ネットの話題
「ついに洋式トイレに!」 老舗ビリヤード場の張り紙が話題に
店のトイレが洋式になりました――。そんな内容を伝える、千代田区の老舗ビリヤード場の張り紙が話題になっています。店の窓に張られたシンプルなメッセージは多くの通行人の目に止まったようで、SNS上でも「喜びが伝わってきます」といった反応とともに拡散されました。この張り紙をしたビリヤード場に、話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
JR中央線御茶ノ水駅のホームから、神田川を挟んだ向こう岸を見ると、ある張り紙が目に入ります。
「洋式トイレだぁ!!」
年季の入った建物の窓に張られたメッセージはごく短いものですが、迫力があります。
窓の下には「淡路亭ビリヤード」と書かれた看板が。
このビリヤード場はXの公式アカウントもあるようで、検索するとお店のトイレを洋式に改装したという投稿が見つかりました。
ついに(小躍)
— 淡路亭ビリヤード (@Awajitei1960) April 24, 2024
つひに(感謝の舞)
洋式トイレに(泣)❗
男女別(号泣)‼️←超重要
広くなりました(約二倍)
勿論、和式トイレ派にも対応可能です‼️
禁煙ですからね。
今後、手摺も付けるしペーパータオルにします。
(男子全員‼️)オシッコも座ってね。
手は洗おうね(特に男子‼️)
あとは..嬉し過ぎて(文字数) pic.twitter.com/xsbcobvkJX
「男女別(号泣)」「広くなりました(約二倍)」など、言葉の端々から喜びがにじみ出ているようです。
この投稿には「昭和から令和にレベルアップ」「ひざを痛めている身には助かります」といったお客さんからとみられる反応もありました。
ビリヤード場に取材を申し込むと、店長の酒井優さん(49)が対応してくれました。
「今の店の建物ができたのが東京五輪の前年、1963年でした。トイレの本格的な改修はそれ以来初めてです。喜んでくれた常連さんたちが『みんなにも言いたい』『なんかアピールしようぜ』と盛り上がり、店の窓に張り紙をすることになったんです」
改修前は男性用小便器と和式便器が一つずつという状態だったそうです。
ビリヤード場のオーナーが変わったのをきっかけに、2年ほど前から店内の床や階段などの改修を進めており、トイレを洋式にしたのもその一環だと言います。
「今回の改修で洋式便器2つ、男女別になりました。今までが不便すぎたという申し訳なさもありましたが、お客さんに喜んでもらえたのが何よりでした」
淡路亭の歴史は古く、屋号の発祥は幕末にまでさかのぼると言います。
「元々は家具屋だったと聞いています。1960年に家具屋のノウハウを生かしてビリヤード台の製造を始めたのが、今に至るきっかけだったそうです」
それまで「お金持ちの娯楽」だったビリヤードが、戦後の高度経済成長を経て、大衆へと広まっていきます。
酒井さんも、学生時代にビリヤードに触れたことがきっかけで、この業界で働くようになったと話します。
「映画の影響も大きかったですね。特に『ハスラー2』を見て影響された人は多いと思います」
かつてはたくさんあったビリヤード場も、今では少なくなりました。
「お酒を飲みながらビリヤードを楽しめるプールバーはまだ結構ありますけどね。ウチみたいな純粋なビリヤード場は珍しくなっちゃいましたね」と酒井さん。
愛好家の間で有名な淡路亭にはプロが通う一方で、学生の姿も多く目につきます。
この日も、ビリヤードに初めて挑戦する学生に「白い玉だけをつくんだよ」と酒井さんがルールの説明をしていました。
ビリヤードの魅力について酒井さんは「初心者もプロも、喜びを共有できるところ」だと語ります。
「玉が入れば嬉しい、外れれば悔しい。それはいつまでも変わらないんです」
トイレの改修を知らせるXの投稿は120万回以上表示され、多くの人の目に触れました。
「『ビリヤードは敷居が高い』とか『古くて怪しい雰囲気のお店』といった印象をなんとか変えたいなと思っていたんです。ただ、こんなに話題になるとは思っていなかったので驚きました。やっぱり中央線パワーですかね?」
ただ、来客は1日あたり20人~40人ほどと、Xで話題になってもあまり変化はなかったそうです。
「84歳のオーナーも『120万はすごいな。でもウチは相変わらず暇だな』と笑っていました。この話題をきっかけに、ビリヤードに興味を持ってもらえたらと思います」
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