AV女優売り上げ1位、バラエティーでも活躍
デビュー作品のDVDは売り上げランキング1位となり、レンタルも好評。瞬く間に人気女優にのし上がった。
08年からは、民放深夜のバラエティー番組にレギュラー出演。番組から誕生した歌やダンスを披露するアイドルグループ「恵比寿マスカッツ」の一員として、ライブツアーで各地を巡った。
レッスンは、長いときは1日12時間に及んだ。その一方で、AVへの出演も続けた。週末に行うサイン会は、47都道府県で達成した。
「恵比寿マスカッツ」のメンバーとして活動していたころ=2010年9月27日、所属事務所提供
出典: 朝日新聞
悪性腫瘍の疑い、人工肛門の可能性も
婦人科の病気。しかも手術と聞いて、驚いた。体をみせる仕事だから、傷痕は小さくしたい。所属するアイドルグループ「恵比寿マスカッツ」の解散全国ツアーも迫り、早く復帰したい。「手術なら傷が小さくて済む腹腔(ふくくう)鏡手術がいいな。退院も早そう」と思った。
気がかりもあった。初めて耳にした「腹水」という単語。何を意味するのか。インターネットに「腹水」などのキーワードを入れ、婦人科の病名を検索した。
「卵巣がん」。表示された検索結果に、背筋が凍った。「違ってほしい」という願望。同時に、ある種の覚悟。
病気になる以前、テレビ番組の収録に臨む麻美ゆまさん=2012年10月5日、所属事務所提供
出典: 朝日新聞
想像を上回る、抗がん剤の副作用
2種類の抗がん剤を点滴する。悪性の卵巣腫瘍で標準的な治療だ。月に1回入院し、計6回。8月まで続く予定だった。
「こんなにつらいの……」。吐き気や手足のしびれ、脱毛。副作用は事前に医師から説明されていた。だが想像を上回った。投薬直後から寒気に鳥肌。気持ちも悪い。翌日からは、体の痛みや手のしびれも出始めて、何もする気がしなくなった。
抗がん剤治療では、副作用ですべての髪が抜けた=2014年10月2日、所属事務所提供
出典: 朝日新聞
思わぬ中傷「セックスのしすぎ」
思わぬ中傷を受けた。
「セックスのしすぎ」「自業自得だ」。怠けず、真剣にやってきた仕事。職業への偏見を悲しく感じた。女性特有の病気をすべて性行為と結びつける風潮はないだろうか。医師に尋ねると、「卵巣腫瘍とセックスは関係ない」と言われた。病気に対する誤解や偏見があると思った。病名を隠す女性がいることも知った。卵巣腫瘍について正しいことを知ってもらいたい、と思った。
ウイッグを着け、解散コンサートに立った=2013年4月7日、所属事務所提供
出典: 朝日新聞
病気の経験を語ることで役立ちたい
麻美さんも、当時を振り返った。「仕事がなくなって、経済的にも追い詰められました」
働けなかった期間は、無収入。「治すことも仕事」と周囲に励まされ、治療に臨んだ。今、闘病の経験を伝える仕事が舞い込む。これも、私にしかできない仕事。
「私も人の話を聞いてパワーをもらった。自分の病気の経験を話すことで、役に立ててもらえば」
自叙伝を出し、握手会に臨んだ=2014年5月11日
出典: 朝日新聞
過去を含めて再出発「元気と笑顔届ける」
「リ スタート」。闘病と人生をつづった自叙伝を今年5月に出した。タイトルにこだわった。「リセットだと、これまでの私がなかったことになる。過去を含めて、再出発したい」
病気をしても、私は変わらない。これまでと違う形でも、私の仕事は元気や笑顔を届けること。そんな風に思っている。