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テレビたたく・黒電話を肩に…あるあるある「絶滅危惧動作」図鑑に
昔はよくやったことなのに、そういえば最近やらなくなったことってありませんか?
私が真っ先に浮かんだのは、「携帯電話にストラップをつける」という動作。あの小さな通し穴にわっかの部分を入れるの、結構夢中になれて楽しかったですよね?えっ、暗すぎますか??
こんなことを考えるきっかけになったのは、ある作品と出会ったからです。その名も「絶滅危惧動作図鑑」。
どんなものなのでしょうか?制作者に話を聞いてみました。
絶滅危惧動作図鑑は「テレビをたたく」や「和式トイレを使う」といった全57種類の動作がまとめられた本です。
制作したのは東京芸術大学大学院美術研究科デザイン専攻2年の藪本晶子さん(24)。もともとは、学部3年時の課題を掘り返してできたものだそうです。
中には動作のイラストとともに、動作の絶滅具合をわかりやすく伝える「絶滅危惧レベル」や動作内容の説明が書かれています。
イラストは時代背景にとらわれないように登場人物の表情や服装をさっぱりしたものでまとめられ、説明はコミカルな文章で動作の様子を浮かびやすく表現しています。
当初の課題は「何かたくさんやってみる」というもので、藪本さんは街中にいる人の行動について、100個ほどのスケッチを描いていったそうです。
しかし、次はその「たくさんやったこと」から新たな発見を見つけ作品にするという課題が課せられました。
「後先考えずにやったので、苦労してひねり出した」という藪本さんが導き出した発見が「ものの数だけ動きがあるということ」でした。
この発見が作品のきっかけになります。
「例えばスマートフォンのように1個のモノでいろんな用途ができると、モノ自体が減る。すると、動作が減るなっと気づいたんです」
モノは博物館とかに「昔のモノです」という紹介の方法がありますが、そこに動作は残りません。動作だけが置き去りになって消えています。「それならば残すものがあってもいいんじゃないか」という思いが、今回の図鑑につながっていったそうです。
とはいうものの、藪本さんも1994年生まれなので、中には触ったことのない道具のものもあります。
例えば「チャンネルを回す」はアニメのちびまる子ちゃんを観てイメージ、「井戸水をくむ」はジブリ映画「となりのトトロ」から連想したそう。
そのため、実際に使っていた世代とのちょっとした違いが話題になり「テープを巻く」では「コイン派と指派がいる」と言われることも。
「黒電話」のイラストでは、家族に「手に持つんじゃなくて肩に挟むんだよ」って言われ、藪本さんはトレンディドラマやバブルのイメージがパッと浮かんだそうです。
こういった動作はなくならない方がいいのでしょうか?
そんな質問に対して、藪本さんは次のように話します。
「便利になることは当たり前のこと。悪いことではないし、たぶん、止められないことだと思う。だから絶滅危惧でも動物みたいに『だから守らなきゃいけない』という大きなことではなくて、知っていたら、面白いよなとかちょっと豊かな人生になれるかもなというぐらいです」
「人間ってスルースキルが高くて、目に見えていても、知識として飲み込んでいないとそもそも認識しなくなります。でも、こういうのがあると、その後に生活するときに楽しくなる、『あ、これだ』と思うことはある」
「以前、別の作品で女性政治家の服の色を集めて作品にしました。こうすることで、今まで興味のなかった政治のニュースが『あの人きょうは何色着てる』みたいな形で見るようになりました」
「絶滅危惧動作も普段意識しないことを考えてみることで新しい考えが生まれるかもしれない。一見必要のない知識を入れるというのは楽しいことだと思います」
作品を展示した際にほかにどんな絶滅危惧動作があるかを聞いたところ「紙をめくるときになめる」「ファミコンのカセットをフーフーする」などのコメントが寄せられてといいます。
きっと絶滅危惧動作は他にもたくさんあるに違いません。ちょっとした時間を使って、考えてみてはいかがでしょうか??
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