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連載

#2 母から娘へ「嫌がらせ弁当」

大ヒット本「嫌がらせ弁当」のその後…亡き夫へ捧ぐ自慢と感謝の弁当

書籍「今日も嫌がらせ弁当」が大ヒットとしたシングルマザーのKaoriさん。娘が高校を卒業したことで終わったかに思えた弁当作りですが、実は今も続いています

娘が高校を卒業しても続けているお弁当づくり
娘が高校を卒業しても続けているお弁当づくり 出典: 三才ブックス提供

目次

 高校に入って反抗期を迎えた娘に対し、3年間キャラ弁を作り続けた実話をもとに書かれた書籍「今日も嫌がらせ弁当」。今年1月に発売され、これまでに14万部を超える大ヒットとなりました。次女が高校を卒業したことで終わったかに思えた弁当作りですが、実は今も続いています。東京都の八丈島でシングルマザーとして2人の娘を育ててきた著者のKaoriさん(45)。これまでつくったお弁当と、それにまつわるエピソードを振り返りつつ、先月には、亡くなった元夫のことを思いながら家族3人でお弁当をつくりました。

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家族3人でキッチンに立つKaoriさん(右)
家族3人でキッチンに立つKaoriさん(右) 出典: 三才ブックス提供

卒業後も続く弁当作り


 八丈島のお菓子工場で働くKaoriさんが書いた「今日も嫌がらせ弁当」は、キャラ弁の画像とともに、弁当に込めた思いや娘の反応などをつづったブログを書籍化したものです。

 次女が高校に通っている間、木工用ボンドや缶コーヒー、ホラー映画の主人公などをかたどったキャラ弁を持たせ続け、最後は、お弁当で表現した「卒業証書」を渡しました。

 本の巻末には、娘から母への「今まで私のためにやってくれたこと、すべてに感謝しています」というメッセージが掲載され、お弁当作りは終わったかに思えました。

 卒業した次女は現在、地元の八丈島で会社事務職として働きながら、Kaoriさんと一緒に暮らしています。そんなわけで、社会人になった今も、娘にお弁当を持たせているそうです。

これが「卒業証書」お弁当
これが「卒業証書」お弁当 出典: 三才ブックス提供

生活に変化は?


 本が大ヒットし、テレビや雑誌の取材も相次ぎましたが、二人の生活に変化はあったのか? Kaoriさんに話を聞きました。

 ――生活は変わりましたか?

 「本当に変わってません。ご近所さんから『あの本書いたの、あなただったの!』と驚かれたり、本がきっかけでブログを読んでくださる人が増えたり。あと、これまでよりも本土へ行く回数が増えたことぐらいでしょうか」

 ――お弁当に対する向き合い方は変わりましたか

 「お弁当の持つ力や影響力を再認識しました。思いを込めればちゃんと伝わるんだって。本を出したことで、作るのが嫌になったとか、スランプに陥ったということもありません」

今もお弁当を通じてメッセージを伝えている
今もお弁当を通じてメッセージを伝えている 出典: 三才ブックス提供

2冊目の本を準備


 ――2冊目の本を準備しているそうですね

 「そうなんです。前回はブログをほとんどそのまま書籍化したんですが、『レシピを教えて欲しい』という声がけっこう寄せられて、出版社の方からも『出しませんか』と言っていただいたので……。ただ、私は料理研究家でもプロの料理人でもありません。紹介するのはわが家の定番料理と、それにまつわるエピソードです」

 ――どんなエピソードですか

 「毎月、月末になると、子どもたちが大好きなオムライスを作っていました。実はこれ、わが家の苦しい家計事情が理由なんです。他にも、夜作ったカレーは食べないくせに、翌日に同じルーを使ってカレーパンを作ると喜んで食べた話とか、島にないので食べたことがない『吉野家』の牛丼を想像しながら作った話とか。ちなみに牛丼はパパ(元夫)の好物でした」

 ――亡くなられたそうですね

 「7年前に事故で亡くなりました。次女が小学校に入る前に離婚したんですが、もともと高校の同級生ということもあって、その後も友人のような関係でした。娘たちも私とケンカすると、よく遊びに行っていたようです」

パパのために家族3人でお弁当をつくった
パパのために家族3人でお弁当をつくった 出典: 三才ブックス提供

家族3人でパパのために弁当作り


 ――先月、家族3人でパパのために弁当作りをしたと聞きました

 「2冊目を書くにあたって考えていたことは、『大切な人にお弁当をつくる喜びを知ってほしい』という思いでした。ふだん、3人でキッチンに立つことはありませんが、私にとって一番大切なのは娘たちです。そんな娘たちにとって、今一番大切な人はやっぱりパパだと思ったんです。作りながら思い出をたどり、記憶を分かち合うことができたらいいなと」

 ――どんな料理を作ったんですか

 「エビチリに春雨サラダ、明日葉のナムル、きんぴら、胡麻むすびです。どれもパパの大好物。作りながら、パパとの新しい思い出をつくっているような不思議な感覚になりました。出版社の方が写真撮影されていたんですが、まったく自分たちの世界に入ってお弁当を作りました」

 ――Kaoriさんにとってお弁当とは? 一言であらわすと

 「『結び目』ですね。家族をまとめて、記憶をつなぎとめてくれる。裕福じゃなくても、一緒に過ごす時間が少なくても、思いを込めれば必ず心と心をつないでくれる。どんな時も私と娘たちをつなぎとめて、パパと私たちを今でもつないでくれていますから」

 ◇ ◇ ◇

 Kaoriさんの2冊目の本のタイトルは、前回の嫌がらせ弁当と対照的な「今日は“よろこばせ”弁当」。近日中に三才ブックスから発売予定だそうです。

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