IT・科学
電子工作、濃すぎるその系譜 自作ラジオからマイコン、ニコ技、楽器
あえて自分の手で部品を組み立てる電子工作の愛好家。起源は自作ラジオとされ、ニコ技、マイコン、自作楽器など、今も独自のコミュニティーが生まれています。

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あえて自分の手で部品を組み立てる電子工作の愛好家。起源は自作ラジオとされ、ニコ技、マイコン、自作楽器など、今も独自のコミュニティーが生まれています。
スマホが身近になった時代に、あえて自分の手で部品を組み立てる電子工作の愛好家がいます。起源は自作ラジオにまでさかのぼるとも言われる電子工作の世界。動画サイトに作品を投稿したり、自慢の作品を発表し合うイベントを開いたり、今も独自のコミュニティーが生まれています。
電子工作の源流は、自作ラジオだと言われています。2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎さんも、専門店で部品を買い集め自分で組み立てるラジオ少年の一人でした。南部さんは、自分のラジオから野球中継が聞こえたことに感激し「基礎の方程式さえ知っていれば何でもできる」と、物理学を志したそうです。
電子工作にはまった人の中には、大人になって自作オーディオの世界に進む人も少なくありません。衆院議員だった与謝野馨さんは、自分の選挙演説用アンプも手作りしたほどのマニアとして知られています。
半田ごてなどで部品を組み立てていた電子工作の世界にもIT化は訪れます。マイコンと呼ばれる超小型のコンピューターです。2005年に登場したイタリア発の「Arduino(アルディーノ)」は、3000円程度と価格が安く簡単に扱えるのが特徴です。メディアアートと呼ばれる、音や光とセンサーなどを組み合わせた芸術表現の分野で普及しました。
2012年に登場した「Raspberry (ラズベリーパイ)」は、「アルディーノ」よりも性能がよく、無償の基本ソフト(OS)「Linux(リナックス)」が動作します。4000円から5000円という価格と、名刺サイズという小ささ、さらに普通のパソコンと同じ感覚でプログラミングができるため、プログラマーのファンが多いのが特徴です。
ITの進化によって、電子工作の世界も多様化していきます。2009年まで開かれていた「ドークボット東京」のコンセプトは、「電気で何かおもしろいことをやる」というもの。ミュージシャンと一緒に作った抱きしめると音が出るぬいぐるみなど、発表自体を楽しめるのが特徴です。
コンピューター専門書のオライリーによる「Make Tokyo Meeting」は、会場が大学で学園祭のような雰囲気が人気を集めました。現在は「Maker Faire Tokyo」として、出店料や入場料もとる本格的なイベントになっています。
ネットでは、ニコニコ動画に作品を投稿する「ニコニコ技術部(ニコ技)」が有名です。初音ミクの作品が多く投稿されています。電子工作というより、「○○を作ってみた」といった話題になりやすいアイデアを披露するネタ系が多いのが特徴です。「1/1戦車を作ってみた」などの名作が生まれています。
自作ラジオから続く電子工作の流れを組むグループとして、自作楽器があります。コードなど音楽理論とプログラミングの技術を、ピアノの鍵盤やギターの弦ではない独創的な部品に組み込んだユニークな楽器が誕生しています。
2月11日には、作者が自慢の作品を発表するイベント「オトアソビ」(13時30分開始、東京大学本郷キャンパス情報学環福武ホール)が開かれます。操り人形の口の開け具合で音を変化させる楽器「ケロミン」や、円柱のダイヤルを回しながら音を出す「ウダー」など、個性的な作品が登場する予定です。