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血に染まった床を5歳児が黙々と……海外里帰りの驚き
世代や育った文化で、思いっきり〝常識〟が異なるのが「子育て」です。ゆえに、義実家への〝里帰り〟は相当緊張するものですが、パートナーが海外出身だったらどうなるのでしょうか? 初めて夫の出身国モロッコに里帰りをした日本人ママに感想を聞いてみました。
都内に住むKさんは、昨年7月、1歳を間近に控えた長男を連れて、夫の実家があるモロッコに、初めて〝里帰り〟をしました。
旅行で行ったことはあるけれど、子ども連れでの帰省は初めて。初めて見る孫を、家族は歓迎してくれましたが、その歓迎は独特なものでした。
「子どもが産まれた家では、羊を食べるんだ」
事前に聞いていましたが、到着した翌日、実家の屋上に生きた羊が連れてこられて驚きます。
「聞いた時は、『ふれあい動物園』ぐらいだと思っていたんですけど、想像よりも大きかったです」
モロッコの国境はイスラム教。イスラムの家族にとっては、毎年大切な祭り「イード・アル=アドハー(犠牲祭)」などもあり、お祝い事などがあると羊などの肉を、周りの人々と分かち合うということは生活に溶け込んでいます。
夫の家族は「家で料理をするように」慣れた様子で準備を進めていました。
好奇心から最初は「見たいな」と思っていたKさんでしたが、義理の叔母が、と殺前の羊がパニックを起こさないよう、優しくなでながら落ち着かせている様子を見たとたん、涙が出てしまい、「その瞬間は見ることができませんでした」。
家族が集まり、役割を分担しながら、丁寧に肉をさばいている様子を見ました。
驚いたのは、5歳の甥っ子も、自ら掃除を引き受けて、落ち着いた様子で屋上に広がった血だまりをブラシでこすって掃除していたことでした。
「文化と、その文化が持つ力の違いを感じました。食事を自分たちで作るだけでなく、解体まで家族でやり、みんなが役割を果たそうとしていました」
羊の肉は、「プロシェット」という串焼きにしました。串焼きにするのもみんなで。Kさんも肉を巻くのを手伝いました。
「狭い廊下で煙だらけになって焼くので、カオスでしたけど」
残りはモツ煮にして、羊は余すところなくすべて料理になり、大切に食べられました。でも羊肉が、体質に合わなかったのか、Kさんはおなかを壊してしまったそうです。「せっかくの料理だったので、残念でした」
家族の多さにも驚きました。
夫の兄弟とその子どもたち、義理の母の兄弟やその子ども、遠方の親戚も集まって、お客さんも入れ代わり立ち代わり家に来ます。「常時、20人は人がいました」
東京では3人暮らしですが、大家族の中でも、息子は2歳の甥っ子について回っていて、楽しそうだったそうです。
そして、大きな円卓が置いてある「サロン」というスペースで、みんなで食事を囲みます。食事はひとつの大皿から、みんなで食べます。
毎日夕方5時以降、スナックを食べる時間があります。集まって家族の結びつきを感じる時間ですが、夕飯が遅くなり、「生活リズムが違って、体がなかなか慣れませんでした」。
スナックを食べて一息つくと、誰ともなく太鼓をたたいて歌い始めるそうです。
歌は即興のものもありました。息子の名前を入れて「最高、イケメン!」と歌ってくれたり、家族みんなのことを歌でたたえあったりしていました。
そして音楽が鳴り始めると、みんな手拍子で調子を取り、歌や踊りも始まります。特に型があるわけではなく、自然に染みついたような踊りで、よちよち歩きの子も踊るのです。
「音楽がいつもそばにあって、その場で一緒に歌い、楽しめるのは良いなと思いました」
これまで「こうあるべき」と決めつけないように暮らしてきたというKさんですが、それでも目から鱗のことを多く見聞きして、刺激を受けたというモロッコ暮らし。
日本生まれの息子ですが、モロッコやイスラムなど、さまざまなルーツを持っています。
「息子にはいろんなバックグラウンドの人たちと触れあってもらい、自分でルーツのことを知る機会を作ってあげたいな、と思います。こちらの体力が試されますね」
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