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スケオタ熱狂「ユーリ!!! on ICE」の魅力 久保ミツロウ×無良崇人

激論をかわした久保ミツロウさんと、無良崇人選手
激論をかわした久保ミツロウさんと、無良崇人選手

 フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが開幕する中、史上初の男子フィギュアスケートアニメ「ユーリ!!! on ICE」(テレビ朝日系)にも注目が集まっています。原案を描いた漫画家の久保ミツロウさんは「見どころは色気」と語り、一線で活躍する無良崇人選手も「選手の動きに違和感がまったくない」と絶賛するこのアニメ。久保さんと無良選手が、それぞれの立場から「ユーリ!!! on ICE」を語り尽くしました。

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無良「ジャージも特徴が出ています」

無良:フィギュアスケート愛がアニメにあふれていますよね。久保さんは普段からフィギュアスケートを見られているので、アニメの中の選手の手や足の動きについて、違和感がまったくなかったです。

久保:その点は山本沙代監督がしっかりやってくださっています。それに、プルシェンコの振り付けもつとめた宮本賢二先生に協力してもらいました。山本監督や私が想像できない部分を賢二先生が助けてくれるんです。例えば、レベル4のステップを描こうとしても、私の脳内では作れなくて。それを賢二先生が教えてくれて、実際に滑ってくれました。

「フィギュアスケート愛がアニメにあふれていますよね」と語る無良選手
「フィギュアスケート愛がアニメにあふれていますよね」と語る無良選手

無良:会場の風景や選手の衣装など細かいところまで再現されていますよね。選手のジャージもそれぞれの国の特徴が出ています。

久保:アニメを作るにあたって、試合会場にも取材に行きました。選手の衣装は、スケーターの衣装のデザインをされている方にお願いしました。ジャージも、五輪に出た選手と、ジュニアからシニアに上がったばかりの選手とで違うんですよ。いかに現実と似ているようで違うかっていうのを考えないといけなくて。届かない世界にできるだけ近づこうとするのが、創作の一番の原点だと思っています。

無良:実在する人物をかけ合わせたようなキャラクターもいますよね。

久保:フィギュアスケートに詳しい方はその配合が気になるかもしれません(笑)。このキャラクターって、あの選手をモデルにしているな、いやでも少し違うかな、と、いろいろ想像して楽しんでもらえたらうれしいです。

漫画家の久保ミツロウさん
漫画家の久保ミツロウさん

久保「一番すごいと思ったのが宮原知子選手」

久保:去年、一番すごいと思ったのが宮原知子選手です。テレビで試合を見ていると、宮原さんの紹介は、「前の1シーズン、ほぼノーミスでした」となっているんです。「今回の試合はノーミスでした」という紹介は他の選手でもよく聞きますけど、「1シーズン、ほぼノーミス」は驚きです。

無良:宮原選手と練習を一緒にする機会があるのですが、彼女は練習の中でもほぼミスないです! それでもプログラム全体を通したとき、失敗したところがあると、そこをずっと練習し続けています。

久保:練習の仕方って選手それぞれあるんですね。

無良:宮原選手のように練習したら、僕は体がもたないと思います(笑)。宮原選手は、ずっと同じペースで同じことをコンスタントにできるんです。その積み重ねがあって、試合でもミスしないで滑れるんだと思います。僕ら男子はプログラムに4回転を入れていて、4回転の調子がいいときもあるし、どうにも決まらないときがあって、波ができやすのかなと思います。

久保:そうなんですね。試合中の話を考えているとき、選手がどんな状態なのか知りたいです。バックヤードで他の選手のことをどう見ているのかなとか、どの段階で靴のチェックをやっているのかなとか。試合前に必ずやるルーティンはありますか。

無良:僕の場合、コーチである父が6分間の前と後に靴を一通りチェックしてくれます。自分でも靴紐の状態や締め具合を見てはいますが、普段から見てくれている父に任せています。

練習で滑りを確認する宮原知子選手=2016年11月26日、白井伸洋撮影
練習で滑りを確認する宮原知子選手=2016年11月26日、白井伸洋撮影 出典: 朝日新聞

無良「寿司を食べます」

久保:選手の食事も気になります。試合の日のご飯はどうされているのですか。

無良:僕は、試合会場に行く1時間半から2時間前までには、何か体に入れるようにしています。

久保:食べるものは決めているんですか。

無良:決めてないですね。できるだけエネルギーに変わりやすいものをとるようにしています。

久保:例えばどんなものを。

無良:生ものを敬遠される選手が多いですが、日本での試合なら、寿司を食べます。糖分が減ると極端に頭がぼーっとしちゃうんです。炭水化物系は多めにとるようにしています。

サインを書く久保ミツロウさん(左)と、無良崇人選手
サインを書く久保ミツロウさん(左)と、無良崇人選手

久保「美少女アニメに匹敵するように描こうと」

久保:見どころはどこですかって聞かれると、ひたすら「お色気」と答えています。もちろんフィギュアスケートシーンもめちゃくちゃがんばっているんですけど、さらに筆で足せるのは「色気」なので。選手の色気を美少女アニメくらいに匹敵するように描こうとしているのですが、実際に日本でもそのような選手がいて。それがとみに多いのは岡山だなって。

無良:あぁ(笑)。

久保:無良くんもそうだし、田中刑事、島田高志郎、そこに三宅星南もからんできて……。ほかの男子スケーターとは違う色気の貪欲さを感じるのですが、あの土壌は何なのでしょうか。

無良:僕にもわからないです(笑)。でも、共通していえるのは、大ちゃん(髙橋大輔さん)の存在が大きかったことですかね。

久保:ですよね!

2人のサインが書かれたうちわ
2人のサインが書かれたうちわ

無良:アニメで選手の心境が忠実に描かれているのをみると、自分のモチベーションが落ちたときに、それを見て励みになることがあると思います。

久保:選手がたとえ困難な状況になったとしても、アニメの中だけはこう乗り越えていってほしいなとか、アニメの中だけはケガしないでほしいなとか、願いを込めて描きました。それと、全選手が主役になる瞬間がある。登場する外国の選手も、彼らの滑っている時間だけは主役だと考えているので、主人公だけが飛び抜けて強いという設定にはせず、全員に優勝するチャンスがある、競い合っているシーンを描こうと思っています。

     ◇

久保ミツロウ(くぼ・みつろう) 漫画家。長崎県出身。代表作として『3・3・7ビョーシ!!』『トッキュー!!』『モテキ』『アゲイン!!』など。
『ユーリ!!! on ICE』では原案・ネーム(脚本原案)・キャラクター原案を担当。

無良崇人(むら・たかひと) 1991年千葉県生まれ。2007年の全日本ジュニア選手権を制し、08年全日本選手権で3位。12年のフランス杯でグランプリシリーズを初制覇した。昨季はGPシリーズNHK杯で3位、全日本選手権3位。洋菓子のヒロタ所属。コーチは父で元フィギュア選手の隆志さん。

放送時間などの詳しい情報は「ユーリ!!! on ICE」公式サイトで

久保ミツロウ×無良崇人の対談全文は『フィギュアスケート2016-2017シーズンオフィシャルガイドブック 』(朝日新聞出版)に掲載

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