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投票率85%「明るい選挙の村」の秘密 立ちはだかる18歳選挙権
前回の参院選で85.32%の投票率を記録した村がある。世界遺産の白川郷で知られる岐阜県白川村。試しに会う人会う人に聞いて回った。選挙に行きますか?「行きます」「必ず行きます」「絶対行きます」行かなかったこと?「ないです」。6人続けて同じ答えだった。お年寄りが多いから? そうでもないらしい。秘密を探ってみた。(朝日新聞名古屋報道センター記者・斎藤健一郎)
投票率の高さでも知られる人口1700の山村。前回参院選は85.32%で、全国の52.61%を大きく上回る。村長選で95%を記録したこともある。
記録目当ての投票だろうか? 疑問をぶつけてみると、答えた人はみな「ここ投票率高いの?」と、気にもかけていない様子だった。
お年寄りの多い山村だから? 若い人を見つけ出して聞いてみた。保育士の高森真亜耶(まあや)さん(21)は「周りの友だちでも行かない人、聞いたことないです」。隣でうなずいた同僚の高畠宏彰さん(27)も「応援したい人がいなくても自分なりに考え、一票を投じます」。
元建設業の男性(68)の理由は少々粘っこい。「『あの候補に入れて』と頼まれるから、投票日に寝ているわけにはいきません」
では、頼まれた人に投票するのかと問うと、「筆の先は自分の意思よ。依頼されたそばから投票してたら、2票3票じゃ足りはしない」と笑った。
投票がここまで浸透しているのはなぜか。秘密を探ると、役場の奮闘ぶりが見えてきた。
選挙期間中は毎日2回、投票日が大書きになったボードを屋根に載せた選挙広報カーを村全域に走らせる。地域の寄り合いでも、区長らを通じて選挙をPRする。
投票日はすさまじい。防災無線でサイレンを何度も鳴り響かせて村民の注目を引き、「今日は投票日です」とアナウンスする。
前回超えの投票率が目標だが、「今回は心配している」と選挙担当の山下修自さん(47)。「18歳選挙権」が原因だ。村の選挙人名簿に記載された18、19歳の40人のうち約半数が村を離れて暮らしている。
「人の少ない村。1人欠ければ投票率にも大きく響くわけで……」
黙ってはいない。保護者を通じ、転居後3カ月以内ならば新住所で不在者投票ができると若者に伝えている。
投票率だけのためではない。「せっかくの初めての選挙。しっかり投票させてあげたいですよね」と山下さんは話す。
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