連載
#12 特別じゃない日
手をつないで歩く家族連れ すれ違った老夫婦の夫が差し出したものは
「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。ツイッターで発表して注目を集めた漫画「おでかけ」に込めた思いを聞きました。
幼い子どもを真ん中にして、3人で手をつないでいる家族。
すれ違った老夫婦の妻がほほ笑みながら見つめていると、夫が肩を指でつついてきます。
夫が差し出したのは、荷物の入った買い物袋。
買い物袋を真ん中にし、まるで手をつなぐように片方ずつ持って歩き始めます。
照れながらも妻は笑顔になり、家へと帰るのでした。
私は外出することが少なく、出かけると言えばもっぱらスーパーばかり。
スーパーにいるいろいろな人たちを観察することが好きだったりします。
「今日このあとバーベキューだろうな」「誕生日パーティーをするのかな」と、とても楽しそうにスーパーの中を回られている様子を見ると、うらやましくなってしまいます。
そんな私も、家族と一緒に食べるメニューを考えながら食材を選んでいることを思い出し、自分の今持っている幸せをかみしめる日々を送っています。
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〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化されています。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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