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2016年10月12日

「赤い丸ノ内線」南米から里帰り 職人魂伝える車体、残っていたお宝

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巨大な落書きで覆われた500形=東京メトロ・中野車両基地

巨大な落書きで覆われた500形=東京メトロ・中野車両基地

 東京の地下鉄丸ノ内線を引退後、アルゼンチンの地下鉄で活躍していた「営団500形電車」が20年ぶりに日本に戻ってきました。風雨にさらされ、長旅に耐えた、その驚きの姿を公開してもらいました。東京メトロでは大がかりな修復プロジェクトが動き出しています。

40年にわたり丸ノ内線の顔

 500形は、丸ノ内線開業から3年後の1957年にデビュー。当時最先端の技術を投入し、真っ赤な車体に銀色の波線があしらわれたデザインは、約40年にわたり丸ノ内線の顔として親しまれました。

 1996年の引退後は、アルゼンチンのブエノスアイレス市の地下鉄に131両が譲渡され、約20年にわたり活躍を続けました。その役目も終えた4両を東京メトロが譲り受け、日本に到着したのは今年7月のことです。

 東京メトロはインドネシアにも東西線などの車両を譲渡していますが、海を渡った車両が日本に戻ってくるのは初めてです。

アルゼンチンから里帰りした500形

アルゼンチンから里帰りした500形

日本でさよなら運転をする500形=1995年2月28日

日本でさよなら運転をする500形=1995年2月28日

出典: 朝日新聞社

緑や銀色・・・驚きの光景

 夕方、東京メトロの中野車両基地(東京都中野区)に入ると、敷地の一画に500形電車が3両並んでいました。

 トレードマークの真っ赤な車体もそのまま・・・かと思いきや、びっくり。うち2両の側面は、緑や銀色のスプレーで描かれた巨大な落書きで覆われていたのです。ガラスがピンク色のスプレーで汚れた車両もあります。

車両の側面に描かれた落書き

車両の側面に描かれた落書き

港で落書き被害

 東京メトロの広報担当者は「痛々しい状態でしたので、日本に着いてからも、落書きは布やテープで覆った状態で運びました」と振り返ります。

 補修を担当している主任の高山由明さん(51)は「アルゼンチンから運び出す手続きに時間がかかり、約3カ月間、港に置かれていたそうです。その際に落書きをされたと聞いています」と言います。

 さらに、老朽化により塗装があちこちはげ落ち、さびています。車体の下の方には、100円玉ほどの穴も、たくさん空いています。アルゼンチンではホームとの隙間を埋めるためのステップが、車体に取り付けられていました。多数の穴は、ステップをすべて取り外した痕跡です。

はがれ、さびついた塗装

はがれ、さびついた塗装

車体の下に方には、多数の穴が空いている

車体の下に方には、多数の穴が空いている

内部にはお宝が

 落書きや穴、さび・・・地球の裏側から帰って来た500形の外観は、長年の活躍の痕跡を刻んでいます。働き抜いた後の抜け殻のようにも見えてしまいます。

 しかし、高山さんは「内部を見てください。懐かしいものが、そのままたくさん残っているんですよ」と言います。

 車両内は、痛んだ外観とは違い、整備されて使われてきた印象です。税関で密輸防止のチェックを受けたためか、車両のシートがところどころ外され、そのままになっています。

車内の光景

車内の光景

アルゼンチンの車内表示や広告が残る

アルゼンチンの車内表示や広告が残る

 壁にはアルゼンチンの案内図や広告が張られたまま。路線図には現地で地下鉄を運行していた「Metrovias」の社名が入っています。

 車両先頭の天井付近についていた行き先表示装置は取り外され、空いたスペースに無線機が取り付けられていました。

 そんなアルゼンチン仕様の車内に、意外なものが置いてありました。20年以上前の丸ノ内線の路線図です。車両と一緒に運ばれてきた予備の部品に、ついたままになっていたそうです。

 500形が引退した、1996年に開業した西新宿駅が載っておらず、新宿の次の駅は中野坂上になっています。今では、路線図はディスプレイ表示に。東京メトロは「このような古い路線図は現場に残っておらず、地下鉄博物館にあるかないかの大変貴重な資料」だといいます。

予備の部品についていた古い路線図。西新宿が無く、新宿の次が中野坂上になっている

予備の部品についていた古い路線図。西新宿が無く、新宿の次が中野坂上になっている

 窓の脇の壁には丸い予備灯がついています。かつての丸ノ内線では、一部地点で室内灯が消えたり暗くなったりする車両があり、予備灯が点灯していました。

 天井の送風機には、2004年に民営化され東京メトロになる前の、営団地下鉄の「Sマーク」が残っています。

(左)車内の予備灯(右)送風機に残るSマーク

(左)車内の予備灯(右)送風機に残るSマーク

安全安心、機械で実現

 運転室をのぞいてみます。

 ドアガラスには「乗務員室」の文字。一方で計器のスイッチには、アルゼンチンで書かれた説明書きが張ってあります。日本語と混在する、不思議な空間です。

古びた運転室

古びた運転室

計器にアルゼンチンで書かれた説明書き

計器にアルゼンチンで書かれた説明書き

 運転室にはランプが縦一列に並んだ計器があります。モーターの制御状況に応じて点灯する仕組みで、現在の車両ならディスプレーに表示されるものです。

 高山さんは「今ならコンピューターで処理できることも、昔は機械で実現していました」と懐かしそうに言います。

 高山さんは車両の外に出ると、車体の下にはい回る金属棒をつかみました。「乗客が増えても同じスピードで走れるように、この棒で床の沈み込みを検知していたんです。今ではそれも、電子部品で検知しています」

モーターの状況に応じて光るランプ

モーターの状況に応じて光るランプ

乗客の量を、床の沈み込みで検知し、スピード調整していた

乗客の量を、床の沈み込みで検知し、スピード調整していた

後世への教材に

 古い500形を里帰りさせた理由を、高山さんは「車両の補修技術を失わないため」と説明します。

 現在の車両は電子制御が進み、故障したら電子部品をメーカーへ修理に出すしかない場合が多くあります。「中身に手を出せない、ブラックボックス化が進んでいる」といいます。

 しかし、さまざまな機能を機械的に実現している500形なら、地下鉄車両の基本的な仕組みを学ぶことができます。

 「自動車で例えると、500形はマニュアル車、今の車両はオートマチック車。マニュアル車をいじるほうが、車の仕組みが深く理解できますよね。500形は教材として、うってつけなんです」

時の経過をうかがわせる乗務員室

時の経過をうかがわせる乗務員室

 東京メトロは約40人のプロジェクトチームを作り、来年1月ごろから本格的な補修作業に入ります。目標は、走行できるレベルにまで補修すること。

 しかし、補修箇所が多数あるうえ、9月からの調査で、重要な部品が数多く無くなっていることも判明しました。残された図面をもとに、部品メーカーに改めて作ってもらう必要があります。

 高山さんは「時間がかかっても、補修を終えたい。イベントなどに出展し、懐かしい姿を多くの人に見てもらいたい」と話しています。

巨大落書き、お宝・・・里帰り「500形」、衝撃の姿
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つり革。右が日本で元々つけていたもの。左がアルゼンチンで新たにつけられたもの。形が異なり、アルゼンチンの方には輪っかに溝がある
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