格差社会を生きる厳しさ、31文字に 共感広がる平成の「社会詠」

伊藤隆太郎

バブル崩壊後の1993〜2005年の長期にわたり、有効求人倍率は1を下回った

 格差社会を生きる過酷さを、若い歌人たちが多くの短歌に詠んでいる。非正規労働の不安、果てない長時間労働、分断される職場……。短歌の世界で「社会詠」と呼ばれる分野がいま、1970年〜80年代生まれの「ロストジェネレーション」と呼ばれる世代の自己表現として注目され、共感を広げている。

 バブル崩壊後の就職氷河期に新規卒業者となり、厳しい仕事探しを強いられてきた「失われた世代」の短歌が描くのは、どんな世界か。彼らの直前の世代に属し、中堅の広告会社で中間管理職として働きながら短歌づくりを続けているユキノ進さん(50)に、ここ数年に刊行された若手歌人の歌集のなかから、格差を主題とした社会詠の秀作を選んでもらった。描かれているのは、「働くこと」をめぐって起きている様々な変化と、それに向き合う一人ひとりの等身大の苦しみ、悲しみだ。

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