連載
#2 夜廻り猫
誰かを見殺しせんと、生きられんのか…「泣ける猫マンガ」が描く仕事
「誰かを見殺しにせな 生きていかれんのか うちは…」。心で泣いている人や動物たちの話を、猫の遠藤平蔵が聞いてまわる、ツイッターで人気のマンガ「夜廻(まわ)り猫」。仕事帰りに、うつむきながら歩く歯科衛生士の女性を呼び止めました。「おまいさん、心で泣いておるな?」
とある街の歯科医院。
そこで歯科衛生士として働く女性が、「銭湯代がなくなるから、歯が痛くても診察に来られなかった」と話す患者さんに出会います。
患者さんを見送ったあと、医師が、やっていないはずの検査をカルテに書き込んでいるのに気づいて……。
女性は不正に憤りながらも、「自分だって、仕事がなくなったら生きていけない」と悩みます。
彼女の心の泣き声に気づいた、夜廻り猫は……。
作者の深谷かほるさんは、日々報道されるブラック企業の問題や、診療報酬の不正請求などのニュースをもとに、漫画を創作しました。
また、普段から、自分をはじめとした多くの人が、ほかの人の困窮や苦悩を見て見ぬふりをしていて、「心に『自分なりの折り合い』を築くことすらやっていないなぁと、元々気になっていたことも取り込みました」と話しています。
【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。
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深谷かほる(ふかや・かほる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。昨年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始め、6月30日に単行本を発売。自身も愛猫家で、黒猫のマリとともに暮らす。
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