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お金と仕事

ゆとり世代へ…銀座のママの“体張った”教え 「叱られればいいの」

銀座のママ、白坂亜紀さんが「ゆとり世代」へおくる教え。「叱られればいいんです。そして、きちんと謝るの」=東京都中央区、小玉重隆撮影
銀座のママ、白坂亜紀さんが「ゆとり世代」へおくる教え。「叱られればいいんです。そして、きちんと謝るの」=東京都中央区、小玉重隆撮影

目次

 夜の社交場、銀座。開店後、多くは半年で姿を消すという激戦区で、20年にわたりクラブ「稲葉」など4店を経営するママ、白坂亜紀さん(49)に聞きました。粋な大人になるため、20、30代のうちにやっておくべきことは何ですか。(朝日新聞東京社会部記者・山本亮介)

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「たくさん恋愛してください」

――いい大人になるには、どうすればいいんでしょうか。

 まずは恐れずにたくさん、たくさん恋愛してください。恋愛は命の源だと思っています。

 恋愛をしてこなかった人は、仕事もうまくいかないんじゃないかしら。人の心をつかむ意味では恋愛も、ビジネスも同じです。

 人と本気で向き合う経験を重ねていけば、自然とコミュニケーション能力はついてきます。

 店のお客さまでも、できる人はやっぱり気配り上手。

 下準備も緻密(ちみつ)で、接待の前に必ず「今度、こんな人を連れて行くからね」と連絡をくださる。私たちもプロですけど、心づもりができて助かるし、接待もうまくいくのです。

いい大人になるには?「まずは恐れずにたくさん、たくさん恋愛してください」(白坂亜紀さん)=東京都中央区、小玉重隆撮影
いい大人になるには?「まずは恐れずにたくさん、たくさん恋愛してください」(白坂亜紀さん)=東京都中央区、小玉重隆撮影

「叱られればいいんです。そして、謝るの」

――ゆとり世代の草食系はどう映りますか。

 今の子に足りないのは、相手の心を想像し、思いやる力だと思います。どうしてそうなっちゃったのかって? コミュニケーションを取らなくても生きていけるからじゃないかしら。「グーグル先生」に聞けば情報は得られるから。

 でもね、体験談を聞くなら生身の人間にかないません。だからこそ、会社のトップでも大学の先輩でも、目上の人にどんどん本気でぶつかって相談して、懐に入るべきです。

 怒られるのが怖い? 叱られればいいんです。そして、きちんと謝るの。こちらが一生懸命なら、惜しみなく知恵を下さいます。そういう経験は若いうちにしかできません。

「怒られるのが怖い? 叱られればいいんです。そして、きちんと謝るの」(白坂亜紀さん)=東京都中央区、小玉重隆撮影
「怒られるのが怖い? 叱られればいいんです。そして、きちんと謝るの」(白坂亜紀さん)=東京都中央区、小玉重隆撮影

「いい男はいつだって自然体」

――白坂さんは早稲田大学第一文学部の在学中にクラブでアルバイトを始め、その後、ママに。

 お会いするのは政財界のトップの方々ばかりです。どんなに背伸びをしても、とうてい追いつけません。そんなときは懐に飛び込み、「教えてください」とお願いするんです。

 今まで出会った方々には、宝物のような言葉をたくさんいただきました。

 「周りは先輩。ありがとうってニコニコしていればいいんだよ」

 先輩を指導しなければいけない立場になって悩んでいたとき、ユニチカの元社長がさりげなく送ってくれたアドバイスです。

 ヤマト運輸の小倉昌男元会長は、「今のホステスはただきれいなだけで勉強していない。大学出のママが増えて、知的なホステスが多い銀座に戻して欲しいな」と応援してくれました。

 いい男はいつだって自然体。誰に対しても態度を変えず、礼儀正しい人ばかり。

「いい男はいつだって自然体。誰に対しても態度を変えず、礼儀正しい人ばかり」(白坂亜紀さん)=東京都中央区、小玉重隆撮影
「いい男はいつだって自然体。誰に対しても態度を変えず、礼儀正しい人ばかり」(白坂亜紀さん)=東京都中央区、小玉重隆撮影

毎朝、お礼のメールや手紙に3、4時間

――最初からお客様と親しくお話しできたのですか。

 いえ、経験です。人の心を感じる感性をつかむには場数が必要。叱られても、失敗して泣いても、お店に出続けるんです。そうすると、その人が一番心地よいものは何か、読めるようになりました。

 今も朝起きてから、昨晩のお客様にお礼のメールや手紙を3、4時間かけて書きます。その後も複数の新聞に目を通し、テレビを見て、新しい情報を入れるようにしています。常に自分を磨いていなければ、一流の男性には近づけません。

「叱られても、失敗して泣いても、お店に出続けるんです」(白坂亜紀さん)=東京都中央区、小玉重隆撮影
「叱られても、失敗して泣いても、お店に出続けるんです」(白坂亜紀さん)=東京都中央区、小玉重隆撮影

「腐ってはだめ」

――最後に若者にエールを

 腐ってはだめ。

 思ってもみなかった人事でも、与えられた仕事が入社前の予想に反しても、やるべきことを見つけて邁進(まいしん)してほしい。

 ある化学品メーカーの男性は社長レースに敗れ、地方の子会社に出向した時、「僕は移った先の会社に骨を埋めるまで頑張るよ」とお話していました。しばらくして本社が危機になってトップが退陣、新社長は彼でした。そんな復活劇、お店でよく目の当たりにするんです。

     ◇

白坂亜紀(しらさか・あき)49歳。早大第一文学部在学中、日本橋のクラブでアルバイトを始め、2年後にはママに。1996年に銀座5丁目にクラブ「稲葉」を開業し、現在は4店を経営する。大分県竹田市生まれで、滝廉太郎が少年時代を過ごした旧宅で育つ。

■記者の一言
 入社16年目。一張羅のスーツに、前夜、よく磨いた革靴で臨んだ銀座のクラブ取材。いい大人になる条件を聞き出すはずが、気づけば、相づちをうつのはママばかり。どうやらこれが、一流のコミュニケーション術らしい。

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