話題
震災5年 「心の動揺」おさまらず 仮設住宅の「悩み」を調べると…
東日本大震災から5年。被災地の人の心の悩みは、今、どんな状態なのでしょうか? 宮城県が実施した調査からは、震災の影響は徐々に減っているものの、いまだに多くの人が心に傷を負っている現実が見えてきます。
話題
東日本大震災から5年。被災地の人の心の悩みは、今、どんな状態なのでしょうか? 宮城県が実施した調査からは、震災の影響は徐々に減っているものの、いまだに多くの人が心に傷を負っている現実が見えてきます。
東日本大震災から5年。被災地の人の心の悩みは、今、どんな状態なのでしょうか? 被災地で実施された調査からは、震災の影響は徐々に減っているものの、いまだに多くの人が心に傷を負っている現実が見えてきます。中でも、「心の動揺」について、お年寄りの深刻さが目立っています。
宮城県は2012年から、毎年、仮設住宅(プレハブ仮設)に住んでいる被災者にアンケートをしています。2015年の調査では、7915人について、世帯数や心の状態などを調べました。
世帯人数では、「1人世帯」の割合が高くなっています。2012年に27%だったのが、2015年には37%になっています。逆に「4人以上」は減っていて、2012年に18.8%だったのが、2015年には13.3%になっています。
「災害を思い出して気持ちが動揺することがある」という質問に対しては、年々、少しずつ減ってきています。
2013年は21.1%の人が「動揺することがある」と答えていましたが、2014年には19%になり、2015年は17.1%まで減りました。
全体的に減る一方で、高齢者の割合は高くなっています。2015年調査では、「20歳から29歳」の男性が5.4%であるのに対し、「80歳以上」の男性は20.8%になっています。中でも、目立つのが女性の高齢者です。「80歳以上」の女性は28.6%の人が「動揺することがある」と回答しました。
岩手大学の麦倉哲教授らの研究グループは岩手県大槌町の仮設住宅に住む、被災者3千人を対象に調査を毎年続けています。
2014年に気持ちの変化を尋ねたところ、「かえって厳しくなった」と答えた人が28.4%を占めました。「震災直後からほとんど変わらない」と答えた38.7%を合わせ、6割強の人の精神状態が改善していませんでした。
内閣府自殺対策推進室によると、震災関連の自殺者は2016年1月までに164人に上っています。
阪神・淡路大震災では、地域のつながりを重視せず、お年寄りたちを先にプレハブ仮設に入居させたため、人づきあいが生まれず孤独死が相次ぎました。一方、見守りを重視した取り組みには成果が出ています。
岩手県釜石市の平田(へいた)第6仮設団地は、手厚いケアで「孤独死ゼロ」を続けています。入居する約160戸のうち、約半数が一人暮らしですが、市が委託したNPOの職員らが1日1回、欠かさず接触しています。日中に全戸を回り、所在確認できなかった世帯を別の事業者が運営する「サポートセンター」に報告。センター職員が夜に再び訪問します。
センターでは看護師やケアマネジャーら12人が24時間態勢でお年寄りや障害者の対応にあたっています。ベッドのそばのテレビ電話を通じて室内の様子をセンターで確認できるほか、体調の急変を知らせる呼び出しボタンもあります。
宮城県名取市は2014年から、一人暮らしのお年寄りらにタブレット端末を配布しています。毎朝、「体調はいかがですか」などと質問を送信。異状があれば、すぐに支援員が訪問できる体制が整えられています。
・岩手県釜石市:看護師らが24時間常駐し、高齢者や障害者を見守り。ベッドそばのテレビ電話で室内の様子も確認
・同県田野畑村:温泉やスーパーなどに送迎バスを運行。温泉施設では健康相談や交流会も実施
・同県陸前高田市:農作業ができる複数の農園を設け、料理教室や食事会も開催
・宮城県名取市:一人暮らしの高齢者らにタブレット端末を配布。定時の質問に回答がない場合などは支援員が訪問
・同県南三陸町:孤立する恐れがある高齢者らを逆に見回り役に指名
・福島県相馬市:5戸から6戸ごとに「戸長」を選び、毎日定時に全戸訪問する
・同県大熊町:見守りセンサー付き歩数計を貸し出し、事前登録した相手に一日の歩数や宅内で前を横切った回数をメールで連絡
・岩手、宮城、福島各県:「心のケアセンター」を県内に複数設け、心の問題を抱える人の相談支援を実施
1/11枚