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「時には汚い言葉が必要なんだ」 保育園ブログ、著名ブロガーの驚き
時には汚い言葉も必要だと痛感させられた――。「保育園落ちた 日本死ね!!!」のブログを、そんな風に絶賛しているブロガーのかさこさん。どこがそんなに、すごいんですか?(聞き手 朝日新聞地域報道部記者・田中聡子)
――ブログを絶賛してましたね。
すごい文章力です。まずタイトルにインパクトがあります。ネットでは、いくら本文がすばらしくても、タイトルにインパクトがないとクリックしてもらえない。このブログもタイトルが違ったらあそこまで拡散しなかったでしょうね。
中身も「クソ」とか「死ね」とか汚い言葉を使ってますが、誹謗(ひぼう)中傷や特定の個人への攻撃は一切ない。政治家の不倫騒動や収賄疑惑、東京五輪にかかる巨額の費用など、いろいろなニュースを皮肉を交えて盛り込んでいる。
全体的にも、個人の「落ちて悔しい」という文句だけではなく、「私だけの問題じゃないよね」という読後感があります。ブロガーとしては、お手本にすべき文章です。
――「ほんとに女性が書いたのか」など、汚い言葉に対しては批判もありました。
上品な言葉では、スルーされちゃいますよね。あれが「保育園に落ちてしまいました」「私はどうなるんでしょう」だったら、世の中は動かなかったはずです。時には汚い言葉が必要なんだと痛感しました。
僕は「死ね」とか「殺せ」とかは使わないけど、「ばか」「あほ」「クソ」は多用してます。占師やクリエーターが集まる僕のブログ塾でも、できるだけ本音を書くよう教えています。
誰かに気を遣うような言葉ではなく、だめなら「だめ」、いやなら「いや」とはっきり書いた方が共感が集まる。
――いまは汚い言葉や強い言葉でないと共感してもらえないのでしょうか。
ネット上での情報量はあまりに多い。炎上ブロガーと呼ばれるような人たちは、「本当はそこまで思ってないだろう」ということも、踏み込んで強い表現を使っています。そうしないと、読んでもらえないのがネットです。
――ちなみに、最も炎上したブログは?
以前、乙武さんが飲食店に行った際に「レストランが車いす対応しなかった」という批判のツイートをしたんです。それに対して、ブログで「行く前に電話ぐらいしろ」「裸の王様だ」みたいなことを書いたら大炎上でした。
共感と批判が半々でしたが、ネットの世界はネガティブな声が強い。100人の人が共感していたとしても、一人でも批判コメントを書き込むと、共感した人が書き込みにくくなってしまうんです。でも、そこで折れて主張を曲げちゃうと、物言わぬ共感してくれる人に応えられないことになるので、絶対に曲げちゃいけないんです。
――批判覚悟で、強い言葉を使えと。
そこがすごく難しい。「ばか」って言葉を使うだけでだめだと言う人もいるし、結局は個人の欲望だったり、誹謗中傷が混じっていたりすると、一気にたたかれます。汚い言葉はうまくコントロールする必要があるんです。
――新聞記事のような穏健な表現は、もう読まれないのでしょうか。
新聞には表現の制約がありますからね。既存メディアでは言えないことを、ネットが補っているという面があるでしょう。僕も紙媒体には書けないことを、ブログで発信しています。
――もはやネットの方が影響力があるとも言われます。
ただ、ネットの記事がきちんと読まれているのかどうかは疑問です。ネットはテレビのザッピングのようなもので、ちょっとでもつまらなかったら、すぐに次のチャンネルに変えてしまいます。
僕がブログを始めた2000年は、まだパソコンで読む人が多かった。それがスマホになって、「移動しながら」のような「ながら姿勢」の世界に変わった。読む人の根気はどんどんなくなっていると感じます。
書き手もセンセーショナルな見出しをつけて、読ませることに必死です。今回のブログもそうですが、炎上させたコメントを見ていると、中身をよく読まずにタイトルだけ見て批判しているものがたくさんあった。新聞の読まれ方とは、全然違いますよ。
「保育園ブログに負けたのは?」は4月16日発行の朝日新聞夕刊紙面(東京本社版)「ココハツ」と連動して配信しました。
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