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永瀬正敏さん「弟が生きていたら…」 心臓病で亡くした弟への思い
映画「たしかにあった幻」舞台挨拶
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映画「たしかにあった幻」舞台挨拶
心臓病の弟が、もし、「もらう」側だったら――。映画「たしかにあった幻」のプレミア上映会が開かれ、舞台挨拶に立った永瀬正敏さんが自身の死別の体験を語りました。永瀬さんが演じたのは、息子を突然失って臓器提供を決断する「ドナー」の父親役でした。河瀬直美監督や、尾野真千子さん、北村一輝さんが撮影を振り返りました。
6年ぶりとなった河瀬さんの映画の新作「たしかにあった幻」は、2月6日から公開されます。
臓器移植や失踪者という日本の社会問題をテーマにしながら、「愛のかたち」や「命のつながり」をモチーフにしています。
昨年夏の大阪・関西万博のパビリオンをプロデュースしていた河瀬さん。
東京・新宿で開催されたプレミア上映会の舞台挨拶で「万博をやっていて映画を撮っていないんじゃないかと思われていましたが、自分としては全速力で映画に向き合っていた日々でした」と語りました。
「萌の朱雀」や「殯の森」で主演し、久しぶりの河瀬作品の出演となった尾野真千子さんは、病院に入院する子どもの保護者たちをお弁当でサポートするお弁当屋さんを演じます。
息子を病気で亡くしており、今も罪悪感をおぼえているという役柄でした。
尾野さんは「何を勉強したらいいんだろう」と悩んだそうで、「身ひとつで行くしかないと挑みました」と振り返ります。
河瀬さんは尾野さんの出演シーンについて「100点超えのシーンでした。『河瀬組の一番強いところが出たな』って感じでした」と話しました。
北村さんは「河瀬監督は本物を撮ろうとしているなと思いました。実際にモデルとしているお弁当屋に行って、その人たちを理解するまでこれまでの経緯や思いを話すんですよね」と撮影を振り返っていました。
北村さんは、保護者が病気の子どもに付き添って入院する「付き添い入院」の過酷さにも言及しました。
「子どもたちも心臓移植を何年も待っていて、お母さんたちはその隣のすごく狭いベッドで子どもたちのために何年も寝てるんですよ。とてもじゃないけど『大変ですね』と簡単に言えるようなことでもなくて」
「そういう現実を見て、僕たちが上っ面で演じていても、それは通じないだろうな、と思いました。お芝居として見せるというよりも、『こういう現実がある』ということを伝えるひとりとして、現場に入れたらいいなと。芝居でありながら、芝居じゃない感情がそこに出てきていると思います」
舞台挨拶では、映画のタイトル「たしかにあった幻」にちなんで、それぞれが「たしかにあったもの」をフリップに書いて発表しました。
映画では、息子を亡くして臓器提供を決断する父親を演じた永瀬正敏さん。フリップに「思い」とつづり、自身の弟との死別の経験を語りました。
「先に逝った人たちを、全然忘れられないなって。今、生きてればもうおっさんで50いくつかなんだけど、生後すぐ弟を亡くしていまして」
「その弟も心臓の病気だったので、もらう方ですね。もしそういうことがあれば、もしかしたらおっさんになってここに座ってくれているかもしれないし……。でも、ずっといる気がするんですよ。いなくなった気もしなくて」と語りました。
「先に亡くなった人って、それで終わりなのかなって思っていたら、全然終わらないんだなって感じています」
尾野さんは、これまで演じた映画やドラマなどの台本やスケジュールを保管しているとのことで「台本」と書き、北村一輝さんは自身を励ましてくれた恩人の「津原さんからの言葉」と書きました。
河瀬監督は「フランスロケ」と書き、ロカルノ映画祭で発表した時の映画にはあったフランスでのロケのシーンが、日本版では大幅に減らして編集したことを明かしました。
河瀬さんは「映画撮影ではものすごい数のショットが回されて、それはすごい感情を置いてきている俳優のみなさんの思いの結集なんですけれど。でも、編集の段階で捨ててしまうものもたくさんあります」。
「永瀬くんが言ったみたいに、いなくなったりなくなったりしたものの方にこそ、自分の気持ちがそこを忘れられないみたいなところってあるかな、と思いました」と語りました。
最後のあいさつとして、河瀬さんは来場者に「映画というものは、もうもしかしたらなくなっていくような時代に入ってきたかもしれない。でも、2026年はもっと、もしかしたら泥臭い年になるんじゃないかなと思っています」と呼びかけました。
「本当に会いたい人に会いにいくとか、その夢を捨てたくないから、絶対に今日これをやってやるとか。みんなが諦めない、何か思いを持って突き進んでいくような時代でもあるのかなと思います」
「そういう諦めない気持ちを、映画のコリーの最後の瞬間に託しました。どうぞ最後までごゆっくりご覧ください」
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