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49歳でフルマラソン挑戦の母 50mから「風船」のようにコツコツ
娘は「無謀な挑戦かも」と心配しましたが…

47歳でバイクの免許を取得し、49歳でフルマラソンを完走。60歳を過ぎて和裁を習い始めるーー。そんな母の生き方を描いた漫画が、たびたびSNSで話題になっています。何歳になっても挑戦し続ける母の姿は、作者の刺激にもなっていました。
母の生き方を漫画で発信しているのは、関東地方に住む刺しゅう作家・イラストレーターのありまさんです。
2021年、初めて母について描いた漫画「好きなことを持って生きたい」をSNSに投稿すると、4万を超える「いいね」が寄せられました。
漫画では、ありまさんが大学生の頃、突然、和裁を習い始めた母の姿が描かれています。
高齢の祖母と同居することになり、それまでのように自由な時間がなくなっていた母。ありまさんは「時間的、体力的に大丈夫なのか」と思いましたが、母からはこんな言葉が返ってきたそうです。
「介護『だけ』してたら、それが終わった後に何をしたらいいのか分からなくなると思うんだ。だから、介護してても、やりたいことをやっておくの。好きなものをちゃんと持っておくの」
「自分の人生を生きなきゃね」
当時、ありまさんは母の言葉にピンときていませんでしたが、結婚出産を経て育児中心の生活になったときにわかったといいます。
「好きなものがあると思ったら自分に芯ができたような気がして、やりたいことがどんどん見えてきました」
ありまさんにとっての「好きなもの」は刺しゅうでした。漫画を描いたタイミングはちょうどありまさんが刺しゅう作家としての活動を始めようと思っていた時期でもあり、「決意表明」の意味も込めて母のエピソードを漫画にして振り返ったそうです。
母の考え方は多くの人の心に響き、SNSには「深い」「素敵なお話」「定年を迎えた後なども当てはまるのかも」といったコメントが寄せられていました。
別の年には、東京マラソンに参加したありまさんの兄の姿を見て、母がフルマラソンに挑戦することを決めました。ありまさんは、その過程も漫画にしました。
母が暮らす中部地方の実家は、最寄り駅まで車で20分。どこに行くにも車が必要で、それまで長距離を歩くことにも慣れていなかったといいます。練習初日は、50m走ることがやっと。すぐに息が上がってしまいました。
しかし、母は諦めず2kmを歩くことから始め、7km、20kmと距離を伸ばしていきました。そして、1kmから走り始め、2km、5km、7km……とまた少しずつ距離を伸ばし、1年後には49歳でフルマラソンを完走するまでになったそうです。
ありまさんは、「最初は『無謀な挑戦かも……』とハラハラしていましたが、『コツコツ練習を重ねることはまねできない!』と尊敬しましたし、走りきった母には度肝を抜かれました」と振り返ります。
完走し終えた母は、ありまさんに「コツコツが好きなの」と話してくれたそうです。
「コツコツは風船のイメージでね、風船が少しずつ膨らんでいって、ある時点まできたときにパンっとはじけて、それが、自分がひとつレベルアップした合図に思えるところが楽しいの」
ありまさんは風船の例えを聞いたとき、「私の中にはない考えだった」と感じたそうです。そして、「おもしろいなぁと思うと同時に、これなら私も『コツコツ』を楽しめるかもと思いました」
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