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外見で損する人は努力不足? 「見た目問題」当事者と一緒に考えた
人は見た目が何%? こんな質問を、ネット上で投げかけたところ、600件を超える回答が集まりました。うち9割が「今の社会では、人は見た目で判断されていると思う」と、見た目重視の風潮を感じていました。中でも目立ったのが、見た目が就職活動や人付き合いで有利に働くのではないか、という声。「見た目問題」の当事者で、アルビノ・エンターテイナーの粕谷幸司さん(33)と語り合いました。(朝日新聞記者・岩井建樹)
――粕谷さんは、生まれつきメラニン色素をつくれないため、肌や体毛が白い「アルビノ」に生まれました。見た目について、人一倍考えてきたと思いますが、今回のアンケートについて、どう思いましたか。
「きっと問題意識が強い人が回答していると思うので、その結果だけで『ほら、見た目が社会問題になっているぞ』って提示されるのは嫌ですね」
――「見た目より中身が大事」って言うけど、「本当はどうなの?」と問いたいと思い、このアンケートを企画しました。粕谷さんは、見た目で判断されることはありますか?
「そりゃ、ありますよ。『音楽やっている人ですか』『気合入っていますね』とか。年配の人からは外国人と思われます。先日もおばちゃんから、『ハロー』って、声かけられました! 『可哀想』って勝手に同情されることもあります。でも、僕は可哀想じゃないですから。アルビノにうまれてよかったと思っていますし、僕の武器だと思っています!」
――見た目が就活に影響するって意見がありました。粕谷さんは、新卒の就活はどうでしたか?
「30社以上落ちました! けど結局は就職できたし、アルビノで『苦労した人』だなんて思わないでいいですよ」
「面接では、『まじめそう』『目がいきいきしている』とか、そういう印象が大事になるのでは? 僕も仕事で採用にかかわっていたことがありますが、見た目の印象で判断できることがありました」
――露骨な会社がいまだにあるんですね。もちろん、ファッションモデルやアナウンサーといった美的な要素が求められる職業はあると思いますが…。
「でも、このブスの方、最終選考まで残ったのだから、実力があった証拠ですよ。僕の場合、人事担当者に『会社内はいいけど、社外の人にわざわざ説明するわけにはいかない』って言われたことがあります。その時は、僕の人間性や将来性を見ず、白いってだけで拒否したのだから、度量の小さな会社だと思いました。そんな会社、僕も行きたくないですし」
――こちらの女性は、確固たるご意見をお持ちのようです。
「この方、すげぇ。『見た目だけで判断しない自分』に自信を持っている。僕も見た目のせいにするのは違うと思います」
「そりゃ、僕も内定がでないとき、『アルビノのせいで…』と一瞬思いましたよ。でも、顔写真をつけた履歴書や一次・二次面接は通っているのだから、見た目のせいではなく、自分の実力がなかっただけだと考えるようになりました」
「だって、見た目のせいにしたところで、何も変わらないし、前に進めないじゃないですか」
――メディア批判もたくさん寄せられました。
「『美人すぎる市議』ってのもありましたね。『イケメンすぎるアルビノ』って、僕も言われてみてぇよ!」
――メディアが、「美しいものはよいことだ」と過剰にあおっているかもしれませんね。広告も含めて。
「そうですか? てか、みんな好きでしょ、美形。素直にうらやましいじゃん。広告に起用されている人気タレントを見て、『私もこんなふうなりたい』って商品を買うのが、そんな悪いことですかね? 美形のほうが数字とれるだろうし、その数字が僕ら大衆の素直な反応だろうし。僕も起用されたいな、広告に!」
――でも、広告の影響で「きれいにならなければならない」と、追い立てられる人がいると思います。
「いやいや、広告見て『そうならなければならない』と、思い込むなんて、変でしょう」
――見た目は、内面を映し出すとの意見も多かったです。心理学の専門家に取材したところ、これは研究でも明らかにされていることだそうです。私たちは見た目から、その人の性格、能力、経済状況、健康状態など様々な情報を読み取るそうです。
「普段からよく笑っている人は、柔らかい表情しています。見た目から読み取れることって、すごく多い」
「でも、僕は第一印象で『こういう人かな』と思っても、『こういう人だ』と決めつけないようにはしています」
「話をすれば、しゃべり方、しぐさ、におい、そして話す内容と様々な情報が入ってきますから。本当のつきあいは、それからですよね」
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