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入社したら黒髪…自由じゃダメ?「らしさ」にとらわれない企画の狙い
「社会の偏見を覆したい」
学校を卒業して働く人の髪色は「黒」、髪型は「自由」ではいけない――? そんな根強い偏見を覆そうと取り組みを続けるヘアケアブランドがあります。現在は髪をピンクに染めているブランドの担当者も、入社当時は黒髪だったそう。「自分らしい髪型で働く」を応援したいと考える、取り組みへの思いを聞きました。
「ダイバーシティーと言われていますが、社会人の髪型へ大きな偏見があると思います。誰が決めたルールなのでしょうか。その縛りを払拭していきたいと考えています」
ヘアケアブランド「LUX(ラックス)」を担当する大西朱音さん(ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング)はそう話します。
LUXは2023年から「#BeHairself」というスローガンを掲げ、「社会人らしさ」にとらわれない髪型や髪色を訴えてきました。昨年は「私の髪は、私が決める。」、今年は「私らしく輝く髪へ」をテーマに展開しています。
黒髪や暗い髪色が「自分らしい」と誇れる人がいる一方、周りの目を気にして「自分」を抑えてしまう社会に課題を感じています。
「海外では髪の色や目の色、肌の色が違うのは当たり前です。社会人だからみんなが髪の毛を暗くするといった考えはありません。髪型や髪色は日本特有の問題ではないかと考えています」
同社が2023年に新たに会社で働き始める学生や、会社員を対象に行った「社会人の髪型・髪色に関する調査」によると、約7割が「新卒社員は入社式に向け髪形を整えなければならない」と回答。約8割が「世の中は、社会人の髪型/髪色に対して固定観念がある」と感じていたそうです。
一方で、新入社員の約7割が「社会人に相応しいといわれる髪型・髪色ではなく、自分の好きなヘアスタイルで働きたい」と答えていました。
自由な髪型にして万が一上司に怒られたらどうしよう、目をつけられたらどうしようーー。そんな不安があり、「自分」を出せないでいるのではと考えています。
現在は髪をピンク色に染めている大西さんも、新入社員のときは好きな色に染めず地毛のままだったそうです。「弊社は採用面接の際も自由な服装・髪型をうたっているのですが、私自身『悪く思われるくらいだったら……』と抑えて黒髪のストレートボブにしていました」
職業によっては衛生面やTPOを考え髪型が制限されている場合もありますが、大西さんはヒアリングの結果からオフィスワーク中心の職種では「自身が好きな髪型で働いていいという企業もあり、寛容になっているのでは」と話します。
「髪型や髪色が派手だからといって、その人の能力が低いというわけではありません」
同社は商品を通して「美しい髪」の魅力を発信してきました。髪の毛の美しさが自信につながる人がいる一方で、髪型・髪色のステレオタイプを印象づけてきた意識もあります。
「私たち自身も反省をして、日本の社会にひそむ大きな偏見を変えていきたい。そのために私たちもできるところをサポートします。社会を変えていかないと、みなさんの生活は変わっていきません」と大西さんは話します。
3月には「自分のなりたい社会人像に近づくため」のヘアサロンを期間限定でオープン。春から会社で働き始める学生たちが、カウンセリングを受けて自分の理想のイメージや希望の働き方を伝え、施術を受けました。
大西さんは今回の取り組みについて「髪型をきっかけに、自信を持てたり、やりたいことの一歩を踏み出せたりすることを応援する企画でもある」と話します。
「社会人になっても、自分らしい髪型で働くことでよりポジティブに、仕事に対しても熱心になれるといいなと思います」
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