy and can't stop my laughter #YuriOnIce pic.twitter.com/jeeRJF8dgj
— Evgenia Medvedeva (@JannyMedvedeva) 2016年11月17日
中国やフィリピンのスケーターは、アニメのオープニング映像や勇利のショートプログラムを「完コピ」した動画を投稿。ジャンプやスピンも見事に再現されています。
勇利の出身は長谷津(はせつ)町という架空の町で、佐賀県唐津市がモデルとなっており、連日ファンが「聖地巡礼」に訪れています。韓国や中国のファンもいます。
同市ホームページでは、モデルとなった場所について、アニメの場面と実際の場所の写真を掲載してアピール。唐津城ではコスプレして記念撮影、鏡山温泉ではアニメにならってカツ丼を食べるなど、ファンはアニメと現実の行き来を楽しんでいます。また、市への移住者に向けのサイトには、ロシアを含む外国からのアクセスが増えているそうです。
「目に見えて集客が増えている」と同市観光課。ホテルやタクシーの利用客が増え、「ユーリ効果」を実感しています。「放送が進むごとに新しい聖地がでてきて、3、4回と訪れるファンもいる。唐津市の魅力も新発見されている」
さらに佐賀県は同市と連携し、東京でのイベント開催や、アニメとコラボした県産品販売へ向けて調整中です。
フィギュアスケートの世界選手権は3~4月、フィンランドで開催。大会に向けてどんどん盛り上がっていきます。現実に負けず劣らず、アニメの勢いもまだまだ続きそうです。
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