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片桐仁、髪バッサリ「もっと早く切っておけば…」新境地で見えた真実

天然パーマに手をやる片桐仁さん。髪形を使ったネタはやり尽くしたという=諫山卓弥撮影2
天然パーマに手をやる片桐仁さん。髪形を使ったネタはやり尽くしたという=諫山卓弥撮影2 出典: 朝日新聞

目次

 シュールなコントで一躍人気者になったラーメンズの片桐さん。トレードマークの長い髪は、今ではバッサリ。何があったのですか?(聞き手 朝日新聞統合編集センター記者・加地ゆうき)

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「よし伸ばすぞと思ったら、もっじゃもじゃだった」

 僕は両親とも天然パーマで、約束された天然パーマではあったんです。でも小学校5年くらいまではサラッサラでした。中学時代は坊主で、高校生になってよし伸ばすぞと思ったら、もっじゃもじゃだったんですよね。髪質は、ずーっと嫌でした。

 当時は、真ん中分けでキューティクルがキラーン!みたいな吉田栄作さんの髪形がはやってた。男子校に1500人いたけど、ロン毛のやつ1人しかいなかったですから。キムタクの登場まで、ロン毛がまず考えられなかった。

 美大の入学式は親に着せられた紺のブレザーでね。美大デビューしたかった。ヒッピーみたいなファッションに憧れたんですけど、恥ずかしくて出来なくて。だからと言って何を着ていいのか分からない状態。床屋で東野幸治さんみたいなチリチリの短い髪にして、ずっと帽子をかぶっていました。

髪が長かった頃の片桐仁さん=2013年、トゥインクル・コーポレーション提供
髪が長かった頃の片桐仁さん=2013年、トゥインクル・コーポレーション提供

「ひきょうですね、その顔でその髪形で」

 髪形を変え始めたのは、悪ふざけだったんです。美大でお笑いを始めた頃で、(相方の)賢太郎とお互いにバリカンで刈ったり、知らない人を後ろから勝手に坊主にしたりした。下積み時代、風呂なしのアパートを下北沢で借りて、お金がないから伸び放題にしていたら、2年くらいで肩まできちゃった。

 それで舞台に出たら、お客さんが「わーっ」って気持ち悪がってくれて。芸人仲間にも「インパクトあるよね」「ひきょうですね、その顔でその髪形で」と言われた。ああ、俺の髪形はこれだ!と。個性ってたぶん、人が見つけてくれるもの。僕は相方に誘われてお笑いを始めたクチで、面白いことを言うのに自信がなかったから、見た目を面白そうにしたいっていうのがあったんです。

 僕、昔から自分の顔がコンプレックスで。目つきが悪いというか、黒目がちっちゃいし三白眼になっちゃう。不良と目が合うと絡まれちゃうので、ずっと下向いて歩いてましたもん(笑)。だから顔が面白いって言われたのは救いでした。

髪が長かった頃の片桐仁さん(左)。ラーメンズの相方・小林賢太郎さんと=2002年
髪が長かった頃の片桐仁さん(左)。ラーメンズの相方・小林賢太郎さんと=2002年

社長が心配「お前誰だか分かんなくなっちゃうぞ」

 芝居を始めてからは、ホームレスや博士、おたく、漫画家……一風変わった役で声がかかる。髪を上だけ結んで垂らすと、なんともいえないダメ感が出るんですよね。ドラマの監督に、僕の役ないですかって聞いたら「でも片桐君、サラリーマンの役できないでしょ」と言われたこともありました。

 僕はもともと美大を引きずっていたので、アーティスティックでちょっと狂気がある風に見られたかった。ここ2、3年でどうでもよくなってきて、楽しいかどうかなのかなあと考えるようになったんですけどね。

 ずっと「ラーメンズの片桐仁は長い髪形じゃないといけない」と思っていたんですけど、短くするきっかけがありました。刑務官の役がきて、長いのはありえないから「カツラかぶろうか」って言ってたんですけど、だめなんですよ。地毛で浮いてコントみたいになっちゃう(笑)。18年間長かった髪を切ろうと決めて、断髪式をしました。40歳の時でした。

 切る前は社長に「お前誰だか分かんなくなっちゃうぞ。あんまり切るな」と心配されました。でも七三分けにしなきゃいけなかったから切ったら、周りから「そんなに変わんない」って言われて。肩透かしですよ。18年間の、20代30代の自意識?なんだったんだろう。その髪形じゃないといけないと思い込まされている俺も俺なんですけど。もっと早く切っておけば、人生変わったかもと感じました。

ラーメンズの片桐仁さん。帽子をとると、天然パーマが姿を現した=諫山卓弥撮影
ラーメンズの片桐仁さん。帽子をとると、天然パーマが姿を現した=諫山卓弥撮影

「誰もそんなにお前のこと見てないよ、これは真実」

 短くしてみると、「東京センチメンタル」というテレビドラマで、床屋さん役がきたんですよね。本当に普通の役。そういう役は初めてです。今ならスーツ着たサラリーマンもやれるというか、短くても自分らしさって出せるんだなと分かりました。

 はっきり言いたいのは「誰もそんなにお前のこと見てないよ」ってこと。これは真実だと思います。40歳の時、中学校の同窓会に行って思ったんです。昔、ほとんど初対面の転校生に「お前ヘビみたいな目してんな」って言われたんですよ。すごくびっくりして、ショックじゃないですか。でもその人はすっかり忘れていた。えっ!?過去のトラウマが、俺の独り合点だったのか、みたいな(笑)。

 「自分のことをこんなに考えてあげられるのは自分しかいない」というのは、そりゃ当たり前なんですよ。「誰も分かってくれない」、そりゃ分かんないですよ。お前のことは誰も知らないよってことです。

 いまだに、好きな子に告白しとけばよかったなって思います。全然できなかったです。26歳まで彼女いなかったですから。ラジオをやっていたら、30歳童貞の子とかいっぱいいるんですよね。女性でもそうですよ。行動した方がいいよって言いたい。若さってすごい武器ですから。ラーメンズがある程度認知されたのも、若さがすごく大きかったと感じています。勢いがあるし、なんだか分からないけどエネルギーがある。40歳だったら見てもらえないですから。

 髪はだいぶ短くなっちゃったんで、ちょっと長くしてもいいけど、もう前みたいに長いやつにはしないかな。

    ◇

 片桐仁(かたぎり・じん) 42歳。多摩美術大時代、同級生だった小林賢太郎さんとお笑いコンビ「ラーメンズ」を結成。17日から、TBS日曜劇場「99.9 刑事専門弁護士」(午後9時)に出演する。

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 「髪形芸人」は4月16日発行の朝日新聞夕刊紙面(東京本社版)「ココハツ」と連動して配信しました。

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