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連載

#8 「見た目問題」どう向き合う?

歌手は美人であるべき? 美形も能力?「見た目問題」当事者と考えた

アルビノをネタに、おもしろことができないかいつも考えている粕谷さん
アルビノをネタに、おもしろことができないかいつも考えている粕谷さん 出典: 粕谷さん提供

目次

 結局、人は見た目で判断されるのか? 恋人が一度もできない50代の男性や、結婚してもトラウマに悩まされる女性……ネット上のアンケートには切実な声が寄せられました。中には容姿の恩恵を受けた人生を冷静に語る女性も。デリケートな外見の話、どこまで気にするべきなのか? 「見た目問題」の当事者で、アルビノ・エンターテイナーの粕谷幸司さん(33)と語り合いました。(朝日新聞記者・岩井建樹)

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【関連リンク】「見た目」重視の風潮、変えるには?アンケートの結果は……
【「見た目問題」当事者と考える】
・外見で損する人は努力不足?
・歌手は美人であるべき? 外見重視どこまで
・この子が大人になったら…(近日公開)

「不細工だから彼女できない」

「自他共に認める不細工な男です。ついでにファッションセンスも無いので、男女問わず異様な目で見られております。そんな訳で、この年にして男女交際の経験がありません。もうどうでも良いです」(熊本県 男 50代)
朝日新聞のアンケートから

――アンケートには、この男性のような切実な声が届きました。粕谷さん、どう思われましたか?

「本当に『もうどうでもいい』なら何も言えないですけど、異性と交際したいと思うなら、交際できそうな自分になる努力はできるはずです」

「そりゃ、ハンサムと比べれば可能性は低いでしょう。でも、自分の見た目を受け入れた上で、ファッションセンスや料理の腕、経済力、トークの技術なんかは、努力すれば磨けますよね」

「逆に、見た目だけで中身のない人は、モテても一瞬、長続きはしませんよ」

異性にモテるため、見た目以外に磨けることはたくさんあると話す粕谷さん(右)。左は筆者の岩井
異性にモテるため、見た目以外に磨けることはたくさんあると話す粕谷さん(右)。左は筆者の岩井

「ニックネームに傷つく」

「小学生の時は男子児童にブスといわれ、中高では男子学生に「アゴ笑」と嘲笑され、自分の顔が嫌いになった。写真に撮られることが本当に嫌になった。付き合った人もそれなりにいるし、綺麗だ、美人だといわれることもあった。コンプレックスを昇華させようと化粧もファッションも学問も仕事も頑張ったし、結果もでた。しかし、未だに傷ついた心は治せていない。書いている今も涙が止まらない。夫にも子供にも愛されているのに、今も抜け出せない自分が悔しい」(東京都 女 30代)
朝日新聞のアンケートから

――子どものころに受けた言葉に傷つく人もいます。僕も「チビデブ」ってよく言われていました。学校や親が、見た目でニックネームをつけてはいけないよって教える必要もあるのではないでしょうか。

「禁止する教育は、嫌です! 禁止したら、いい評価もできなくなっちゃうじゃないですか。見た目がキラキラして『王子』ってニックネームつけられたら、『おれって、イケてる?』と自信につながることもありますよね」

「『本人を傷つけるようなことを言っちゃダメ』という教え方はありだと思いますが、『見た目をネタにしちゃダメ』は行き過ぎですよ。僕だって、アルビノをネタに、エンターテイナーとして活動していますし」


――「白い」って言われ、傷つきませんでしたか?

「幼稚園のころ、友だちに『なんで白いの?』って聞かれたら、『どうしてそんなこと聞くの?』って泣いていました」

「でも小学生になって、『生まれつき』ってことを理解したら、僕なりに納得できたというか、説明できるようになって、言われても気にならなくなりました。だって、僕が白いのは事実だし」

子ども時代の粕谷さん
子ども時代の粕谷さん 出典: 粕谷さん提供

「女性は見た目がすべてでは?」

「私は20代前半の女性です。自分で言うのも変ですが、容姿はかなり良いと言われますし、自分でもそう思います。毎日の通勤で、顔や胸元などをジロジロ見られますし、休日に買い物などに出かけると毎回のようにナンパされます。また、大学在学中の就職活動では周りが何十社と受けてやっと内定がもらえたと話す中、私は受けた会社のほとんどから内定を頂きましたし、私の学歴では到底内定がもらえないような企業からの内定ももらうことが出来、今はそこで働いています。その時にやはり他人を評価する際は人の顔やスタイルなどを重視していると感じましたし、特にこの現代の日本では女性は顔やスタイルがほぼ全てと言っても過言ではないのでしょうか」(京都府 女 20代)
朝日新聞のアンケートから

――女性は顔がほぼすべて、とはさすがに思いません…

「この人のこと、尊敬するけど(笑) 美人のせいで、いつもナンパされたり、注目を浴び過ぎたりしたら、逆にストレスを感じる人だっているでしょう。ある意味、『人と違う』ってことですからね」

「でも、この人がかっこいいなと思うのは、自分が持っている美貌を事実だと認め、幸せをつかむためにうまく使っていますと、はっきりと言えていることだと思います。この女性の場合、『見た目だけじゃないぞ』って、結果で示すのが大変そうだけど」

美貌はその人の能力の一つ、幸せになるために使ってもいいよね、と話す粕谷さん
美貌はその人の能力の一つ、幸せになるために使ってもいいよね、と話す粕谷さん

「見た目、本質的なことではない社会に」

「自分も見た目を気にするし、他者を、見た目で判断することも多々あると思うが、そこが本質的なことではないということはもっと社会で共有されるべきだと思う。歌手の場合、歌の下手な可愛いい女子より、不器量でも歌の上手い人が評価される社会にしなければいけないと思う」(大阪府 男 50代)
朝日新聞のアンケートから

――この方の言うとおりでは? たとえば、飛行機の客室乗務員に美しさを私たちは求めています。けれど、本来、美しくなくても接客や保安業務はできますよね。本質でなかったり、本来の役割とは関係なかったりする場面で、見た目を評価の対象とする風潮はどうにかしないといけないと思います。

「そうですかねぇ。美形も一つの能力だし、評価のひとつに値すると思います。アイドルグループも、可愛さという能力があるから、人の心をつかめるわけで」

「電化製品を買うとき、本質は商品の機能でしょうけど、会社のブランド名やデザインも重視しますよね。機能が優れているからって、見た目が好きじゃない商品、買いますか?」

2人には意見の相違もたくさんあった
2人には意見の相違もたくさんあった

「否定的なワードを口にしない。これだけは、信条」

「私は自分の容姿に自信はありません。よく、昔は美しかった(つまり、今は太って見る影もない)と揶揄されます。が、人生の背景も分からずに、そういう人の見方しか出来ない人間は哀れだと。人間は、外見では無く面構えである。私は、人の誤った行動はけなしますが、外見について否定的なワードを口にしない。これだけは、信条にしています」(岩手県 女 40代)
朝日新聞のアンケートから

――見た目について否定的な言葉を口にしないって、簡単なようで実行するのが難しいかもしれませんね。お酒の席で、わりと他人の見た目って話題にのぼるじゃないですか。自省します。

「でも『肯定的なワード』なら口にしてもいいでしょ。僕は『見た目が好きな女性芸能人ベスト10』をつけていますよ。

「結局、見た目だけで、『あいつは、こういうやつだ』って評価して、それ以上その人を知ろうとしない人は、『見る目』がない人だと思います。見た目がよいからって手放しで評価すれば、痛い目にあうこともあるでしょうしね」

※紹介した声は、編集部の判断で、誤字脱字を直したり、句読点を打ち直したり、文章を短くしたりしています。

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