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紛糾の安保国会、23年前のPKO重なる 徹夜・怒号・プラカード
安全保障関連法案に対する与野党の攻防が大詰めです。「徹夜国会」も想定されるなか思い出されるのは、安保関連法案の議論で共通点の多いPKO協力法案成立をめぐる「マラソン審議」です。

安全保障関連法案の審議が参議院で大詰めです。今週中に法案を成立させる方針の自民・公明両党は、参院特別委員会での早期の採決を目指しています。一方、民主などの野党は内閣不信任決議案などを提出し、抵抗する構え。「徹夜国会」も想定されるなか思い出されるのは、安保関連法案の議論で共通点の多い1992年の国連平和維持活動(PKO)協力法案での「マラソン審議」です。
ヤマ場の特別委採決、92年は徹夜可決
自衛隊の海外派遣を可能にしたPKO協力法案の審議は、92年6月4日にヤマ場を迎えました。参院特別委の採決を目指す自民・公明・民社(当時)3党に対し、反対の姿勢を崩さない社会(当時)・共産両党。4日午後から始まった審議は再三中断し、採決は日付をまたぎました。事態が動いたのは5日午前3時22分。自民議員が質疑を打ち切る動議を読み上げると、「審議を約束したではないか」「話が違うぞ」などと抗議する社会・共産両党の委員や同僚議員。「質問権を奪うのか」などと委員会室に怒号が飛び交うなか、約20分後に委員長が「動議賛成の諸君の起立を求めます」。自公民3党の委員が起立し、特別委での法案が可決されました。

5日午前0時29分 宮沢喜一首相、参院第1委員会室に戻る。
0・51 下条委員長、委員会の再開を宣言。下条氏は角田義一氏(社会)の質問について「7日間の(国会承認期間の)問題、維持隊(PKF)の問題は、質疑の終了を見て検討する」と表明。社会党委員が「約束が違う」と抗議、下条氏は「今の件は引き続き理事会でも協議し、質問は留保する」と言い直す。
3・10 喜屋武真栄氏(参院クラブ)が質問の冒頭、下条委員長に「強行採決はしないと約束してほしい」とクギを刺す。委員長は「審議は粛々とやっていきます」と答弁。傍聴席から「答弁になってないよ」とヤジ。
3・22 合馬敬委員(自民)が質疑打ち切り(終局)動議を読み上げる。社会、共産両党の委員や同僚議員が委員長席に駆け寄り、「審議を約束したではないか」「話が違うぞ」などと抗議。
3・25 深田肇議員(社会)が「話が違う」と、委員長席の机をたたく。翫正敏委員(社会)が「暴挙」の横断幕で委員長を覆い隠す。角田義一委員(社会)が「質問権を奪うのか」と叫ぶ。
3・30 衛視約20人が委員長席に近付き、社会党議員に押し戻される。傍聴席から「帰れ」コール。
3・41 下条委員長が「合馬君の動議賛成の諸君の起立を求めます」と言う。「皆立ってるじゃないか」の声。自民、公明、民社3党の委員が起立し、法案賛成の意思表示。社会党などの議員、傍聴席から「質問させろ」コール。
3・45 藤井孝男理事(自民)が公明、民社両党に引き揚げを呼びかける。閣僚と自公民各党の委員、委員会室を出る。
PKOでは野党が牛歩徹底 1議案に13時間かけた採決も
その後、6日午前0時半に参院本会議が開かれました。まずは社会、共産両党が提出した参院議院運営委員長の解任決議案への審議。この議案の採決は、反対側が仕掛けた投票箱まで極端にゆっくり歩く「牛歩戦術」によって、20分程度で終わるはずが11時間半以上かかることに。さらに参院特別委員長の問責決議案の採決は13時間かかるなど、2党の抵抗で本会議での徹夜審議は3日連続で行われました。しかし、社会党が8日夜に牛歩戦術をとりやめることを決断。4回目の深夜採決となった9日午前1時57分にPKO協力法案は可決されました。

安保法案、与野党の攻防ピークに
最終的にPKO協力法は92年6月15日に衆院本会議で可決、成立。国会審議に要した時間は衆参合わせて193時間でした。今回の安全保障関連法案は、参院で採決が行われなくても、衆院の3分の2以上の賛成で再議決できる「60日ルール」を使うことができますが、「参院で決着をつけるべきだ」として、自公両党の幹事長らが衆院で再議決しない方針を確認しています。民主党などの野党は、シルバーウィークをはさんだ9月27日の会期末をにらみ、時間切れによる法案の廃案に追い込みたい考えで与野党の攻防がいっそう激しくなっています。

【法律名】1992年 国連平和維持活動(PKO)協力法
【審議時間(時間:分)】衆院 87:41
参院 105:35
合計 193:16