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「おかあさん」呼びかけ失礼?「子どもいないのに」「親しみや尊敬」

テレビ番組などで、年配の人に「おかあさん」と呼ぶ場面。違和感を持つ人が少なくないようです。相手のタイプによって生まれるようです。

「おかあさん」どころか「ババア」と呼んでも笑顔にしてしまう毒蝮三太夫さんのトーク=2004年11月
「おかあさん」どころか「ババア」と呼んでも笑顔にしてしまう毒蝮三太夫さんのトーク=2004年11月

目次

 テレビ番組などで、年配の人に「おかあさん」「おとうさん」と呼ぶ場面。親しみを込めたつもりでも、違和感を持つ人が少なくないようです。「あなたの親じゃない」「子どもいないのに」という声がある一方、「親しみや尊敬を込めて呼んでいる」という意見も。この違い、相手のタイプによって生まれるようです。

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テレビでの「おかあさん!」に違和感

 2015年4月「『おかあさん』と呼ばないで」というタイトルで、朝日新聞の投稿欄に投書が載りました。

 テレビ番組のタレントが一般の人に「おかあさん」「おとうさん」と呼びかける場面に「要は若く見えなくなった人に対する呼びかけ方」と指摘。「私が、そう呼びかけられたら確実に嫌だ」と問題提起しました。

 投書では「名前を聞いてから、その名前で質問などをしていくべきだ」と提案しました。

子育て中の家庭で話題になったNHK教育「おかあさんといっしょ」の、お兄さん・お姉さんの交代。9代目の杉田あきひろさん、18代目つのだりょうこさんが、今井ゆうぞうさん、はいだしょうこさんにバトンタッチ=2003年2月
子育て中の家庭で話題になったNHK教育「おかあさんといっしょ」の、お兄さん・お姉さんの交代。9代目の杉田あきひろさん、18代目つのだりょうこさんが、今井ゆうぞうさん、はいだしょうこさんにバトンタッチ=2003年2月 出典: 朝日新聞
 要は若く見えなくなった人に対する呼びかけ方であって、54歳の私が、そう呼びかけられたら確実に嫌だ。私の母はかつて街で他人から「おかあさん」と呼びかけられたとき、「あなたのおかあさんじゃない」と、きっぱりと言ったと話していた。
 「おかあさん」「おとうさん」とは子どもからの呼び方であり、高齢者を若いスタッフが「おかあさん」「おとうさん」と呼ぶのは不快だ。名前を聞いてから、その名前で質問などをしていくべきだ。
2015年4月29日:(声 どう思いますか)4月2日付掲載の投稿『「おかあさん」と呼ばないで』:朝日新聞紙面から

「名前、簡単に話すのは抵抗感」

 投稿に対しては「確かに自分の親ではありませんが、親しみや尊敬を込めます。それが失礼にあたるなら、何とお呼びすればよいのでしょうか」という意見も。

 散歩や買い物ですれ違う程度の人に対し「自分や子の名前を、簡単に話すのには抵抗があります」と反論。「妙案をお持ちの方がいたら、ぜひ教えていただきたいと思います」と呼びかけました。

 私は「ありがとうございます。おかあさんが子育てしていたころも大変でしたか?」などと尋ねます。確かに自分の親ではありませんが、親しみや尊敬を込めます。それが失礼にあたるなら、何とお呼びすればよいのでしょうか。
 相手の名前を聞くのなら、こちらも名乗るのが礼儀です。自分や子の名前を、見知らぬ人に簡単に話すのには抵抗があります。妙案をお持ちの方がいたら、ぜひ教えていただきたいと思います。
2015年4月29日:(声 どう思いますか)4月2日付掲載の投稿『「おかあさん」と呼ばないで』:朝日新聞紙面から

子どもいないのに…居心地悪い

 子どもがいなかったり、独身だったりする人が当たり前にいる時代の変化を指摘する声もありました。50代で子どもがいない男性は「買い物をしていて店員さんに『おとうさん』と声をかけられると居心地が悪くなって、店を出たくなってしまう」と訴えました。

 一方、理髪店で若い店員から「おとうさん」と呼ばれて「オレは君の親父(おやじ)じゃない」と怒鳴ったという人も。

NHK朝の連続テレビドラマ「ちゅらさん」で「おかあさん」役をつとめた田中好子さん=写真は1993年3月撮影
NHK朝の連続テレビドラマ「ちゅらさん」で「おかあさん」役をつとめた田中好子さん=写真は1993年3月撮影 出典: 朝日新聞
 子どももいないのに「おとうさん」と呼ばれると、私はすごく違和感を覚える。買い物をしていて店員さんに「おとうさん」と声をかけられると居心地が悪くなって、店を出たくなってしまう。
 40代以上で独身の人や子どものいない人が当たり前にいる時代に、誰彼なしに「おとうさん」「おかあさん」あるいは「旦那さん」「ご主人」「奥さん」などと呼ぶのはいかがなものか。
2015年4月29日:(声 どう思いますか)4月2日付掲載の投稿『「おかあさん」と呼ばないで』:朝日新聞紙面から
 理髪店で20代くらいの男性店員から「おとうさん」と呼ばれた。気が短いので「オレは君の親父(おやじ)じゃない」と怒鳴った。店員はキョトンとした表情で突っ立ったまま。なぜ怒られるのか分からないようだった。
 親しみを込めたつもりかもしれない。「お客さん」という呼びかけ方を知らないわけではないだろう。だが、テレビで「おとうさん」と呼びかける非礼が日常化しているせいで、店員は疑いもせずに口にする。
2015年4月29日:(声 どう思いますか)4月2日付掲載の投稿『「おかあさん」と呼ばないで』:朝日新聞紙面から

親しみと敬意、2つのタイプ

 専門家はどう見ているのでしょうか。「日本語は『空気』が決める」の著者で国立国語研究所准教授・石黒圭さんは「相手のタイプを知って」とアドバイスします。

 石黒さんは、人間には「相手との距離を縮めて親しくなりたい」「相手を遠ざけて敬意を保ちたい」という二つの矛盾する欲求があると言います。「受け止めに違いが生まれるのは、どちらを重視するかが、人によって違うからです」

 「大切なのは自分と相手のタイプを知ることです」と石黒さん。「自分らしさを損なわない範囲で、親しさ重視の相手には『おかあさん』のような親しい呼びかけで距離を縮め、敬意重視の相手には『○○さん』のような客観的な呼び方で距離をとると、良い人間関係が築けます」と話しています。

 「日本語は『空気』が決める」の著者で国立国語研究所准教授・石黒圭さん 人間には「相手との距離を縮めて親しくなりたい」「相手を遠ざけて敬意を保ちたい」という二つの矛盾する欲求があります。受け止めに違いが生まれるのは、どちらを重視するかが、人によって違うからです。
 親しさを重視する人は、ざっくばらんな言葉遣いを好みます。「おかあさん」など家族の呼び名を他人に使うのは、距離の近い関係を築きたいからです。しかし、敬意を重視する人にはなれなれしく響き、不快感を覚えます。
 大切なのは自分と相手のタイプを知ることです。自分らしさを損なわない範囲で、親しさ重視の相手には「おかあさん」のような親しい呼びかけで距離を縮め、敬意重視の相手には「○○さん」のような客観的な呼び方で距離をとると、良い人間関係が築けます。
2015年4月29日:(声 どう思いますか)4月2日付掲載の投稿『「おかあさん」と呼ばないで』:朝日新聞紙面から

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