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ネットの話題

懐かしい? QBBの〝型抜きチーズ〟 「給食で出た!」

QBBの型抜きチーズ。学校給食などで使う業務用ということもあり、1箱40個入りだそうです
QBBの型抜きチーズ。学校給食などで使う業務用ということもあり、1箱40個入りだそうです 出典: 六甲バター株式会社提供

目次

パンダや新幹線などの形になったチーズ、見たことありますか? プロセスチーズで有名なQBBの「型抜きチーズ」がSNSで話題になりました。「給食で食べた」「懐かしい」という声がある一方で「見たことない」という反応もありました。地域や年代によって違いはあるのか、今は主にどこで流通しているのか、メーカーに取材してみました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)

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給食で食べたあのチーズ

話題になっていたのは六甲バター株式会社が製造しているQBBブランドの「型抜きチーズ」です。1個ずつパウチされたチーズがパンダやライオン、飛行機やサッカーボールなどの形に成型されているのが特徴です。

SNS上では「めっちゃ懐かしい」「昔、給食で出たな」といった反応が。
約20年前、記者が通っていた千葉市の小学校でも給食に並んでいた記憶があります。

一方で「初めて見た」「ジェネレーションギャップかな」「地域差や年代差があるのかも」といった反応も。

型抜きチーズはカニやパンダ、トラなど可愛らしいデザインが特徴的です
型抜きチーズはカニやパンダ、トラなど可愛らしいデザインが特徴的です 出典: 六甲バター株式会社提供

型抜きチーズはいつごろから、どこで流通しているのでしょうか。

同社に取材を申し込んだところ、マーケティング本部長の黒田浄治さん(62)が説明してくれました。

「型抜きチーズが発売されたのは1980年代です。当初は『ポコットチーズ』という商品名でスーパーなどで販売されていたのですが、その後まもなく、学校給食に採用されることになりました。今では給食用の需要が圧倒的に多いです」

大人はつい「懐かしい」と口走ってしまいますが、今も学校給食で子どもたちに親しまれているようです。
給食に採用されるかどうかに、地域差や年代による違いはあるのでしょうか?

「弊社は神戸市にある会社ということもあり、給食に採用してくださっている自治体は神戸市や明石市など関西圏が多いです。ただ、相模原市など他の地域でも採用されています」と黒田さん。

また、学校給食にどんな食品を使うかは年度ごとに変わるため、同じ自治体でも採用される年とされない年があるそうです。

「タイミングによっては、同じ地域出身で年齢が近い方でも、給食で型抜きチーズを食べたことがある方とそうでない方がいるかもしれませんね」

実は技術が必要

黒田さんによると、学校給食用の出荷がメインではあるものの、近年はネット通販やスーパーなどで一般の人が購入する機会も増えているとのこと。

「親御さんが『懐かしい』『子どもが楽しみながら食べてくれる』と買っていかれることが多いようです。最近は普通のスーパーでも『型抜きチーズを小売りさせてもらえないか』というお話をいただくこともあり、ありがたい限りです」と話します。

型抜きチーズのデザインは全部で10種類。団子鼻が特徴的な0系新幹線など、時代を感じさせるものもあります。

特徴的な見た目の0系新幹線のチーズ。この車両は2008年に運用を終えているので、今の小学生は知らないかもしれません
特徴的な見た目の0系新幹線のチーズ。この車両は2008年に運用を終えているので、今の小学生は知らないかもしれません 出典: 六甲バター株式会社提供

子どもが喜ぶデザインに成型したチーズ。類似品が登場してもおかしくなさそうですが、そうならないのはなぜでしょうか。

プロセスチーズは原料となる複数のチーズを混ぜ合わせて溶かし、固めて作ります。
型抜きチーズの場合は、溶かしたチーズを型に充填してから固めることで、動物や乗り物などの形にしています。

「簡単そうに思うかもしれませんが、粘度の高いチーズを型に充填するのには技術が要るんです」

型抜きチーズのデザインを決める過程で、型を作る段階まで進んだものの、形が複雑すぎて充填がうまくいかないなどの理由で製品化できず「お蔵入り」になってしまったデザインもあるそうです。

「手間がかかりノウハウも必要な一方で、普通のチーズと比べて利益が大きいというわけでもありませんから、そもそも参入しようという会社自体が少ないのかもしれませんね」

型抜きチーズ誕生に込められた思い

味や栄養価は同社が作る普通のプロセスチーズと変わらないという型抜きチーズ。
なぜ形を変える手間をかけようと思ったのでしょうか。

「『チーズで子どもたちの会話のきっかけを作れれば』という狙いがあったようです。大人の視点だけで作ると、どうしても味や栄養価など実用一辺倒になってしまう。見た目の要素を加えて、子どもたちを楽しませられないかという発想だったようです」と黒田さんは語ります。

確かに、SNS上でも「友達と好きな形のチーズを交換していた」といった投稿が見受けられます。

SNS上では「ライオンが好きだった」などの投稿が。耳やひげなど細部まで作り込まれています
SNS上では「ライオンが好きだった」などの投稿が。耳やひげなど細部まで作り込まれています 出典: 六甲バター株式会社提供

「型抜きチーズに限らず、商品開発の際には、子どもたちに食べてもらうことを強く意識してきた歴史的な背景があります」

同社の前身となる平和油脂工業が創業したのは戦後間もない1948年。食糧不足が続くなか、「子どもたちに少しでもカロリーがある食べ物を」と、当初はマーガリンなどを中心に製造・販売していたそうです。

その後、1958年にはソーセージ型に成型したスティックチーズを発売。
「まだチーズが高級品だった時代、家庭でも手軽にチーズを食べてもらえるようにというコンセプトでした」

刃物を使って切り分けたりする必要がなく、子どもでも自分の手で包装を開けて食べられることもポイントでした。

現在まで続く子どもたちにも配慮した商品作りですが、あるジレンマも。

「家庭でも学校でも、最終的に商品を選ぶのは大人ですから、なかなかアピールが難しいんです」

SNSで型抜きチーズがたびたび話題に上ることについて黒田さんは「『懐かしい』と言ってもらえるのは、それだけうちの商品が楽しい思い出と結びついているからなのかなと。もしそうであれば、こんなにうれしいことはありません」

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