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歌手は美人であるべき? 美形も能力?「見た目問題」当事者と考えた
結局、人は見た目で判断されるのか? 恋人が一度もできない50代の男性や、結婚してもトラウマに悩まされる女性……ネット上のアンケートには切実な声が寄せられました。中には容姿の恩恵を受けた人生を冷静に語る女性も。デリケートな外見の話、どこまで気にするべきなのか? 「見た目問題」の当事者で、アルビノ・エンターテイナーの粕谷幸司さん(33)と語り合いました。(朝日新聞記者・岩井建樹)
――アンケートには、この男性のような切実な声が届きました。粕谷さん、どう思われましたか?
「本当に『もうどうでもいい』なら何も言えないですけど、異性と交際したいと思うなら、交際できそうな自分になる努力はできるはずです」
「そりゃ、ハンサムと比べれば可能性は低いでしょう。でも、自分の見た目を受け入れた上で、ファッションセンスや料理の腕、経済力、トークの技術なんかは、努力すれば磨けますよね」
「逆に、見た目だけで中身のない人は、モテても一瞬、長続きはしませんよ」
――子どものころに受けた言葉に傷つく人もいます。僕も「チビデブ」ってよく言われていました。学校や親が、見た目でニックネームをつけてはいけないよって教える必要もあるのではないでしょうか。
「禁止する教育は、嫌です! 禁止したら、いい評価もできなくなっちゃうじゃないですか。見た目がキラキラして『王子』ってニックネームつけられたら、『おれって、イケてる?』と自信につながることもありますよね」
「『本人を傷つけるようなことを言っちゃダメ』という教え方はありだと思いますが、『見た目をネタにしちゃダメ』は行き過ぎですよ。僕だって、アルビノをネタに、エンターテイナーとして活動していますし」
――「白い」って言われ、傷つきませんでしたか?
「幼稚園のころ、友だちに『なんで白いの?』って聞かれたら、『どうしてそんなこと聞くの?』って泣いていました」
「でも小学生になって、『生まれつき』ってことを理解したら、僕なりに納得できたというか、説明できるようになって、言われても気にならなくなりました。だって、僕が白いのは事実だし」
――女性は顔がほぼすべて、とはさすがに思いません…
「この人のこと、尊敬するけど(笑) 美人のせいで、いつもナンパされたり、注目を浴び過ぎたりしたら、逆にストレスを感じる人だっているでしょう。ある意味、『人と違う』ってことですからね」
「でも、この人がかっこいいなと思うのは、自分が持っている美貌を事実だと認め、幸せをつかむためにうまく使っていますと、はっきりと言えていることだと思います。この女性の場合、『見た目だけじゃないぞ』って、結果で示すのが大変そうだけど」
――この方の言うとおりでは? たとえば、飛行機の客室乗務員に美しさを私たちは求めています。けれど、本来、美しくなくても接客や保安業務はできますよね。本質でなかったり、本来の役割とは関係なかったりする場面で、見た目を評価の対象とする風潮はどうにかしないといけないと思います。
「そうですかねぇ。美形も一つの能力だし、評価のひとつに値すると思います。アイドルグループも、可愛さという能力があるから、人の心をつかめるわけで」
「電化製品を買うとき、本質は商品の機能でしょうけど、会社のブランド名やデザインも重視しますよね。機能が優れているからって、見た目が好きじゃない商品、買いますか?」
――見た目について否定的な言葉を口にしないって、簡単なようで実行するのが難しいかもしれませんね。お酒の席で、わりと他人の見た目って話題にのぼるじゃないですか。自省します。
「でも『肯定的なワード』なら口にしてもいいでしょ。僕は『見た目が好きな女性芸能人ベスト10』をつけていますよ。
「結局、見た目だけで、『あいつは、こういうやつだ』って評価して、それ以上その人を知ろうとしない人は、『見る目』がない人だと思います。見た目がよいからって手放しで評価すれば、痛い目にあうこともあるでしょうしね」
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