お金と仕事
そして「にょきにょき」へ ぷよぷよの仁井谷さん、再起へのたびだち
90年代を代表するゲーム「ぷよぷよ」の大ヒットで、売上高70億円の会社をつくった後、経営多角化に失敗してあっさり倒産させた仁井谷正充さん。頼みの綱のぷよぷよの知的財産権も売却。無一文になりバイト生活で糊口(ここう)をしのぎます。そして昨年11月、新ゲームを発売しました。その名も「にょきにょき」です。
お金と仕事
90年代を代表するゲーム「ぷよぷよ」の大ヒットで、売上高70億円の会社をつくった後、経営多角化に失敗してあっさり倒産させた仁井谷正充さん。頼みの綱のぷよぷよの知的財産権も売却。無一文になりバイト生活で糊口(ここう)をしのぎます。そして昨年11月、新ゲームを発売しました。その名も「にょきにょき」です。
90年代を代表するゲーム「ぷよぷよ」の大ヒットで、売上高70億円の会社をつくった後、経営多角化に失敗してあっさり倒産させた仁井谷正充さん(67)。頼みの綱のぷよぷよの知的財産権も売却。無一文になりバイト生活で糊口(ここう)をしのぎます。
一方、千葉・新松戸のアパートでコツコツと次なるゲームを開発。そして昨年11月、待望の新ゲームを発売しました。その名も「にょきにょき」です。
ニンテンドー3DS用に発売された「にょきにょき(たびだち編)」。800円でダウンロードできます。
仁井谷さんいわく、ぷよぷよの欠点をすべて改修した「落ちもの格闘パズルゲーム(落ちゲー)」だそうで、「囲碁や将棋のように、1千年は遊べるゲームだ」と力説します。
さっそくプレーしてもらいました。
画面自体はぷよぷよとだいたい同じ。
上から色がついたキャラ「にょきにょき」が落ちてきます。
これもぷよぷよと同じ。
その色ごとに整理して落とすと、キャラがくっついて、縦や横に伸びていきます。
これもぷよぷよと同じ。
「社長、これってぷよぷよと一緒じゃ……?」
思わず声に出てしまいました。
ぷよぷよは四つくっつくと自動的に破裂しましたが、にょきにょきはどんどん伸びていきます。
「そろそろ破裂させるよ」
次に落ちてきたにょきにょきが、「針のにょきにょき」に変身。
くっついて長く伸びたにょきにょきに、それを落とすと!!!
「パン、パン! パン、パン、パン、パン!! パン、パン、パン、パン、パン、パン!!!」
まるで、ぷよぷよの連鎖のように、つぎつぎとにょきにょきが消えていきます。
そして、対戦相手の画面に大量の「お邪魔キャラ」が落下。ゲームオーバー。
これもぷよぷよと同じ?!(心の声)。
「にょきにょきは連鎖のスタートをコントロールできる。ぷよぷよにはなかった機能。きょう始めてプレーした素人が、10年やりこんだゲーマーにも勝てる。それが最大の魅力だ」と仁井谷さんは力説します。
「プログラマーが見れば、ぷよぷよとは全然違うゲームだってすぐにわかるよ」と仁井谷さん。
「落ちゲーとしては、テトリスは第一世代。ぷよぷよは第二世代。そして、にょきにょきは第三世代。1千年は遊べる完璧な落ちゲーだ」と自信満々です。
にょきにょきの制作発売にあたり、仁井谷さんは新会社「コンパイル○(こんぱいるまる)」を設立。本社は新松戸の自宅アパートです。
この日は、ちょっとオタっぽい青年がアパートにいました。ゲーム作りを手伝う丸岡航さん(24)です。
丸岡さんは、もともと世界で20~30位ランクのぷよぷよゲーマーだったそうで、にょきにょきのゲーム性に感動。「仁井谷さんとにょきにょきのプログラムにほれました。いっしょに大きくしたい」と、仁井谷さんのもとでゲーム制作を手伝っているそうです。
「早稲田大学基幹理工学部の機械科学・航空学科で航空機の素材について研究していましたが、4年次に自主退学しました。いわゆる中退ですね。にょきにょきというゲームを通じ、事業のスタートアップに携われるのはチャンスだと思って。研究を続けるより、おもしろそうだな、と思いました」
取材の日も、仁井谷さんとふたりこたつを囲みながら、なにやらコツコツと制作。スマホ用に改修するため、仕様書を書いていたそうです。
「手伝いって、バイト代や給料は払われているのですか?」との問いに、「ま、まあ」と歯切れの悪い返答でしたが、夢はぷよぷよを超えるゲームに育てることだそうです。
仁井谷さんは「これから携帯ゲーム会社にプレゼンに行く。いまのゲーム市場は携帯スマホが最も規模が大きい。そこに食い込みたい」と意気揚々。
にょきにょきの発売を機に、住まいを新宿に、会社を秋葉原に移す計画も進行中だとか。
「旅立ちにしておけば、次があるようで気になるでしょ。宣伝文句みたいなものです」と仁井谷さんは笑います。
その明るい語り口から、この2DKのアパートに一獲千金の夢がにょきにょきと育っているように思われました。(おわり)
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