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シン・ゴジラで注目「政府予備施設」に潜入 看板控えめ驚きの設備…
人気映画「シン・ゴジラ」のロケ地の一つで、これまで一度も一般公開されたことのなかった「立川災害対策本部予備施設」(東京都立川市)で15日、見学ツアーが開かれました。映画ではゴジラにより都心が壊滅させられたあと、政府側の最後の拠点として描かれた施設です。その知られざる内側を見せてもらいました。
JR立川駅から車で約15分。自衛隊駐屯地や警視庁、海上保安庁、東京消防庁などに囲まれた3階建ての建物は、一見すると特別な施設には見えません。普段は門で封鎖されている入り口脇に、控えめに「内閣府 災害対策本部予備施設」と看板が立っています。
敷地に入ると、すぐに案内役の立川市職員が「この風景、見覚えありませんか」と約20人の参加者に声をかけました。
何の変哲もない入り口ですが、早くもロケ地でした。破壊し尽くされた都心から矢口蘭堂・内閣官房副長官(俳優・長谷川博己)が到着し、予備施設に入っていくシーンが撮影されました。
「この施設は、一度も使われたことはないんです。幸いなことに」と、立ち会った内閣府の柳紀昌・政策統括官(防災担当)付 参事官(事業推進担当)付 参事官補佐(防災拠点施設担当)が説明してくれました。いただいた名刺の長い肩書にも、シン・ゴジラっぽさを感じてしまいます。
立川災害対策本部予備施設が建てられたのは、本館が1988年、隣の新館が1998年のことです。それ以来、使われたことがないとは、どういうことなのでしょうか。
日本で「著しく異常かつ激甚な災害」が発生した場合、総理大臣を本部長とし、全大臣を本部員とする緊急災害対策本部が首相官邸に設けられ、災害対応の指揮をとります。映画でも、序盤にゴジラが蒲田に上陸した際、設置されています。
ただ、超大規模災害では首相官邸が被災し、使えない状況もありえます。そのために、霞が関の内閣府と市ケ谷の防衛省にも設置できるようになっています。
しかし都心部が壊滅状態に陥り、内閣府も防衛省も使えなかったら。そのための備えとして、都心から約30キロ離れた立川災害対策本部予備施設が建てられました。
「もう、ほかに予備施設はありません。立川が最後の砦です」と柳さん。都心からの首相や大臣の移動手段は、ヘリコプターなどを想定。秘書、事務方も含め約300人もの人間が使う可能性がありますが、それでも7日間耐えられる自家発電設備や食料を備えているといいます。
参加者が次に通されたのは、本館2階の災害対策本部会議室です。奥に巨大ディスプレイが光り、大臣や事務方が座るため約50席のいすが並んでいます。
部屋の最も手前、スクリーンに対面する位置に、ほかより背もたれが20センチほど高い椅子がありました。
「首相が座る椅子です」と柳さん。その右隣には、ほかよりは立派ですが、首相の椅子より数センチ背もたれの低い椅子があります。こちらは官房長官が座る席。最後の砦でも、立場への配慮は行き届いています。
次に見せてもらった新館2階のオペレーションルームは、建物内で「もっともシン・ゴジラらしい」部屋でした。
簡素な事務机には即座に使えるよう、NEC製のノートパソコンがずらりと並んでいます。その数、約100台。さらに倉庫に100台の備えがあります。
パソコンの天板には「内閣府(防災)」と大きく書かれています。映画で巨大不明生物統合対策本部のメンバーらが奔走した部屋そのもの。
映画の中にいるようで、泉修一・保守第一党政調副会長(俳優・松尾諭)が名セリフ「まずは君が落ち着け」を口にしたシーンが、目に浮かんできます。
しかし、実は建物内ではロケは行われていません。シン・ゴジラのパンフレットには、制作陣がパソコンやパイプ椅子が並ぶ光景を見学したところ、庵野秀明・総監督から「そのまま再現して欲しい」と言われたと書いてあります。映画内での再現度の高さには、内閣府職員も驚いたといいます。
机の上には「救助・救急」「物資」などと書かれた、立て看板が置かれています。FAXや大型テレビも、ほこりよけのカバーがしてあるものの、即座に使えるよう回線や電源につながっています。
そのほか建物内には、広い記者会見室や、分厚い法令集が並ぶ本棚も。普段使われていないのが信じられないほど、必要なものがそろい、整備されています。
最後に特別に許可をもらい、屋上を目指しました。矢口蘭堂と、赤坂秀樹・内閣総理大臣補佐官(俳優・竹野内豊)が東京への核攻撃をめぐり、意見をぶつけ合うシーンが撮影された場所です。
「上るなら自己責任で」。そう言われて向かうと、屋上に続くのは高さ4メートルはある、はしごでした。シン・ゴジラの制作陣は、よくこんなところをロケ地として見つけたなと感心してしまいます。
恐る恐る屋上に上ると、西側の自衛隊駐屯地が見渡せる、映画のシーンそのままの光景が広がりました。現実の日本は、今日のところは平和に夕日が沈んでいきます。
内閣府の柳さんは「シン・ゴジラでは予備施設の使われ方や、政府関係者の動きが正確に描かれていた。あまり知られることのない国の大規模災害への備えを、知ってもらえてよかった」と話しています。
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