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ゼミの先生は大物OB 早大・東大・一橋…卒業生「資源」獲得へ動く
大学のゼミで、大企業のトップが後輩を鍛える。校友会を強化する。各地の大学で卒業生とのネットワークを強化し「資源」として活用する取り組みが進んでいます。
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大学のゼミで、大企業のトップが後輩を鍛える。校友会を強化する。各地の大学で卒業生とのネットワークを強化し「資源」として活用する取り組みが進んでいます。
大学のゼミで、大企業のトップが後輩を鍛える。校友会を強化する。各地の大学で卒業生とのネットワークを強化し「資源」として活用する取り組みが進んでいます。
サントリーホールディングス副会長の鳥井信吾さんは、昨秋始まった甲南大経済学部の「プロジェクト・ゼミ」で授業を行っています。鳥井さんが後輩たちに出した課題は、「我が校の生き残り戦略」でした。
「プロジェクト・ゼミ」はビジネスの最前線で活躍する卒業生を講師に招き、実践力を養おうというもの。2年生32人が受講しました。
今年度の講師は他に、洋菓子メーカー「モロゾフ」(神戸市)の山口信二社長がいます。来年度以降はスポーツメーカー「ミズノ」(大阪市)の水野正人元会長や小林製薬(同)の小林豊副会長も予定。いずれも甲南大の卒業生です。
高龍秀(コウヨンス)経済学部長は「大学はいま、主体的に学べる人材をどれだけ育てられるかが求められている。学生のモチベーションを高めるためにこのゼミを始めた」と話します。
2032年に創立150周年を迎える早稲田大。2012年に定めた基本方針「Waseda Vision 150」の柱の一つに、「卒業生との連携強化」を据えました。卒業生を会員とする同窓会である「校友会」は約60万人います。国内外で活躍する卒業生も多く、学生を支えてもらいたいといいます。
同志社大も校友会との関係強化を進めます。昨年、卒業見込みの学生に対し、終身会費(3万円)を大学側が徴収する制度を導入しました。これまでは校友会が呼びかけていましたが、これからは代理徴収する仕組みになります。奨学金など学生支援に使うのが主な目的です。
国立大も卒業生との関係強化に動き出しました。東京大は昨年、全学的な同窓会の名称を「赤門学友会」から「東京大学校友会」に変えました。04年の大学法人化と同時に発足させた会ですが、よりわかりやすい名称に。すべての卒業生に会員意識を高めてもらいたい思いがあります。
背景には厳しさを増す財政事情があります。高度な教育や研究活動を維持したい一方で、独立行政法人化で国からの交付金は減額傾向です。
大阪大は昨年度、「卒業生室」を新設しました。それまであった学部単位の同窓会から全学的なネットワーク作りを進めています。卒業生名簿の集約を進めるほか、卒業生側のメリットも考え、企業経営者に絞った交流会や各種セミナーなども開催しています。
一橋大では、単なる「親睦」にとどまらず、母校への「協力」を卒業生組織「如水会」が押し出し、結びつきが強いとされています。村田光二副学長は「卒業生と大学が一体となるのが強み」と話しています。
教育情報会社「大学通信」の安田賢治常務は「学生が黙っていても集まった時代、大学は卒業生という豊かな『資源』にあまり目を向けてこなかったが、いまはキャンパス整備、少人数教育、留学支援など、大学の魅力アップのための資金や知恵がいる」と指摘。「歴史がある学校は、卒業生の結束がブランド力の向上にも役割を果たしてきた。卒業生の力は小さくない」と分析しています。