見知らぬ家に投げた小石、僕はドラムが見たかった… 39年前の思い出
1981年の春。どこからかドラムを叩く音が聞こえてきて、僕の人生は変わった。
「ドンドンタン、ドカドンタン……」。1981年の春、中学1年の平井景が剣道の練習を終えて家路についていた時、ドラムを叩く音が聞こえてきた。
音がする家を突き止めて裏の空き地にまわると、雨戸が閉まっていた。
音楽番組「ザ・ベストテン」に映るドラムセットを見ては「かっこええ!」と思っていた。菜箸を持ってお盆やタッパー、椅子を叩きまくっていた。
一度でいいからドラムセットというものを、この目で見てみたい。気づいたら小石を手にとって、雨戸の閉まった窓に向かって投げていた。
「中にいる人が顔を出してくれるはず」。自分の気持ちが最優先で、相手に迷惑かけることなんて頭の隅にもなかった。
音が止まったタイミングを狙って何度も投げた。「カチャーン」という雨戸に当たる音が響いたが、なかなか人は出てこない。