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2015年11月04日

銀座に残るキャバレー「白いばら」 新旧店長が語る生き残りの秘密

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「白いばら」の外観。ブルーの壁に黄色いライトが映える。

「白いばら」の外観。ブルーの壁に黄色いライトが映える。

出典: ダイヤモンド社提供

 銀座で64年間、営業を続けるキャバレー「白いばら」。高級クラブの集まる日本一の繁華街のど真ん中で、常連客、新しいお客さん問わず愛されてきました。バブル崩壊やリーマンショック後の不況も乗り越えた「白いばら」。苦しい状況の中で「白いばら」が生き残ってこられた理由とは何か? 2011年まで50年、勤め上げた元店長の山崎征一郎さん(73)と、山崎さんから店長を引き継いだ嶋田さんに聞きました。

「白いばら」の店内。赤を基調としたきらびやかな空間。お店ではプロのダンサーのショーも行われており、これがきっかけとなって女性客が増えたそう

「白いばら」の店内。赤を基調としたきらびやかな空間。お店ではプロのダンサーのショーも行われており、これがきっかけとなって女性客が増えたそう

出典: ダイヤモンド社提供

 銀座三丁目の裏通りにたたずむ、真っ青な建物。正面には「あなたの郷里の娘を呼んでやってください」と書かれた巨大な日本地図に、「明朗経営」とうたう昭和の香り漂う看板が掲げられています。一歩中に入れば、赤を基調としたゴージャスな内装……。

 「白いばら」は、1931年に創業した食堂がルーツです。キャバレー「白いばら」になってからは64年が経ちます。キャバレーとは、ホステスさんと一緒にお酒を飲みながら会話を楽しむだけでなく、ダンスフロアがあって生バンドの演奏も行うという業態のお店です。

 キャバレー最盛期だった1960から70年代にかけて、銀座には「メイフラワー」や「ウルワシ」、そして「キャバレー太郎」の異名をとった福富太郎氏が経営する「銀座ハリウッド」など、十数軒を超えるキャバレーが営業していました。しかし、その後の不況や、キャバクラ、ガールズバーなど新しいスタイルのお店の出現もあり、今も残っているのは「白いばら」のみになりました。

苦しい状況の中、どうアイディアを出すか

 山崎さんが白いばらで働き始めたのは1960年、18歳のときです。ホステスさんが着るドレスの担当などを経て1980年、39歳で店長に就任。アイディアマンだった先代の大住政弘社長と共に、不況でもお客さんに来てもらえるよう、様々な創意工夫をこらしてきました

 店の外壁で目をひく「日本地図」もそのひとつ。1972年に先代社長が考案して山崎さんが制作したもので、出身地別にホステスを指名できるという仕組みです。今も、道行く人が「日本地図」の写真を撮っていくそうです。

 白いばらのもう一つの売りが、様々なイベント。山崎さんの印象に残っているイベントは「雪合戦」です。「お客様が、会津磐梯山からトラックで週2回も雪を運んでくれて。ホステスが手料理を差し入れする『料理教室』というイベントもやりました。これは特に独身の男性に人気がありましたね」

 山崎さんは「こうした工夫は、あくまで『状況が命令したもの』なんです」と言います。「不況でお客様が減ったり、周りのキャバレーがなくなっていくという苦しい状況の中で、いかに自分のセンスを生かせるかが大事です。まずはホステスさんにのってもらえるようなアイデアを出す。そうすれば、お客様もついてくると思います」

山崎さんが大切に保管している、「白いばら」の資料。アイディアマンだった先代の大住政弘社長が、海外からのお客様への対応のために考えた「白いばら必須英会話」の免許証や、お店の前にかまくらを作ったときの写真、山崎さんの引退時の挨拶状など。

山崎さんが大切に保管している、「白いばら」の資料。アイディアマンだった先代の大住政弘社長が、海外からのお客様への対応のために考えた「白いばら必須英会話」の免許証や、お店の前にかまくらを作ったときの写真、山崎さんの引退時の挨拶状など。

「競争意識が薄い」ホステスたち

 白いばらには、20代から50代まで、約230名のホステスさんが在籍しています。古めかしい外観から、入る前は年配のホステスさんばかりかと想像していましたが、実際にお店を訪ねてみると、意外にも若いホステスさんが多いことに驚かされます。

 「若いお客様に来ていただくには、若いホステスさんがいることが大事です。知り合いの紹介で来る人や、メディアで取り上げられたのを見て問い合わせをしてくるホステスさんもいます」と嶋田さんが教えてくれました。

 とは言え、ベテランのホステスさんの存在も重要だそう。「お客様への態度や、周囲のホステスさんへの態度。そういうところで『やはりあの人はすごい』と一目置かれるのは、ベテランのホステスさんです」と嶋田さん。

 白いばらには、ホステスさんへのノルマや罰金、同伴制度がありません。ホステスさんの順位づけがないので、「いい意味」で競争意識が薄いのも特徴です。お互いに協力しながら働くという雰囲気があるそうです。

 働いているホステスさんには、昼間は別の仕事をしている、兼業の方が多いそうです。プロのダンサーを目指しているという人や、昼間は会社員として働いているという人も少なくありません。

ネオンが光る銀座の繁華街=東京都中央区

ネオンが光る銀座の繁華街=東京都中央区

出典: 朝日新聞

変わる銀座の街、世代交代しても変わらないもの

 嶋田さんが白いばらに入社したのは1997年。2011年の山崎さんの引退に伴い、37歳で店長に抜擢されました。前職はテレビ関係の仕事をしていたそうです。「お客様が白いばらに来られる目的は、多種多様です。何がその方にとっての『楽しさ』なのか、その場に応じて考えなければならない難しさがあります」

 嶋田さんが意識しているのがお店の歴史です。「ユニクロなどファストファッションのお店ができたり、海外のブランドショップが多数出店したりと、銀座の風景も変わってきています。お店の方向性は、山崎さんほか先輩方が考えられてきたものを受け継ぎつつ、その中で時代にあったサービスをやっていきたいと思っています」

1960年7月。通行する車のヘッドライトが光る夜の銀座晴海通り

1960年7月。通行する車のヘッドライトが光る夜の銀座晴海通り

出典: 朝日新聞

「なんだか懐かしくてあったかい」

 白いばらが大事にしているものは何か。長く店長を務めた山崎さんが挙げたのが、お店の看板にもある「明朗経営」です。「現金払い、伝票をちゃんと机の上に置くようにする、注文はお客様のいる席でするという点は、変えてはいけないところです」

 8月に「日本一サービスにうるさい街で、古すぎるキャバレーがなぜ愛され続けるのか」(ダイヤモンド社)を出版した山崎さん。本で伝えたかったのも、そんな白いばらの精神でした。版元によると、「ビジネス書としてだけではなく、人間関係についても参考になる」などの声が寄せられてるそうです。

 山崎さんからバトンを引き継いだ嶋田さんが守っているのも、「安心して飲める」「なんだか懐かしくてあったかい」「我が家のようにくつろげる」という、白いばらの基本です。

 山崎さんから嶋田さんへと世代交代した白いばら。嶋田さんが山崎さんに憧れてこの仕事を続けてきたように、何年後かには嶋田さんに憧れる人が出てきて、「なんだか懐かしくてあったかい」白いばらは、続いていくのでしょう。


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