お金と仕事
雑誌付録の王様・宝島社、次の一手は?勝つほど痛感「権利元は強い」
2016年下半期のファッション系雑誌の販売部数トップ5に4誌が入った宝島社。同社の雑誌の魅力の一つとして、他誌を圧倒する付録の豪華さがありますが、近年はライセンス事業にも進出しています。同社で付録戦略を牽引してきた関川誠取締役兼編集局長(63)に、昨今の出版を取り巻く変化や今後の展開について聞きました。
同社は1971年に地方自治体のコンサルティング会社として生まれ、74年に「宝島」を創刊して出版業に本格参戦。89年に10代女性向けの「CUTiE」を創刊し、ファッション誌の世界に参入しました。
昨年下半期の男女ライフデザイン誌全58誌中、販売部数1位(日本ABC協会調べ)となった「sweet」(月間平均29万1928部)、2位となった「リンネル」(同23万4255部)、3位となった「InRed」(同17万8638部)、5位となった「GLOW」(同16万9344部)などを次々と創刊し、ヒットさせています。
2004年に蓮見清一社長(74)が「全雑誌、毎号、付録をつける」と大号令し、現在販売している12誌すべてで付録をつけています。「付録は雑誌にとって、双発機の二つのエンジンの一つで、欠かせないもの」と関川さんは話します。
昨今の出版を取り巻く変化はどう受け止めているのでしょうか。
インターネット通販サイト「アマゾン」では宝島社の雑誌の予約を受け付けていて「非常に強い販路の一つ」(関川さん)と言いますが、書店や取り次ぎという日本の「出版流通」の仕組みを大事したい思いがあり、10年には「宝島社は、電子書籍には反対です」と記した新聞広告を出し、話題となりました。
今でも電子書籍は作っていない同社。関川さんは「昔からの出版社はそれに育ててもらった、というのもあるし、日本の本屋は雑誌も単行本も漫画も参考書も置いている、世界ではあまり類を見ない形態で、そこに行くことでいろんな刺激を受けるすごい場所だと思う」と思いを語ります。
そして、雑誌販売が強いのはコンビニ店。関川さんはコンビニにも感謝する半面、「ライバル」として見ているところがあります。
安価で質の良いコーヒーを出したり、プライベートブランドを次々出したり。「動きが速く、開発力、マーケティング力に刺激を受ける」。その一方で、コンビニが新たなアイデアを出すたびに、雑誌の販売コーナーが縮小される傾向にあるのも事実です。
以前は、コンビニのガラス面は雑誌コーナーが占め、立ち読みする人たちの姿が見えることで、お客さんが安心してコンビニの中に入れる、という構図になっていましたが、最近は「イートインスペース」がその定位置を脅かしています。関川さんは「本当、負けちゃいけないな。すごいなっていう商品を出し続けていかないといけない」と話します。
そうした出版社の枠を超えた発想は、15年から始めた「kippis」(キッピス)という北欧・フィンランドのデザイナーを起用したライフスタイルブランドのライセンス事業にもつながっています。キッピスは、フィンランド語で「乾杯」という意味です。
宝島社は付録を作る際、海外の人気キャラクターのデザインを使うことがありますが、それを通じて関川さんが感じたのは、「権利元は強い」ということ。
同業他社である小学館には「ドラえもん」、集英社には「ワンピース」などの人気コンテンツがありますが、宝島社にはまだそこまでのコンテンツはないと感じています。そこで、そうした「権利元的な動きが何かできないか」と考える中、ファッション誌を作ってきた取材経験を生かして目をつけたのが、昨今、女性に人気の北欧のデザインだったそうです。
瓶詰やハンカチ、バッグ、シャンプーなどに展開し、人気を博しています。こうしたキッピスブランドの商品は、宝島社の雑誌でも紹介することで、認知向上と販売促進につなげています。
関川さんは「ファッション誌の経験を元にした実験が成功しつつあるので、次の展開も考えています。出版流通を使って売れる商品はまだいっぱいあるはずなので、ファッションに限らず、書店をにぎわわせる新しいものを作り続けていきたい」と話します。
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