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IT・科学

電子工作、濃すぎるその系譜 自作ラジオからマイコン、ニコ技、楽器

あえて自分の手で部品を組み立てる電子工作の愛好家。起源は自作ラジオとされ、ニコ技、マイコン、自作楽器など、今も独自のコミュニティーが生まれています。

自作楽器のイベント「オトアソビ」で演奏を披露する発表者=2014年8月、ADK勉強会提供
自作楽器のイベント「オトアソビ」で演奏を披露する発表者=2014年8月、ADK勉強会提供

目次

 スマホが身近になった時代に、あえて自分の手で部品を組み立てる電子工作の愛好家がいます。起源は自作ラジオにまでさかのぼるとも言われる電子工作の世界。動画サイトに作品を投稿したり、自慢の作品を発表し合うイベントを開いたり、今も独自のコミュニティーが生まれています。

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ニコニコ技術部の作品、きのこの山、たけのこの里判別仕分けロボット
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源流は自作ラジオ

 電子工作の源流は、自作ラジオだと言われています。2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎さんも、専門店で部品を買い集め自分で組み立てるラジオ少年の一人でした。南部さんは、自分のラジオから野球中継が聞こえたことに感激し「基礎の方程式さえ知っていれば何でもできる」と、物理学を志したそうです。

講演する南部陽一郎さん
講演する南部陽一郎さん
少年時代、自作ラジオで野球中継が聞こえたことに感激。「基礎の方程式さえ知っていれば何でもできる」と、物理学を志した。大阪市立大教授のとき、31歳で渡米。「天と地の差だった」研究環境にひかれて永住した。
2005年12月21日:(ひと)南部陽一郎さん 米国のフランクリン・メダルを受賞した物理学者:朝日新聞紙面から

オーディオにはまる人も

 電子工作にはまった人の中には、大人になって自作オーディオの世界に進む人も少なくありません。衆院議員だった与謝野馨さんは、自分の選挙演説用アンプも手作りしたほどのマニアとして知られています。

与謝野馨さんは四半世紀以上にわたって秋葉原に通い、趣味でアンプやパソコンを手作りしてきた。電気街をこよなく愛する「アキバ通」=2012年5月
与謝野馨さんは四半世紀以上にわたって秋葉原に通い、趣味でアンプやパソコンを手作りしてきた。電気街をこよなく愛する「アキバ通」=2012年5月
与謝野さんが秋葉原に行くようになったのは1983年、40代半ばのころだ。「ラジオセンターでオーディオアンプの組み立てキットを買ったのがきっかけ。500工程くらいあって完成まで1カ月ほどかかる。チューナーやプレアンプも組み立てた。ハンダ付けの名人になった」
2012年6月14日:(@秋葉原)来ればリッチな気分 選挙アンプも自作、与謝野馨さんと歩く:朝日新聞紙面から

アルディーノ、メディアアートで活躍

 半田ごてなどで部品を組み立てていた電子工作の世界にもIT化は訪れます。マイコンと呼ばれる超小型のコンピューターです。2005年に登場したイタリア発の「Arduino(アルディーノ)」は、3000円程度と価格が安く簡単に扱えるのが特徴です。メディアアートと呼ばれる、音や光とセンサーなどを組み合わせた芸術表現の分野で普及しました。

超小型のコンピューター「アルディーノ」
超小型のコンピューター「アルディーノ」

ラズベリーパイでプログラマーも参入

 2012年に登場した「Raspberry (ラズベリーパイ)」は、「アルディーノ」よりも性能がよく、無償の基本ソフト(OS)「Linux(リナックス)」が動作します。4000円から5000円という価格と、名刺サイズという小ささ、さらに普通のパソコンと同じ感覚でプログラミングができるため、プログラマーのファンが多いのが特徴です。

「リナックス」が動作する「ラズベリーパイ」
「リナックス」が動作する「ラズベリーパイ」

イベント化進み、文化祭的ノリに

 ITの進化によって、電子工作の世界も多様化していきます。2009年まで開かれていた「ドークボット東京」のコンセプトは、「電気で何かおもしろいことをやる」というもの。ミュージシャンと一緒に作った抱きしめると音が出るぬいぐるみなど、発表自体を楽しめるのが特徴です。

 コンピューター専門書のオライリーによる「Make Tokyo Meeting」は、会場が大学で学園祭のような雰囲気が人気を集めました。現在は「Maker Faire Tokyo」として、出店料や入場料もとる本格的なイベントになっています。

ニコ技、ネタ系で盛り上がる

 ネットでは、ニコニコ動画に作品を投稿する「ニコニコ技術部(ニコ技)」が有名です。初音ミクの作品が多く投稿されています。電子工作というより、「○○を作ってみた」といった話題になりやすいアイデアを披露するネタ系が多いのが特徴です。「1/1戦車を作ってみた」などの名作が生まれています。

ニコニコ技術部の作品、LEGOで作ったトイレットペーパーホルダー
ニコニコ技術部の作品、LEGOで作ったトイレットペーパーホルダー

自作楽器、不可思議な音

 自作ラジオから続く電子工作の流れを組むグループとして、自作楽器があります。コードなど音楽理論とプログラミングの技術を、ピアノの鍵盤やギターの弦ではない独創的な部品に組み込んだユニークな楽器が誕生しています。

 2月11日には、作者が自慢の作品を発表するイベント「オトアソビ」(13時30分開始、東京大学本郷キャンパス情報学環福武ホール)が開かれます。操り人形の口の開け具合で音を変化させる楽器「ケロミン」や、円柱のダイヤルを回しながら音を出す「ウダー」など、個性的な作品が登場する予定です。

【動画】桐箱デバイスに格納された自作楽器「ウダー」。円柱を回すことで演奏が始まる

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