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2017年04月26日

PTA、恐怖の電話で始まった「涙の1年間」 「ザ・長時間労働」の縮図

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恐怖の電話で始まったPTA「涙の1年間」

恐怖の電話で始まったPTA「涙の1年間」

出典: https://pixta.jp/

 何かと批判の多いPTA。どうせやるなら…と意を決して役員になってみたのが数年前のこと。やってみてわかったのは、とにかく「やる前提のことが多すぎる」ということ。これって結局、PTAにまで「長時間労働」が求められているってこと? PTA役員から見えたのは現代日本の断面でした。(朝日新聞デジタル編集部記者・小田切陽子)


突然の電話「会議に出席して下さい」

育児休業からの復職を間近に控えたある日、その電話はかかってきました。

「くじ引きの結果、来年度の校外委員をお願いすることになりました。役決めをしますので、会議に出席して下さい」

は?

校外委員って、なんでしたっけ…?会議って…?と、突然の状況がのみ込めないまま、その電話は終わりました。
校外委員というのは、子どもの通学の安全に関わる様々な活動をするPTAの一組織。うちの子どもが通う学校では、前年度末に決めることになっていて、立候補がいなかったために、PTA未経験者の名前を入れたくじ引きが行われ、運悪く私が当たったようでした。

「私、仕事あるんですけど…」

それはそうと、どうですかこの問答無用感…この電話の時点でもう引き受けるのが当然の前提で話が進んでいます。うわさに聞くPTAの洗礼を目の当たりにして、次に考えたことは…

そう、「私、仕事あるんですけど…」

ただ、私にもPTAから永遠に逃れることはできないという覚悟は、ある程度ありました。うちの学校は、とにかく一回役員をやれば、兄弟が何人いてもあとは免除されます。

私の今回の復職は、育休中に体調を崩したりもしたため、1週間に1日短時間勤務制度を使って仕事をセーブすることにしていました。
この日をうまく活用すれば、役員会ぐらいは出られるかも…?
もちろん短時間勤務制度の利用には、大きな減給を伴います。それをPTAのために使うのは全く本意ではありません。しかし、このタイミングでしか、おそらくPTA役員はできない。
そう腹をくくり、役決めの会議に出た私に、さらなる強敵が待ち構えていました。

「会議はだいたい、週1ですね」えっ…?

役決め会議当日。集められた12人は全員お母さんでした。仕事がある人は3分の1ぐらい。私は恐る恐る前に座る前年度の校外委員長さんに聞きました。
「集まるのって、どのくらいの頻度なんでしょうか」
「だいたい、週1ですね」

えっ…しゅういち?
「それって…毎週1回学校に来て集まるってことですか」
「そうですね。4月始まったらすぐ忙しくて、係によっては週1よりもっとかなー。あ、もちろん平日です。でも夏休みにはないし(←当たり前)、秋ごろは1カ月1・2回ぐらい。年度末はまた忙しいですね」

「わかりました。私が委員長をやります」

わたしは大変な危機感を抱きました。PTAはムダな会議が多い。何度も目にした話ですが、実際はさらにひどい。週1以上って、もはや仕事レベルです。しかも平日。
週1問題が露呈したところで、係決めの場はさらに沈みました。「では、委員長をやってくださる方、いませんかー?」。…前委員長さんの声がむなしく響き、沈黙は何十分にも及びました。

私はこの時、強く思いました。この慣習は、すぐにでも改めるべきだと。ムダな集まりは、1回でも減らすべきだと。というか、PTAの集まりに時間をさくなんて、一秒でも減らしたい!そのためには、会議の予定を立てる側に回るしかない。

私は意を決して手を挙げました。
「わかりました。私が委員長をやります」

全500世帯の登校班を割り振り

こうして私は校外委員長になりました。幸い、くじ引きにあたっていた中にママ友がいたため、私が仕事で出られない会議は彼女がフォローしてくれることになりました。もつべきものは友達です。本当にありがとう!

さて、まずは週1の会議をなんとかしないと…と、前任者からもらったやることリストと、カレンダーを付き合わせてみたのですか…
やることが多すぎて、時間が全然足りない!
私は、集まりが多すぎるのはムダな会議が多いから…と思っていましたが、違いました。

まずはルーティーンワークをご紹介。
転校生が来るたびに、どこの登校班が適しているか住所と地図をつきあわせ、登校班を編成し直します。同じく旗当番の当番表を作ります。
どこの横断歩道に、どの日程で誰が立つのか細かく設定。ちなみに世帯数は500を超えます。児童の住所などは個人情報のため、作業は全て学校内でしかできません。
「転校生が来た」という連絡を受けるたびに、係が細かい作業をこなします。年度末には、来年度の予定一覧表を更新し、一人ずつに配布します。

1学期のメインイベントは、通学路の危険な部分を直してもらうため、行政や警察にアピールする会議です。その準備が、非常に煩雑。
全学区の中の通学路をみんなでまわり、チェック。危険な箇所があれば写真に撮る。それをまとめてフルカラーの冊子を作り、会議を開く。出席者のために、お茶菓子を手配。

お便りは年に10回程度。ですが1お便りにつき、最低500枚刷るので、コピー機のつまりや紙補充など、常に人がついて作業します。
そして学校内のPTA役員が全員集まる会議が月に一度。地域のPTAの集まり、各校の校外委員の集まりなどもなんだかんだと月に一度はあります。

やる前提のものが多すぎ

ムダな会議が多いのではなく、やる前提のものが多すぎるのです。

細かな注意が必要な登校班の編成などは、係を引き受けてくれたお母さんたちが本当にキッチリやってくださったため、問題なく進みました。
よく、PTAのなかで仕事をやらない人がいて…というような話を聞きますが、私の場合、幸運なことに周りにはとても恵まれました。

なんだかんだで年度末も近づき、来年度の登校班&旗当番表の印刷も終わり、すでに、みんなもうすぐ終わりだね!お疲れ様!というモードに入っていたとき、その事件は起こりました。

は?資料を作り直す?

「校長室に来て下さい」
PTA会長さんからのメールは、何の前触れもなくやって来ました。
聞けば、旗当番に出ていた保護者が、見守りボランティアさんともめ事を起こしたそうなのです。

その保護者は初めての旗当番。何をしていいかわからず、ぼんやりと立っていたところ、忙しく動いていたボランティアさんと言い争いになったとか。
…人間ですから、言い争うこともあるでしょう。もめるのは勝手ですが、自分たちで解決するのが大人ですよね?でも、保護者側が学校に怒鳴り込んできたそうです。
校長先生は上記の話を私に説明すると、「だれでも旗当番がよくわかるように、配布予定の旗当番資料を作り直して下さい」と言い放ちました。

は?資料を作り直す?
もう500世帯分、きっちり印刷してすぐ配れる状態になっているんですけど?しかも、旗当番のやり方がわからないってどういうこと?「横断歩道で、車が来たら子どもたちが安全にわたれるよう手伝ってあげて」以外ないんですけど…。

なんだ、話し合えば解決するじゃん!

私は、資料の作り直しだけはやってはいけない、と思いました。
一番許せなかったのは、ボランティアさんと保護者との言い争いに対して、「資料を作り直した」という対策を見せることで解決させようとしたところです。

PTAには、いろいろな人がいるのは確かです。でも、「もめ事」に対して、他の人の時間と労力をまたまた使うなんて? それは保護者の組織であるPTAとしても、やってはいけないことではないでしょうか。

話し合いの結果、校長先生は納得してくれて、資料はそのままで配ることになりました。
なんだ、話し合えば解決するじゃん! たしかにその数時間はストレスだけど、こういう積み重ねがPTAの「やる前提仕事」を増やしているんだと実感しました。

問題点を整理すると…

こうして、1年間のお役目が終わりました。結局会議は26回を数え、1年52週の半分は会議をやったことになりました。それでも前年より10回以上も減らしました。

やったことと、問題点を整理すると…

【委員の決め方】
・もちろん参加は任意のはずですよね…
→実際は問答無用。ですが、1人で立ち向かうのはまず無理。世論のさらなる盛り上がりが必要です。

【会議の進め方】
・何をすればいいか不安なので結局集まってしまう。資料から前年度の仕事を読み解くのに時間がかかる
→仕事を可視化し、次年度に引き継ぐことが必要。

【登校班の編成】
・大切な仕事ですが、保護者にやらせるのは個人情報保護の上で問題が起こる可能性もあります
→学校側にお願いしたい。ただでさえ雑用が多いのに、と学校側は思うかもしれませんが、これは雑用でなく、児童の安全のために優先順位の高い案件です

【お便りの配布】
・配る人数が多すぎる。
→ペーパーレス化が必須。これは普段学校側から配られるお便りにもいえます。

これは日本社会の縮図では?

PTAの仕事の負担は、共働きの家庭が多い今、根本的に見直す必要があると思います。「子どものためだから」という、だれも反論できないことばで納得させるには、もう無理なところまで来ています。

私はたまたま仕事に都合をつけて参加しすることができましたが、極めてまれなケースだと思います。

これって、「とにかく長時間労働が尊い」とされる日本社会の縮図なのかも。

実際、真面目な役員さんほど、問題が起こると「大変!みんな集まって!」と新たな会議を招集しがちです。
長い時間を費やしてやっとのことでこなす年間予定。本当に子どものためでしょうか?「昨年もやったから」という理由だけの仕事ではないでしょうか?
時間を掛けさえすればいいものができる。それは幻想だということは、もういい加減気づいている。それはPTAでも仕事でも同じこと。

長時間労働は尊い。社会の隅々までに行き渡っているこの思い込みを、いろいろなところで少しずつ変えていくしかない。それって、子どもを持たない人にも関係あるはずです。


自分では、会議を減らすためにできる限りのことをしたつもりでしたが、もしかしたら他の忙しいお母さんが、「前例があるから」と大変な役職を押しつけられていないか、心配に思うこともあります。あれから数年たちましたが、モヤモヤは晴れません。


親になってわかった「子連れママが電車で座らない訳」を漫画に
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横山さんが投稿した漫画の一場面。子連れママが電車で座らない理由について描かれている
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出典:ツイッターより
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