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ウナギ、関東風・関西風の境目は? 「パリフワ」と「トロフワ」
ウナギの調理法は「関西風」と「関東風」で大きく違う。この境目は、どこか。「国境」を探しに静岡県浜松市へ飛んだ。
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ウナギの調理法は「関西風」と「関東風」で大きく違う。この境目は、どこか。「国境」を探しに静岡県浜松市へ飛んだ。
ウナギを腹から裂いて、頭を付けたまま香ばしく焼きあげるのが関西風の蒲焼き。かたや関東風は、背開きで頭を落とし、焼くだけでなく蒸すという一手間が加わる。この「蒸す、蒸さない」が食感を大きく変える。境目は、どこか。「国境」を探しに静岡県浜松市へ飛んだ。
関西風は表面がこんがり、中はジューシーな「パリフワ」。一方、関東風は蒸すことで皮さえも箸でスッと切れる柔らかさに。舌の上でとろけるような「トロフワ」の仕上がりだ。
勝手に妄想したのが、浜松市。日本初の本格的なウナギ養殖が始まった、浜名湖を望む地だ。
市内30店が加盟する「浜松うなぎ料理専門店振興会」のホームページによると、24店が関東風で、関西風は6店ある。東西が入り交じっているのだ。
市内のウナギ屋に聞き込むと「確かにこのあたりかも」。浜名湖や天竜川など、同市周辺が境だとする声が次々に集まった。さらに、「ウナギの東西の境目は、地元のバスガイドさんが説明しているよ」との情報が。遠州鉄道(同市)のバスガイド、影山直子さん(44)に疑問をぶつけた。
影山さんは全国をガイドして回るので、各地に知人がいる。彼らを通じて、自分なりに餅の形など東西の境を調べているそうだ。その結果、ウナギは「愛知と静岡の県境周辺」との結論に至り、折に触れて紹介しているという。
浜松の「うな正」店主もこの説を裏付ける証言をした。県境に接する愛知県豊橋市の刃物屋が、「浜松ではウナギの金串が売れない」とぼやくので見せてもらった。するとウナギを蒸さずに焼く「パリフワ」向けの長い串だったという。「浜松は蒸し器に入る短い串を使う。豊橋とは違うんだと思った」
「パリフワ」と「トロフワ」の境は浜松にあり!
そう得心して、市内の関東風のお店でウナギを食べてみると……あれ? 東京よりもなんだか香ばしくて歯ごたえがある。
改めて関東風のお店に聞き直すと、「東京ほど蒸さず、食感を残します」。「ヤワフワ」とでも言うべき店が続出した。
前述の「浜松うなぎ料理専門店振興会」の会長で、関東風の「八百徳」を営む高橋徳一さん(65)は、好みの変化を指摘する。
元々は主な客層である中高年好みの「トロフワ」を出していた。だが、20年ほど前から蒸す時間を短くした。ファストフード店などで安い加工ウナギが供され、若い世代も食べるようになったからだそうだ。
くだんのバスガイド、影山さんももちろん、蒸す時間の短さは知っていた。「浜松は東西どちらからもお客さまが訪れる地。境をぼかして、万人受けするようしたのでしょう」。続けて言われた「どう作っても、結果的においしければ、それでいいんじゃないですか」という言葉に、ハイ、その通りですね、とうなずくしかなかった。
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