IT・科学
「あなたはスマホよりも面白い人?」 子育て専門家の厳しい問いかけ
「あなたはスマホよりも面白い人間ですか?」。世界中で問題化する「スマホ中毒」に対し、MIT出身で児童心理や子育ての専門家・蒋佩蓉(Rossana LIN)さんは、親の心構えの大切さを説きます。「スマホをご褒美にしない。最高のご褒美は、パパママと一緒にいること」。世界中で起きている「ポケモンGO」ブームなど、デジタルの進化にどうつきあえばいいか。蒋さんに聞きました。
蒋さんは、11才で台湾からカナダへ移住し、アメリカのマサチューセッツ工科大学で機械工学を学んだ後、結婚。3人の子どもを育てた経験から、教育や児童心理などに関心を持ち、児童エチケットや子育て関係の著書を多数出版しています。現在はアメリカ・シアトル在住で、子育てについての講演などを各地でしています。
「ポケモンGO」はアメリカでも大流行しており、蒋さんの自宅近所にある大きな公園の風景が「一変した」そうです。
閑静な場所だった公園に多くの人々が集まり、中には、モンスターの名前を呼びながら池に飛び込む人も。その楽しそうな雰囲気に「世界がまた変わった」と思ったそうです。
蒋さんはスマホ依存を考えるにあたって、次のような問いかけをします。
「親が寝る前に、最後に見るのは、配偶者?携帯?」
「一日に携帯を見ない場合、気持ちはどうなる?」
「自分は携帯の持ち主のつもりだが、結局携帯の奴隷になっていないか?」
蒋さんによると、親の多くは就寝前に携帯を見ており、一日携帯を見ないと不安になる人がほとんどだそうです。それらの症状は「FOMO=Fearing of Missing Out(取り残される不安・恐怖)」と呼ばれています。蒋さんは「子どもや家族と一緒にいながらも、結局、別々に過ごしているのと変わらない」と指摘します。
そして、親がスマホ依存症であれば、子どももスマホ依存症になるリスクが高まるそうです。
蒋さんは、スマホ依存症と薬物中毒の類似性について、ネズミを使った実験を例に説明してくれました。
1匹のネズミをカゴに閉じ込め、不安な状況に置きます。カゴの中に麻薬の入った水と、何も入れていない水を置くと、ネズミはどんどん薬物を飲むようになり、依存症になります。
一方、ネズミを1匹ではなく仲間と一緒に十分な食べ物と遊具のある環境に入れた場合、同じ麻薬の入った水があっても、ネズミは何も入れていない水を飲みます。
蒋さんは「中毒になるか、ならないかは、薬物自体より、周りの環境と関係しています。子どもに電子製品を禁止・制限などのことをするより、家を楽園にしたほうがずっと有効です」と解説します。
スマホ依存をなくすには何が必要か。蒋さんは「親が面白くて、魅力的な人になるための努力が必要です。少なくともスマホよりも面白い人間にならないと」と強調します。
例えば楽器や料理、運動、散歩、読書、UNOなど、親が子どもと一緒に興味を持ち、一緒に活動できるものが必要になってくるそうです。
「スマホを一切禁止にする必要はありません。でも、公約は作ったほうがいい」と蒋さん。
「ノースマホの時間を作る。例えば食事の時間だったり、夜9時から10時の間は家族の時間にしたり。みんなで一緒に何か話しをするとか、あるいは各自に好きな本を読んだりするとか」
また、親が仕事でインターネットを使わなければならない時は、子どもが寝た後にした方がいいそうです。
蒋さんは「親が人生を楽しんでいれば、子どももスマホ依存症になりにくいでしょう。もし子どもがすでに1日16時間以上もスマホをいじっていたら、お医者さんに行くべきです」と話しています。
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